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鹿児島県沖永良部島 島に若者が・・・ コロナ禍の新たな働き方

  • 2022年11月22日

国内の高齢化が進む中、最近「若い人が増えた」という話がよく聞かれる島があります。
その島とは人口およそ1万2千人の鹿児島県沖永良部島です。その裏にはコロナ禍で始まった「新しい働き方」がありました。
沖永良部島からの情報WAVEかごしまの生中継、「うとぅるしゃんどエラブ」にあわせて奄美支局の庭本記者が取材しました。

(奄美支局記者 庭本小季)

移住の決め手は海と「働き方」

向こうにいるときより、こっちの方が好きだなと思いながら過ごしています。やっぱり海ですかね、自然が多いのと海が好きなのでふらっとこういう所にこれるのは贅沢だなと

東京都出身の碩由佳理さんです。ことし6月、沖永良部島に引っ越してきました。大学を卒業後、東京で保育士として働いていた碩さん。しかし職場になじめず退職。
アルバイトをしながら日本各地をまわって、生活したい場所を探す中、出会ったのが沖永良部島でした。

碩由佳理さん

最初は奄美大島を見ていたんですけど、都会だなと思ってしまって、そこから近くの島とか見て気になるなと思ってなんとなく来たのがきっかけですね、エラブは

沖永良部島の自然を見て、憧れだった海辺での暮らしを実現させたいと強く思った碩さん。しかし、島には知り合いもいなければ、仕事のあてもありませんでした。そんなときに紹介されたのが、島に暮らしながら、半年ごとに人手が足りない場所で働くという、自分にぴったりの働き方でした。

碩由佳理さん
仕事も紹介してくれて、家もこんなのあるよ、みたいな。またイチからほかの島に行って自分で探してっていうのも大変だなと思ったら、こういうのも縁かなと思って、エラブに決めましたね

移住を後押しの仕組みは?

碩さんの移住を後押しする仕組みを作ったのが、「えらぶ島づくり事業協同組合」の金城真幸さんです。金城さんのもとには、全国から島に移住したいという連絡が相次いでいると言います。

えらぶ島づくり事業協同組合 金城真幸さん
応募者数に関しては80名以上いらっしゃいました。想像よりも多いなぁというふうに思いました

その仕組みです。沖永良部島では、夏はダイビングや洞窟めぐりなどの観光。

秋から春にかけてはジャガイモや花の生産と、人手が不足する現場が季節ごとに変わります。
これまでは外国人技能実習生でまかなっていましたが、コロナ禍でその数は半減。

そこで島で働きたい人を事業共同組合が、職員として採用。自治体の支援を得て給与も支払います。そして繁忙期に合わせて、人手を必要とする島内のさまざまな現場に派遣するのです。

ことしの7月に事業を始めると、全国から80人が応募。平均年齢は26.5歳の若者10人が採用され、地元の農家や観光ホテルなどで働いています。

えらぶ島づくり事業協同組合 金城真幸さん
コロナの影響もあってリモートでもできるし今、東京に住む必要がないから海がそばにある地域で暮らしてみたいっていう話をよく聞くようになりましたね

地元企業も“採用の悩み減った”

碩さんが紹介されたのは和泊町のホテルのフロントの仕事です。碩さんを雇用する地元企業の担当者も、採用での悩みが減り、助かっていると話します。

山田企業グループ 山田朗人常務取締役
島での採用は本当に難しい状況にありまして、非常に優秀な人材を派遣していただいて、即戦力で仕事に当たっていただいて一番助かっています

島での生活面もサポート

碩さんのような移住者を、事業協同組合は生活面でもサポート。暮らす場所や、生活に必要な車の購入などさまざまな相談にも乗ってくれます。

碩由佳理さん

心強いですね。なんか何でも話せるというか悩みとかも聞いてくれるし。それを深刻な感じじゃなくて、聞いてくれるのが結構私は助かっている

「新たな働き方」で活気ある島に

島の人手不足を支えながら広がる「新たな働き方」。金城さんは、この仕組みを通じて島がさらに活気づいてほしいと願っています。

えらぶ島づくり事業協同組合 金城真幸さ

やっぱり人に魅力がある。帰ってくると、みんなほんとにウェルカムで優しくしてくれるんですよね。なかなか日本にはなくなってきているので、やっぱりこういう島の魅力のひとつなのかなと思いますね。それを多くの人に知ってもらいたいと思いますね

取材後記

若い人を呼び込んで、島の人手不足を解消する。同じような悩みを感じる多くの離島の自治体にとっても注目の取り組みだと感じました。
こうした取り組みは国も後押ししていて、北海道や、島根県などでも行われているほか、県内でも与論町や伊仙町でも設置を検討しているということです。新たな働き方で変わりつつある沖永良部島。ほかの島の取り組みについても取材を進めていきたいと思います。

  • 庭本小季

    奄美支局記者

    庭本小季

    2020年入局 岐阜県出身 事件事故や防災、調査報道などの担当を経て現在は奄美支局。

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