TOP

#なくそう自転車事故
みなさんからの意見にこたえます

2022年2月25日


写真

鹿児島で起きた事故をきっかけに、去年10月からニュース番組やWEBなどで呼びかけているキャンペーン「#なくそう自転車事故」。これまでに県内外から120件以上の意見をいただきました。

その中で最も多かったのが「自転車のルールが認識されていない」というもの。

確かに自動車ほどは知られていない自転車のルール。どうなっているのか調べました。

(鹿児島局記者 庭本小季・堀川雄太郎)


自転車は「車」


写真

まず向かったのは鹿児島県警察本部。交通企画課の石川智彦理事官が強調したのは「自転車は車両の仲間なので車道の左側を走る」ということでした。

道路交通法では自転車は「軽車両」、つまり車に分類されます。そのため自転車は車道の左側を走る必要があるとされています。

ただ、なぜ右側ではだめなのでしょうか。その理由を石川さんに尋ねました。


石川智彦 理事官

車が交差点に入る場合、ドライバーには前方を除いて死角が生まれます。自転車が左側を走っていた場合は、交差点で交わるときに相対的に早く視野に入りますが、右側を走っていた場合は確認が遅れてしまうんです。

自転車と自動車の双方が安全を確保するために、自転車が左側を走ることは必要だということでした。



視聴者から寄せられた不安の声


写真

一方、視聴者からは車道の左側を走ることに対する不安も寄せられています。


視聴者の意見

実際に走ってみると、道路に面した店舗の駐車場やガソリンスタンドに入る車の待機列ができていたり、配達中の業務用の車両や同乗者を待つ車が停車していたりして、自転車レーンがふさがっていることも多い。そのたびに交通量の多い車道に出なければならず恐怖感がある。

石川さんは、こうした自転車の恐怖を取り除くためにも、自動車に協力してほしいと呼びかけています。



石川智彦 理事官

統計があるわけではありませんが、車道を通るのが不安だという方は当然いらっしゃると思います。自転車と車両は基本的には同じ方向へ進行します。車の方が重量やスピードも上だから、追突すれば大きな事故にもつながります。前を見て左の状況、自転車が通っている状況をドライバーも確認してもらいたいなと思います。

また警察は、車道の左側を走るのが難しく歩道に十分な広さがあるところでは、自転車に歩道の通行も認めるなど対策を取っているといいます。

ただこれについても、視聴者からさまざまな意見が寄せられました。



視聴者の意見

広い歩道で歩行者と自転車の通行帯を分けられていても、歩行者が自転車の通行帯を歩いている。それを避けて蛇行しながら自転車を走らせているのを見ると危険を感じる。自転車側だけで注意して走行するのではなく、もっと全体で整備する必要があると感じる。

歩行者の立場からの意見もありました。



視聴者の意見

歩道を自転車が通ると怖い思いをします。だからといって、さほど幅のない車道に、最近いきなり自転車通行表示があるのも違和感があり、これから作る道路は、歩道、自転車専用道路、車道を整備してほしいです。


自転車の違反は取り締まり対象


写真

石川さんは、車道にある自転車通行帯では自転車が、歩道では歩行者が優先されるとした上で、自転車が車である以上、違反は取り締まりの対象になると指摘。

警察は、信号無視や酒酔い運転などの違反を繰り返す自転車の利用者には、違反者講習会への参加を義務づけているといいます。



石川智彦 理事官

自転車は車両であるということを自覚してもらうため基本的なところから説明しています。自転車はスピードが出て転倒すれば自分もけがをしますし、人にけがをさせる可能性も高くなりますので、気をつけていただきたいと思います。

講習では交通ルールの基礎や安全な乗り方などについて3時間かけて説明します。ただ県内では、去年1年間の参加者は1人にとどまっているということです。



減らない自転車と歩行者の事故


写真

気になるデータがあります。警察庁がまとめた全国で発生した自転車が関係する事故の件数をみると、2020年は6万7673件なのに対し、10年前の2010年は15万1683件。この10年間減り続けていることが分かります。

ただ、ここから自転車と人で起きた事故の件数のみ抽出すると、2010年は2770件なのに対し、2020年は2634件とほぼ横ばいです。つまり、自転車事故自体は減少しているものの、自転車と歩行者の事故の数は変わらないままで、むしろその割合は増えているというのが現状なんです。

視聴者からは、現行の法制度と実際の道路環境があっていないのではないかという意見も数多く寄せられました。また、ルールを知るだけでなく自分たちの習慣を変えようと動き出している人たちの情報もありました。

私たちは、そうした人たちの取り組みを取材することで自転車事故を減らすヒントがないと考え、話を聞いてみることにしました。



自転車は車からどう見える?


写真

その1人が、神奈川県相模原市で高校生や保護者に安全な自転車通学の方法を指導している田中章夫さんです。

14年前から、交差点が少ないルートを選んで自転車通学路を策定したり、講習会を開いたりしています。その際、参加者に必ず伝えるのは、自転車が車からどのように見えているか知ることの重要性です。

車道は歩道より危険だと思われがちですが、車から見るとそうではないというのです。


田中章夫さん

車のドライバーは情報としては歩道も車道も見えているんですね。ただ自分の走っている道路に関係のあるところだけが頭に残る。逆に言うと車道しか見えていないんです。車道で自転車がふらついてひっくり返ると、その時からドライバーは見えるんですよね。ドライバーは右車線に行くとかブレーキ掛けるとか対応できる。ただ、歩道で何かがあって車道に放り出されると、その時にしか対処できないんです。

写真

道路交通法で定められた車道左側の走行。自転車に乗っていると「危ない」と感じるときもありますが、自動車のドライバーは通常自転車から離れようとするため、事故が起こりにくくなるというのです。



“納得する”交通安全講習


写真

高校生には、こうしたルールの背景を知り納得してもらうことを心がけているという田中さん。活動のきっかけは、気分転換のため16年前に始めた自転車通勤でした。川崎市の自宅からおよそ40キロ離れた職場まで通っていましたが、当初はたびたび事故にあっていました。

どうすれば事故を防ぐことができるのか考えた結果、自転車だけでなく道路を使う人それぞれの視点を知ることが重要だと気づいたといいます。



田中章夫さん

私もルールの背景を知らなかったのですが、ルールを守ろうとするとやっぱりそれに納得しなければいけないんですよね。納得するには理由を知らなければいけないので、そこの教育がなかった、自分自身受けてこなかったのかなと思います。

自転車に乗る機会が多い高校生にこそ、安全な乗り方をていねいに伝えたい。6年前から、自転車事故の多さに悩んでいた相模原市にアドバイザーとして関わるようになりました。市内にある高校20校のうち10校で安全な自転車通学路の策定に協力し、手がけたルートでは事故が減っているといいます。

「注意して走ろう」
「マナーを守ろう」

田中さんは、そうした呼びかけだけにとどまらない取り組みを通じて、自転車事故ゼロを目指します。


田中章夫さん

通学路の安全というのは、自転車だけでなくドライバーにもきっちり正しいメッセージを発信して、ご協力いただくことが大事だと思っています。神奈川県に限らず全国で共通の課題だと思いますので、その辺フォローできればと考えています。


交通安全アプリ制作の中学生


写真

もう1人はなんと長野県の中学2年生。安曇野市に住む水谷俊介さんです。

小学4年生のときにプログラミングの魅力を知り、それから独学でアプリを開発しています。小学5年生のときに初めて作ったシミュレーションゲームは、自転車に乗っている感覚を体験しながら、横断中の歩行者や一時停止の標識に対して安全に止まることを学ぶものでした。

水谷さんがこれまでに制作したアプリは、いずれも自転車の事故防止を呼びかけるもの。そのきっかけは、小学5年生のときの事故でした。

自転車で習い事から帰る途中に転倒し、前歯を折ってしまったのです。そこで自身の経験を生かし、安全を呼びかけるアプリを開発することにしたといいます。


水谷俊介さん

おそらくスピードを出しすぎて転倒してしまったと思います。事故をすると、とても痛いし辛いので、そのような経験をいろんな人にしてほしくなくて、それでアプリを開発しています。


最新アプリは“鳥の目”で危険察知


写真

水谷さんが1年以上かけて制作した最新のアプリが「Birds eye ぴーちゃん」。鳥のように広い視野をもって危険を予測してもらおうと名付けました。


写真

アプリを起動し、ポケットなどに入れて自転車に乗ると、GPSの位置情報をもとに、一定のスピードを検知したときに音が鳴ります。さらに、あらかじめ登録した見通しの悪い交差点にさしかかったときにも音で知らせてくれるのです。水谷さんは、地元の自治体が公開している安全マップなどを参考にみずから現場もまわり、15か所以上の注意が必要な交差点を登録しました。


水谷俊介さん

死角になっているところでは急に車が飛び出すことがあるので危ないです。音で知らせてくれることで、ぼーっとしているときとか考えごとをしているときにも、ここは危ないから減速しないといけないなどと自分で気づきます。


“自転車の安全に役立てたい”


写真

さらにアプリにはもう1つの仕掛けがあります。自転車の走行を終えると、カプセル入りおもちゃの画面が表示され、クイズが出されます。アプリを通じて、自転車事故防止に役立つ知識を学ぶことができるのです。

水谷さんのアプリはまだ一般にダウンロードすることはできないということですが、今後も改良を重ね、多くの人の自転車の安全な利用に役立てたいと話しています。


水谷俊介さん

アプリを使って「ここが危険だったよ」とか、ふだんの自転車の乗り方などについて話し合いをすることが、事故防止につながるのではないかと考えました。今後の目標はこのアプリを一般の小学生などが使えるようにすることです。自分のような事故を起こさないような工夫をこれからもしていきたいと思います。