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日本銀行鹿児島支店長に聞く!ことしの鹿児島経済の行方

  • 2023年01月27日

長引くコロナ禍で落ち込んだ地域経済や暮らしを直撃する物価高など不安を抱える中、幕を開けた2023年の鹿児島経済はどこに向かうのでしょうか。日本銀行鹿児島支店の服部支店長に話を聞くと、意外な予測を見込んでいました。 

(鹿児島局記者 熊谷直哉) 

経済の持ち直しの動き 顕著に

お金を発行し「銀行の銀行」とも呼ばれる日本銀行。でもその支店が何をしているかご存じでしょうか?実は金融機関や企業などからのヒアリングを通して、地域経済の実態を把握し、その現状を本店に伝え、国の金融政策に生かす「調査」が重要な仕事なんです。

鹿児島中央駅に近い上之園町にある日本銀行鹿児島支店 

全国に32ある支店の1つで、鹿児島県と宮崎県を管轄する鹿児島支店の支店長に去年6月に就任したのが服部良太支店長です。これまで本店で金融政策の策定などに携わってきた服部支店長は、ことしの鹿児島経済について、景気は上向くと強気の予測をしています。その理由は何なのか聞きました。

服部さん

鹿児島の景気は、去年から持ち直しの動きが続いていて、それが2023年も続いていくだろうと見ています。
もともと鹿児島県経済の強みは、宿泊とか飲食といった、いわゆる対面型サービスといわれるものにありました。実はこれが一番コロナでやられた業種・セクターだったんです。それが去年半ばぐらいから、感染症の抑制と経済活動の両立がだんだん定着してきて、徐々に経済が持ち直してきました。
また外出に制約がかかっていた間に、使いたくても使えないということで「貯蓄」ができて、そういった人々の潜在的な需要がたまっていました。これが世の中に出てきました。特に個人消費とか、あるいは観光というセクターで持ち直しの動きは非常にはっきりしてきました。

人手不足を賃上げに

その観光やサービス業の足を引っ張りかねないのが、「人手不足」ですが、服部支店長は、むしろ賃上げのきっかけとなり、景気のプラス要因になる可能性もあると前向きにとらえています。

去年12月発表の日銀短観で鹿児島の人手不足は過去最悪の水準に

やはり従業員がいないと、例えば営業時間を縮めないといけないとか、オペレーションを縮小していかないといけない、ものが作れないとか、そういった事がおきます。そうしたときに「賃金を上げたらようやく人がとれた」「だから賃上げに踏み切った」といった声も聞かれています。
企業が経済活動を行っていくなかで、従業員を採用しようと思うと、当然、賃金を上げる上昇圧力がかかってくる状況になっています。

一方で課題も

コロナ後の光明が見え始めた一方で、去年、日本そして鹿児島経済は国際情勢に翻弄されました。

円安とエネルギー価格の上昇で、日本の物価上昇率は40年ぶりの水準に。さらにことしも4月までに7000品目以上の食品や飲料で値上げが予定されています。
鹿児島県の平均年収は全国平均を下回っているだけに、家計へのさらなる打撃が懸念されています。

服部支店長も「物価全体の上昇率が賃金の伸びを上回っているので、専門用語でいうと実質賃金がマイナス。つまり賃金が目減りしてるという状態にあるのは事実だと思います」と話し、物価上昇の影響はことしも続くという厳しい見込みを示しています。

円安をチャンスに

ただ服部支店長は「円安」について言えば、鹿児島にとってチャンスになる可能性があると指摘します。

外資系高級ホテル「シェラトン」は5月に開業予定

ことしはクルーズ船や国際線の再開、そして外資系高級ホテル「シェラトン」開業など、インバウンド需要が期待できる動きが目白押しです。
さらに去年「和牛オリンピック」で日本一を獲得した牛肉など、1次産品の輸出を伸ばす絶好の機会だというのです。

いま日本に来る外国人旅行者にとっては円安で、割安感が非常に強くなっています。ホテルに泊まるにしても物を買うにしても。彼らが日本に来て消費をするというのは、ある意味輸出しているのと同じで、こうした状況を生かしていくことが大事だと思います。
また、まさに鹿児島のブランドというか、特に和牛は去年日本一になったというのもありますので、行政も含めて海外にPRをしていけば、実を結ぶ絶好のチャンスなのではないかと思います。

前向きの循環 生み出せるか

「人手不足」を賃上げのきっかけに。そして円安を輸出のチャンスに。服部支店長は、前向きの流れを生み出せる力が鹿児島にはあると見ています。

経済の前向きの循環メカニズムが、自律的に働いていくかどうかがポイントです。
例えば起点を企業にしますと、売り上げが上がって収益が出ます。それが雇用であったりとか賃金という形で家計の方に流れていく。そうすると家計の方で個人消費が拡大し、最終的な需要の増加につながる。そうするとぐるっと回って、今度は企業は売り上げが増えて収益も増える。こうした前向きな循環メカニズムが自律的に働くかどうかということに注目したいと思います。

取材を終えて

人手不足や円安。日々のニュースでは、その負の側面がフォーカスされることが多いですが、実は捉え方次第ではプラスに動く可能性もあるということが話を理解できました。
しかし前向きの循環が進み賃金が上がるのか、それとも物価高騰などの影響が強く出るのかはまだわからないと感じています。
鹿児島の様々な魅力を取材し、全国に発信していくことで、私も地域経済の活性化に貢献していきたいという思いを新たにしました。

  • 熊谷直哉

    NHK鹿児島放送局 記者

    熊谷直哉

    2020年入局 京都府出身 事件事故や経済を担当 営業部門を経て去年2月から記者に

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