南大隅町に冬を告げる ウツボの天日干し
- 2023年01月10日

情報WAVEかごしまのキャスター宮田侑季です!大隅地方の最南端・南大隅町佐多地区では冬の季節、「海のギャング」ともいわれるウツボを食べています。南大隅町佐多地区の特産品のひとつになっています。でも、ウツボって、水族館にいるあのコワモテのウツボですよね…!?ウツボって食べられるんですか?!ということで実際に、南大隅町佐多地区に行ってみました。
訪れたのは、ウツボ漁師・松元良治(まつもと りょうじ)さん(66)のご自宅です。
着いてすぐ案内されたのは、このハウス!


きのうは150匹のウツボを水揚げしました。早速ウツボを天日干ししている最中です。

上からつり下げられている、この干物がウツボ!12月からこういった光景が見られるようになりました。ウツボは、虫がつかないようにハウスの中に干しています。とはいえ一番大事なのは風通し。ハウスの中ではありますが、風が通りやすいよう工夫しています。この寒風にさらされることで、うまみが凝縮されます。
実は鮮度が落ちやすいウツボ。松元さんによると、刺身で食べられるのは、さばいた当日だけです。そこで、天日干しさせることで日持ちさせ、冷凍して出荷します。その状態だと長くて1年は持つとのことです。その天日干しに至るまでの手間暇かかる準備についてご紹介します!

こちらは、骨をあらかた取り、背開きにしたウツボです。金たわしでぬめりを取っていきます。
そのあと、ウツボの両面にあますところなく、手で塩を塗りこみます。塩はどんどん追加。
塩は、日持ちさせるためと味付けのため、二つの意味合いで使われています。
その状態で2時間おきます。置いたあとは…

塩抜き。水で洗う作業です。表面についた塩を洗って、塩分を抜いていきます。

念入りに洗うことで臭みを出さないようにしています。手間がかかりますが、この丁寧な作業がおいしさの秘密でもあるんです。時間をかけて、このあと、先ほどの作業場で干していくわけです。
気になるウツボの味。松元さんのウツボは一般的にどんな風に食べられているかというと?
★「切り身」を焼いたり。

★「スライス」をカリカリに揚げたり。


カリポリはワサビマヨネーズにつけて食べるのがおすすめ。


海の香りはしますが、ふしぎと鶏肉のようなうまみも。かみ応えのある、しっかりとした肉質でビールやご飯に合いそう!いくらでも食べられますね!
「焼いてよし」、「揚げてよし」、ほかにも「ゆでてよし」のウツボです。
ウツボの産地が抱える課題とは
南大隅町佐多地区の自慢の珍味・ウツボ。
松元さんたちはその味を広めたい反面、課題も多くあります。

ウツボは、さばくのも難しく、この地区でもさばける人は多くはない。塩漬けして干してと時間がかかるから、たくさんは出荷できないというのが実際のところ。また、昔はまわりにウツボを取りに出かける漁師がもっといたが、減ってしまっている。いま一定量安定して出荷しているのは、うちともう一か所だけ。私たちがいなくなったあと途絶えないか不安。自分が元気なうちはこの佐多に続くウツボの漁や製法を守っていきたい。また、これから関心をみんなに寄せてもらって、今後も地元に残すためのアイデアも出していけたら。
町内外の人に人気の南大隅町佐多地区のウツボは、店などに並ぶとすぐ売り切れてしまうこともあるといいます。
食材としての人気が高いのにもかかわらず、漁やその製法の担い手が不足しているのが課題だといえそうです。天日干しの光景も含めてこの地域の風物詩。今後も守っていきたいものですよね…!

取材を終えて
取材した日には、枕崎から来たという方が訪れて一匹まるごと買っていきました。
松元さんに話を聞くと、リピーターが多いとのこと。ファンの多さを知りました。
しかし、今回わたしにとっては未知の食材で、初めて知る味でした。
まだ鹿児島にはさまざまな食材の可能性があると感じて、今後の取材も楽しみになりました。
