「絶メシ」生みの親に聞いた!地域創生のカギ わけもんラボ
- 2023年02月01日
わけもんラボのキックオフから1か月弱たった9月15日。オンライントークショーを開催しました。
話を伺ったのは、地域創生プロジェクト「絶メシ」の生みの親でもあり、様々なコンテンツを手掛ける畑中翔太さんです。今回は、講演内容を大公開。地域創生に興味がある方、必見のレポートです!
畑中翔太さんプロフィール
〇 クリエイティブディレクター・プロデューサー・脚本家
〇 「人と社会を動かす」広告キャンペーンを数多く手掛ける。
〇 近年では、広告領域とともに、ドラマや番組などのコンテンツ領域における企画・プロデュース・脚本を務める。
<ポイント>
■どんな地域にも、磨けば輝く「原石」が埋まっている(資産)
■でも、それは伝え方次第では「ただの石」のまま
■「見え方」や「伝え方」を変えることがカギ
■「ないものねだり」ではなく、「あるものさがし」をすることが大切
大切なのは見方を変えること
畑中さん:きょうは、地域創生術・町おこしのヒントについてお話します。私は「どんな地域にも原石が隠れている」と思っています。でも、伝え方によって本当の魅力が伝わらない「ただの石」のままになっているところも多いと感じます。一番大事なのは、視点を変えることで新しい価値が生まれるということ。新しいものを手に入れようとするのではなく、視点を変えて価値を創出するのがコミュニケーションであり、クリエイティブであり、地域創生だ、と考えています。
「町おこしがライフワーク」と語る畑中さん。見方、伝え方を変えることで地域の社会課題解決に成功した事例を、ふたつ紹介してくれました。
例その① 絶メシ
畑中さん:プロジェクトの発起人は、群馬県の高崎市でした。古くは北関東の交通の中心地、現在でも群馬県最大の都市ですが、私自身この仕事をするまで、この駅で降りたことはなかったです。当初「高崎の町おこしをしてほしい」という、すごくシンプルなお題をいただきました。
このような地域活性化への要望は珍しくないですが、「絶メシ」発案のきっかけは、「高崎の町をひたすらめぐる」というフィールド視察だったそう。
畑中さん:町なか、そしていろんな飲食店さんをめぐる中で、ホルモン屋さんに行ったんです。そのお店、塩ホルモンがすごくおいしくて、「最高だったからまた来るよ」と大将に言ったら、こう言われたんです。「いや、次来てくれた時はもうこの店やってねえかもな。貴重だから今日食っとけ。」と。その時に思いついたんですよね。
畑中さんは、世間やメディアは、存在がなくなると知ると、惜しんで急に動くものなのだと考え、その行動原理を利用して町おこしにつなげよう、と考えました。
畑中さん:高崎の交差点で、絶滅危惧酒、というアイディアが浮かびました。そこから、ごはんもお酒も飲食店も居酒屋も、なくなってしまいそうなお店を紹介したらどうか、と考え、絶メシリストというのを生み出しました。「地元の古い飲食店」を、「今すぐ行かないとなくなってしまう希少なお店」に価値転換すること。ここが絶メシの全てのポイントです。
情報サイトから始まった「絶メシ」。大事なのは編集方針だったと言います。
畑中さん:味だけではなく、そこに感じる歴史や、おじさんの人柄を含めた味わいを楽しむ、味わいを食べるグルメサイト、という方針にしました。
地方が抱える飲食店問題への新たな取り組みとして、全国的にも話題になった「絶メシ」。
畑中さんによると、一般の人々による絶メシ巡りや、サイトを通じた後継者募集も行われ、宣伝効果は10億円を超え、掲載店の売り上げも20パーセント増加するなど、高崎の街に再び活気が戻ったといいます。その後さらに、飲食事業、イベント事業、ドラマなどのコンテンツ事業にも展開して30以上の事業者と協業。高崎市以外にも石川県、神戸市、広島県、柳川市(福岡県)と地域も拡大し、経済効果、PR効果は現在100億以上になったそうです。
畑中さん:大事なのは、古い飲食店を、なくなってしまうかもしれない希少なもの、と見方を変え、地域の町おこし装置=資産に変え、人を動かしたことです。多くの事業者と協業し、持続可能な地域創生装置を作ることに成功しました。
例その② 静岡市プラモデル化計画
続いて紹介されたのは、2021年2月に発足した静岡市プラモデル化計画(グッドデザイン賞も受賞)。事の発端になったのは、「静岡市といえばこれ!といったシンボルがない。お茶や富士山など、静岡県のイメージと一緒になってしまっている。市の観光交流客数も停滞していて、活性化したい」と相談をうけたことだったそう。
畑中さん:静岡市の名産や特産について話を伺う中で、プラモデルの全国の8割以上が静岡市で生産されていると聞きました。何となくイメージはありましたが、そんなに多いとは知らなくて。聞いてみると、玄人のプラモデラーに向けたイベント展開などをしている、とのことだったので、世界に誇れる静岡市のプラモデル資産を、コアファンだけではなくみんなが楽しめる装置にしよう、とプロジェクトの狙いを定めました。
プラモデルが持っているあのワクワク感で、静岡の街を日本中に、そして世界にもアピールできないか?…町をまるごとプラモデルにしちゃおう。名付けて、静岡市プラモデル化計画。
街に根付く伝統産業を、町に人々を呼び込む観光資産に。
畑中さん:今後静岡市のあらゆるところにこれを設置していって、これを見るために静岡駅で降りる、という観光装置にしたいなと思っています。このプロジェクトは、「玄人向けのプラモデル」以上にいかなかったものを、みんながワクワクする観光資産に変えていく、というプロジェクトです。まだまだ組み立て中です。
ないものねだりではなく、あるもの探し
高崎市発の「絶メシ」と、静岡市発の「静岡市プラモデル化計画」。形は違っても共通するのは、ないものねだりではなくあるもの探しをしたこと、と畑中さんは言います。
畑中さん:「うちの地域はなにもない」という方も多いですが、原石(資産)は絶対眠っていると思います。なので、今あるものをどう探すかを大事にしています。何もないよ、という言葉は注意して聞いています。
わけもんメンバーも質問を投げかけます。
眠っている資産を探すうえで、県外の畑中さんの立場だからこそわかる部分はありましたか?
はい。県外からフラットに見ることができるというのは強みだと思います。
2つの事例ともに斬新なアイデアだなと思いました。斬新だからこそ、地域住民の方や行政から反対意見は出ましたか?
そうですね。地域系の仕事は簡単にいかないことが多いです。絶メシの場合は、公開1週間前まで議論していました。ただ、「絶メシ」という言葉は強いけれど、愛にあふれた取材をしていることがサイトからも伝わっているはず。「なくなっちゃうね」ではなく、「なくなってほしくない」という気持ちの温度が伝われば、炎上もしないと思っていました。あとは町の人たちを説得するだけでした。
確かに、〇〇グルメマップだと行政でよくありそうな名前ですものね。キャッチーなネーミングが大事で、あとは地域の方にどう納得してもらうか、だとよくわかりました。
私は、企画をたてる中で、自分の興味や年代にひっぱられてしまいがちです。フラットにみるために気をつけていることはありますか?
割と冷めてみている、というのが自分のスタイルです。これまで広告をやってきた中で、どの企業さんも、「この商品はここが優れているから、意味や効果をわかってもらえれば絶対買ってもらえる」って言うんですよ。でもそんな世界はありえないと思っています。だとすると、みんなが同じ商品をいくつも持っているような世界になってしまうから。商品が魅力的なのは理解しつつも、それで他と差別化はできないな、等、冷静な温度感は保っているつもりです。僕は町おこしや地域創生が好きなので、だからこそフラットな目線でみているかもしれないです。
眠っている原石を探し、磨いて資産に。大切なのは伝え方
今回の講演で、わけもんメンバーは、地域創生において大事なのは「いまある原石(資産)を探し、磨きあげ、よりよい方法で伝えること」だと学びました。
「鹿児島を元気に」をかかげ活動するわけもんメンバーも、鹿児島への愛(そして、時にはあえて冷めた見方で)を胸に、地域と向き合っていきます活動を続けていきます!
畑中さん、貴重なお話をありがとうございました。