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コロナ禍で過ごした3年間の高校生活 最後の日のことばは

  • 2023年03月09日

「青春って、すごく密なので」

去年の夏の甲子園で東北勢初の優勝を飾った仙台育英高校の須江航監督がインタビューで答え、新語・流行語大賞の選考委員特別賞にも選ばれたことばです。

3年しかない高校生活のほとんどをコロナ禍で過ごした、ことしの卒業生たち。その最後の思い出の日、卒業式で発した言葉には、今までにない力強さがありました。

「校歌を合唱した思い出がありません」

新川のせせらぐ音に春の気配を感じ、安勝山の緑が映えるこの良き日に、私たち第74期生214名は卒業します。

只今、時候の挨拶を読みましたが、その中に、大島高校の校歌の歌詞が隠れていることに気付いた方はいらっしゃるでしょうか。気付かなくても不思議ではないでしょう。私たちは、この3年間で校歌を合唱した思い出がありません。

大島高校 田代豊秀さん

奄美市にある大島高校の卒業式で、田代豊秀さんが読み上げた答辞です。その中では、校歌すら満足に歌えなかったことを始めとして、1年生のときには遠足や文化祭、体育祭がことごとく中止になったこと、2年生のときもほとんどの行事が縮小されたことなどを振り返り、悔しさをにじませていました。

一方で、限られた範囲でも最大限の可能性を模索したことについて、前向きに捉えていると述べていました。

この3年間だったからこそ得られた学びがあったと、信じています。何年先になるか分かりませんが、思うようにいかなかったこの時期さえも、笑い話にできるような未来になるといいなと思います。

「私と出会ってくれて、ありがとう」

また、鹿児島市にある鹿児島南高校で行われた卒業式では、大学受験などを控える一部の生徒を除き、多くの生徒がマスクを外して出席しました。

保護者

入学式はマスクだったので表情も見えなくてわからなかったけれど、卒業式は表情も見えてよかった。

女子生徒

ずっとコロナ禍でマスクでしたが、最後にみんなの表情が生き生きとしていて楽しさが伝わりました。

答辞の中では、益村幸志さんが難しい3年間をともに乗り切った友人立ちへの感謝の言葉を述べました。

鹿児島南高校 益村幸志さん

3年生になり、ようやく少し自由が戻ってきて、友人たちと学校行事を楽しむことができてきました。しかし、それには全て“最後の”という言葉がついていて、もう2度とこの行事に参加できないんだと思うと「大切に過ごそう」と思いながらも、まるで一瞬のように過ぎ行く日々に「もうちょっと待って」と言いたくなるような、そんな気持ちになりました。

南高校での一番の思い出は何かと聞かれたら、友人たちと過ごした何気ない毎日だと自信を持って言えます。休み時間や昼休み、他愛のない話で盛り上がり、笑いの絶えない毎日を過ごせました。みなさん、私と出会ってくれて、ありがとう。私はみなさんと高校生活を送れて本当に幸せでした。

「心の中の大事な宝物になる」

そして、この鹿児島南高校の卒業式にはサプライズが用意されていました。式のあと、卒業生で歌手の長渕剛さんが登場したのです。

鹿児島南高校の卒業生でもある長渕剛さん

制約の多い高校生活を強いられた生徒たちにエールを送ろうと、学校側が長渕さんにお願いして実現したという、このイベント。

長渕さんは、過去に鹿児島南高校の生徒とともに歌詞を書いた「卒業」や代表曲の「乾杯」など8つの曲を弾き語りで披露し門出を祝いました。そして、つらい思い出が多かったとしても、この3年間は大切な時間だと呼びかけました。

大変だったよね、決して楽しいだけの毎日ではなかった。むろん僕もそうだった。わけわからなかったよ。コロナなんて初めてだから。とても怖かった。だけど、苦しみは、悲しみは、みんな一緒だからね。仲間って、僕は思うよ。ばかなことばかり言って、楽しいだけの毎日を3年間築き上げても、本当の絆なんて生まれやしないんだから。神様は3年間、すごい試練を僕たちに与えてくれたのかもしれない。雨や風を僕たちにたたきつけた。痛かった、悲しかった、苦しかった、泣いた。その同じ苦しみや悲しみや痛みを共有している仲間なんです。だからこそ、この絆は絶対に切れたりしないから、本当だよ。

時々、ここに来るんだよ。ここに来るんだ。なぜだろうなと思う。やっぱり、10代の頃、この高校時代、一番輝いていた。もしも、人生をもう1回やり直したら、やっぱりここに戻ってきたいと思うよ。本当だよ。一番輝いていて、いま君たちはまさしく人生の中で輝いているど真ん中にいるんだからね。

まだ実感はないと思うけど、そのうち分かるさ。これから鹿児島を離れる人もいるだろう。福岡や大阪やいろんなところへ行くかもしれない。親元を離れていろんなことが分かってくる。そして、いつも帰る場所、仲間、先生たちの顔がここにあったこと。3年間の学び舎がここにあったということ。これがどれだけ生きていく上で自分の心の中の大事な宝物になるかということ。絶対そうだよ。そういう場所なんだよ、南高校というのは。

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