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「道筋つけられるか 核のごみ問題」(時論公論)

水野 倫之  解説委員

福井県にある高浜原発4号機が今週再稼動し、稼働中の原発は4基に。再稼働が進めば必ず出てくるのが核のごみ。福島の事故で危険性が明らかとなり、政府は地下に処分できる可能性のある科学的な「有望地」を提示して、対策を前に進めると。しかし提示の期限とされたのは去年の年末。未だ示されず、ここにきて足踏み状態。
▽地図の提示が遅れは?
▽どんな形で提示?
▽道筋をつけるために何が必要?
3つの視点から水野倫之解説委員の解説。

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核のごみ問題の国民の関心を高めたいとして、経産業省は、今週からあらためて全国で一般向けの説明会。
初回は東京。地下深くは地上よりも地震の揺れが小さく、さびの原因となる酸素も少ないなど安全性が強調。しかし参加者からは「地下水が多い日本で処分できる?」。また「地域の意向が無視されることはない?」など、安全性や進め方への不安が。

核のゴミは原発の使用済みの核燃料や、これを再処理してプルトニウムを取り出した後に残る放射能レベルが極めて高い廃液。10万年は隔離する必要。

そこで各国は地下深くに埋めて処分を検討も、処分場選びは難航。
中でも日本は政府も電力会社も原発の稼動には力を入れたものの、ごみ問題は厄介だとして正面から向き合おうとせず、対応は遅れた。

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2000年に処分を行う機関を設置。文献調査、ボーリングなどへと段階的に調査を進めることを決め、2030年頃の処分地選定を目指して自治体を募集。
しかし正式に応じたところはなく、受け身のまま、問題は先送りされてきた。

そこに起きたのが福島の事故。大量の使用済み燃料が冷却できなくなり、首都圏も避難するシナリオも検討された。
国内には各原発のプールなどに核のごみを含んだ使用済み燃料がすでに17000t。この問題に道筋をつけないまま再稼動を進めることへの批判も。政府は文献調査の前に、科学的に処分ができる可能性のある場所を「有望地」として示すことに。

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火山や活断層、隆起や浸食がある地域は「適性が低い」として外し、残りを「適性がある」「有望地」に。また船での輸送を考慮し、港から20キロを「より適性が高い」として3色に分け、年末に提示することを関係閣僚会議で決定。
ところが一般から、「有望地」とか「適性がある」という言い方について、「政府がそこに処分場を押し付けることを狙っているのではないか」という批判が相次ぐ。
このまま地図を出せば混乱が広がるとして政府は公表を先送り。処分場の受け入れを迫るものではないことを明確にするため、表現の見直しを。

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名前も科学的特性マップとし、
「適性」があり「有望地」としていた地域については、「好ましい特性が確認できる可能性が相対的に高い」地域に。
また港に近く「より適性が高い」地域については、「輸送面でも好ましい」に。
さらに「適性が低い」地域については「好ましくない特性があると推定される」地域とし、日本地図を4色で示すという。

有望地という言い方は、推進側目線の言葉で、表現を撤回した点は評価できるが、新たな表現は回りくどくて慎重な言い回しになり、理解が進むことになるのかという疑問も。

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ただ表現よりも問題なのは半年前に示すと国民に約束していた地図をいつ提示するのか、いまだにメドを示していない点。
経済産業省は「地図を冷静に受け止めてもらえる環境が重要だ」と説明。
地図の提示をきっかけに数か所以上の自治体が関心を示すことを期待しており、その先の文献調査につなげるきっかけをつかみたいという思惑。
そのためにも地図の提示で、大きな騒ぎになるのは避けたいという。表現も慎重な言い回しになり、提示の時期を探っている。
その一環として全国の都道府県の担当者に対する説明も始めています。地図はあくまで地盤の特性を示すだけで人口は考慮しないため都市部も好ましい地域となる可能性があり、今週はじめには東京23区の担当者へ説明。

ただ、処分場選びは簡単にはいかないことを覚悟しなければ。
地図が示されれば、反対運動が起きるかも。「好ましい特性がある」とされた地域の中には、処分場の拒否を宣言する自治体が相次ぐかも。

というのも日本よりも処分場選びが先行している国のほとんどすべてが、大きな混乱や反対運動を経験。世界で最終処分地を決めたのはフィンランドとスウェーデンだけ。いずれも、20億年前から変化していない強固な岩盤があるが決定までには30年。
住民の理解が十分でないまま地質調査を行うなどして大規模な反対運動が起こり、政策の変更を何度も余儀なくされた。混乱を受けていずれも法律で手続きを明確にした上で、多くの候補地を調査し、事業者が実際に地下の様子を住民に見てもらうなどしてようやく処分地を決めた。
受け入れた自治体に聞くと、最終的には国や事業者の説明に納得できたかどうかが、決め手になったと。

これに比べて、取り組みが遅かった日本では、まだ核のごみ問題自体を知っている国民が多いとはいえない。まずはこの問題を知ってもらって議論を深めていくことが重要で、そのためには地図の提示は意味がある。
一旦は年末までに提示することを約束したわけで示すべき。国民全体での議論を早急にスタートさせなければ。

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その時点で政府がきちんと説明しなければならないのが、本当に日本で地下処分ができるのかという点。ヨーロッパほど安定した岩盤があるわけでなく大きな地震もよく起きるし、地下にはまだ知られていない活断層もあるとみられる。それでも政府としてなぜ10万年の安全を保障できるのか、その根拠について、納得できる説明をしていくことが必要。
今週の高浜に続き、佐賀県の玄海原発などの再稼動が予想され、核のごみは日々増えていく。処分の道筋がたたないまま原発の再稼動だけが続くことのないよう早急に取り組まねば。

(水野 倫之 解説委員)

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