鹿児島在住の外国人のためにできることは? わけもんラボ
- 2022年11月15日
災害時、鹿児島にいる外国人が困らないようにしたいと集まったのが、Dチーム。メンバーはあやちさんとそうたさんの2人です。あやちさんとそうたさんは、まず、鹿児島に住んでいる外国人は防災についてどんなふうに考えているのか、自分たちが何をしたら良いのかニーズを探りたいと考えました。
まずはニーズを知りたい!!
鹿児島在住の外国人から話を聞くため、鹿児島市の国際交流センターを訪問。日本に来てまもない学生から長年鹿児島に住んでいる人まで多くの外国人に話を聞きました。
① 日本語学校に通う学生(ベトナム出身)
② ALTで4年前に来日したスティーブさん(アイルランド出身)
③ 鹿児島ベトナム人会の会長のチャンさん(ベトナム出身)
④ 鹿児島市国際交流センターで働くオさん(韓国出身)
え、災害は…ちょっとワクワクする?!
まず話を聞いたのは日本語学校に通うベトナム人の学生たちです。
ベトナムに住んでいたときにどんな災害がありましたか?日本とは違いますか?
ベトナムではたぶん台風が多いですね。地震とかはあまりないですよ。
桜島がドンって噴火したときは怖いと思いますか?
怖くないです
ベトナムでも洪水になることがあるので、水害への意識はあるようでしたが、地震や火山の噴火についてはあまり危機感をもっていない様子でした。
続いて話を聞いたアイルランド人のスティーブさんも災害への意識が高いわけではありませんでした。
アイルランドで災害というのは何かありますか?
あまりないです。台風はないし、地震もない。あまり災害はないです。時々たくさん雪が降るくらいです。
先日の台風(14号)は大変でしたか?
今回は問題なかったです。初めて見たから、ちょっとワクワクしました。これは面白い。問題なかったです。
では桜島が噴火したときにどう避難するかは知っていますか?
噴火したとき(※1)は、そのとき鹿児島にいなかった。でももし噴火したときは、そのときにいる学校が教えてくれると思います。
避難訓練の経験はありますか?
一度も経験したことがありません。アイルランドでもないです。
参加できるなら参加したい。
地震などの災害の経験がない外国人に、災害に備えてもらうために危機感を持ってもらうことの難しさを感じるとともに、避難訓練の経験も個人差があることがわかりました。
※1・・・2022年7月24日
災害時にどうやって情報を得ているの?
あやちさんとそうたさんは長年鹿児島に住み、外国人の支援も行っているキーマンにも話を聞きました。10年前に来日したベトナム人のチャンさんからは、鹿児島に住むベトナム人がどのように情報を得ているか聞いていきました。
私は学校だけじゃなくて、ベトナム人会の会長もやっているんですが、ベトナムのコミュニティーを作るためにやっている会なんですね。ベトナム人が困っているとき、聞きたいことがいろいろとあると思う。そういうときに私やベトナム人会、ベトナム人会のSNSに連絡が来ます。
チャンさんが発信する側として、何か災害が起きたときに、この情報を発信しようとかいう情報源ってどこが思い浮かびますか?
ベトナム人の仲間はSNSが一番強いですね。最近、ベトナム人や外国人向けに出入国在留管理庁もSNSを作ったんです(※2)。そこにいろいろな情報も流れているんですよ。
※2・・・2020年6月29日に作成。
災害時の外国人を支援するときの課題は?
続いて話を聞いたのは韓国人のオさんです。オさんも、外国人が災害時にどう避難を促すか危機感を持っていました。また国際交流センターや日本語学校でも独自で避難訓練や翻訳などの取り組みを進めていて、その中で感じていることを話してくれました。
日本人は地震になったら、まずは身を守るとか、避難所になっているどこかに逃げるとかが、何となく頭の中に入っているので、そのとおりにすると思うんですけど、外国人はほとんど経験がない。まず何をすればいいか分からないですよね。この中にいてもいいのか、外に出るべきかすら分からないんです。なので基本情報といったら圧倒的に差がある。それをどう埋めるか。
その話を聞いたあやちさんが一つアイデアを出しました。
日本語学校とかで留学生とか外国人の人たちがやさしい日本語って教わるじゃないですか。そういったところに、例えば鹿児島の大学生とかが参加することで、「外国人に対するやさしい日本語はこういう日本語なんだよ」というのを日本人の学生も知るという試みはないのかなって。
要はやさしい日本語を教えている現場に日本人の学生さんが来て、見学なりしながらこういうふうに伝えてるんだな、みたいなことですね。
そういった先行事例がありますか?
今までうちは実施したことがないですね。外国人に教えるための講座だったら外国人で完結してしまうので、そこに日本人をということですね。確かにちょっと検討する価値があるのかなと思いました。
鹿児島に住む日本人が、どう関わるか
国際交流センターのオさんは災害時に外国人に支援が必要だという認識が、日本人の中でも広がってほしいと話してくれました。
鹿児島市国際交流センター オさん
鹿児島に住んでいる日本人の皆さんの中には、周りに外国人がいるということに気付いていない人がいっぱいいるんですよ。なので災害になったら、例えば「外国人のことを配慮しなきゃいけないんですよ」という認識があまりなかったりもするので、私たちの周りには実はこれだけの外国人が住んでいて、日本語が通じなかったり、ストック情報が無かったりして困っていますよと。そういった認識が広がっていったら、それだけで十分変わってくると思いますね。
ヒアリングを終えて
あやちさん
きょう実際にいろいろな人にインタビューして思ったのが、外国の方というのはあまり鹿児島に来て災害というものを考えていないんだなと。災害が起きたときにどれだけ怖いものかというのを実際に体験してないからというのもあると思うんですけど、例えばこちらに来て数年たっていても実際に台風とかが来たら「楽しい」「ワクワク」と思ってしまう。それがすごく私は怖いなと思いました。そういった人たちに危機感を持ってもらって私たちもサポートできる、そういう何かしらの取り組みを今後していけたらなと思います。
そうたさん
僕たちがどうしていけばいいのかというところが、話を聞いた後に結構明確になるのかなというふうに思っていたのですが、むしろ私たちに求められていることがあまり多くない。何をすればいいのかというのをしっかり真剣に話し合っていって突き詰めていかないといけないなと思っていて、まずはターゲットをしっかり絞るということを話し合いでやっていきたいなと思いました。
「災害の基礎情報をやさしい日本語で伝える講座」を作ろう!
今回の聞き取りで、鹿児島に住む外国人が災害への危機感を持っていないこと。そして災害時の情報入手の手段にもそれぞればらつきがあり、避難訓練などの経験も個人差があることがわかりました。
今回の聞き取りを通じて、やさしい日本語で外国人と接する人を増やすことの重要さに気がつきました。チームで話し合い、今後「災害の基礎情報をやさしい日本語で伝える講座」を作っていくことにしました。この講座を通じて▼外国人には災害の基礎情報を知って正しく恐れてほしい▼日本人には、やさしい日本語の練習かつ、災害時に外国人のことを考えてもらうきっかけにしてほしい、と考えています。外国人と日本人の双方向に学びのある講座を作りたいと思って活動しています。