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鹿児島市のサカスタ問題 白波スタジアムの改修ではなぜだめ?

  • 2023年03月16日

視聴者からの疑問にこたえる「かごしま調査団」に、鹿児島市が検討している新しいサッカースタジアムについての調査依頼が寄せられました。「新サッカースタジアムについて白波スタジアムの改修ではなく、新設でないといけない理由は?」というお尋ねです。改修という選択肢はあるのか、取材しました。 (鹿児島放送局記者 熊谷直哉)

白波スタジアムとは

鹿児島市与次郎にある白波スタジアム(県立鴨池陸上競技場)は、1972年の「太陽国体」に向けて整備され、その2年前に開業しました。観客席は1万2000席あまり。鹿児島ユナイテッドの本拠地になっているほか、陸上やラグビーも行われ、県内のスポーツの聖地として親しまれてきました。

白波スタジアム外観

その白波スタジアムでは、ことし開催のかごしま国体に向け、8年間で44億円をかけて屋根の増築や観客席の改修などが行われました。しかし課題があります。JリーグがJ1に参入するチームのスタジアムの基準として設定している「屋根の覆う範囲3分の1以上、観客席1万5000席以上」に達していないのです。

屋根のカバー範囲は9%弱にとどまる

改修の選択肢はあるのか?

このことは、鹿児島ユナイテッドがJ3昇格を決めた2015年ごろから市議会でも取り上げられ、新スタジアム建設検討のきっかけのひとつとなりました。ただ当時、白波スタジアムの改修が本格的に議論された形跡はありません。そこで、改修という選択肢はあるのか、どれくらいの費用になるのか、当事者の市と県に取材しました。

鹿児島市役所本庁舎 取材に対しては…

まず鹿児島市です。去年12月の市議会で「白波スタジアムは県の施設だ」として改修やそのための試算も検討していないと回答しています。

そして県は「国体に向けての改修が終わったので、これ以上の改修は予定していない」とした上で、「鹿児島市において新設する方向で検討が進められているところであり、県としては、市の検討状況を注視していきたい」という回答でした。

改修で費用が安く?

改修と新設だと費用にどれほどの差があるのか。市は議会の特別委員会で、新スタジアム建設にかかる費用は少なくとも160億円以上と試算しています。

一方、改修ではどうなるのか。参考になる事例がありました。東京都町田市にある町田GIONスタジアムです。

J2に所属する町田ゼルビアの本拠地で、おととしまでJ1基準を満たすため、屋根や観客席およそ5000席の増築などの整備をを行いました。鹿児島ユナイテッドとはJ3とJ2の違いはありますが、J1昇格を見据えるという点では同じ状況です。

町田市によりますと、新しいスタジアムの建設も議論にあがりましたが、土地がないという理由で改修に落ち着いたということで、屋根や観客席およそ5000席の増築にかかった費用はおよそ40億円。単純に比較はできませんが、改修だとかなり費用を抑えられる可能性があります。

陸上のためにサッカースタジアムが必要

ただ、今回の取材を進める中で、別の視点もあることが分かりました。話を聞いたのは、鹿児島陸上競技協会の理事長大村一光さんです。

陸上の公式記録の認定に必要な写真判定装置がついている競技場は県内で白波スタジアム1つだけ。ユナイテッドのゲームとの調整がつかない際には薩摩川内市や霧島市の競技場まで移動式の判定装置を持っていく必要があり、白波スタジアムをもっと使えるようになると助かるというのです。

写真判定装置

また、サッカーの試合のあと、数日間は芝生の養育期間となり、サッカーのシーズン中はハンマー投げや円盤投げの競技はほとんどできないといいます。
白波スタジアムを管理しているセイカ・ユナイテッドグループによりますと、スタジアムの令和3年度の利用日は115日。この利用日にはJリーグの準備などで利用できない日は含まれておらず、夏のスポーツシーズンは特に混雑するといいます。

大村一光さん

つくっていただくのであればそれは賛成の立場です。写真判定装置など競技会に必要な器具を移動するというのは、精密な機械で持ち運びにかなり気を使います。サッカースタジアム建設でいろんな意味で今抱えてる問題を解消できます。

改修で芝生に影響が…

放送後視聴者の方から頂いたご意見の中で、新たな視点もありました。

ニッパツ三ツ沢球技場(横浜市提供)

横浜市のニッパツ三ツ沢球技場です。現在J1に所属する横浜FCのホームスタジアムとなっていて、観客席はおよそ1万5000席。観客席はJ1基準を満たしていますが、観客席に屋根がなく、屋根のカバー率の基準を満たしていないため、リーグから改善を求められています。

横浜市によりますと、改修が議論されましたが、スタジアムの構造が原因で新たに屋根を作ると芝の育成に大きな影響がでることがわかったというのです。年間のスタジアム稼働日が90日ほどで、芝生の養育期間などでこれ以上稼働日が減ると影響が大きいと判断。開業59年の老朽化もあいまり、新設の方向で検討されています。

取材を終えて

「白波スタジアムの改修ではだめなのか?」という視点は、私も視聴者からの声が届くまで考えていませんでした。改修と新設。町田GIONスタジアムやニッパツ三ツ沢球技場の例をみても、それぞれの場所による事情やさまざまな関係者の利害関係があり、一概にどちらがよいとはいえないと感じます。

実は私は京都サンガのサポーターで、京都に住んでいた大学生のころまで、毎週のようにスタジアムに通っていました。現在の京都のホーム「サンガスタジアム」は、まさに鹿児島と同じように、長年にわたる議論の末、ようやく3年前に開業した複合型の球技専用スタジアムです。今回の取材は、サポーターとしてスタジアムの建設を待ち望んでいたかつての自分を振り返りつつ、そうではない立場の人の考えを取材で幅広く聞いていくというものでした。 

このスタジアムの問題は、施設を作るというだけでなく、未来の鹿児島のまち作りをどうデザインしていくかという重要なテーマです。ほかにも考えるべきことはないか、引き続き取材していきます。

NHKでは、定期的に視聴者の皆様の疑問について調べてお答えします。コチラのNHK鹿児島ホームページの投稿フォームなどから、質問を寄せてください。

  • 熊谷直哉

    NHK鹿児島放送局 記者

    熊谷直哉

    2020年入局 京都府出身 事件事故や経済を担当 首都圏局での営業部門を経て去年から鹿児島局記者。京都サンガのサポーターで全試合見ています。

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