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鹿児島鹿屋 アメリカ軍無人機配備 その背景に何が?

CSIS=戦略国際問題研究所 上席研究員にインタビュー
  • 2022年10月30日

自衛隊の鹿屋航空基地で近く運用が始まるアメリカ軍の無人偵察機「MQ9」どんな性能があり、その狙いはどこにあるのでしょうか?。ワシントンにあるシンクタンク、CSIS=戦略国際問題研究所の上席研究員で、国防長官のもとで働いたこともあるジョン・シャウス氏へのインタビューを交え、お伝えします。 

(鹿児島局記者 西﨑奈央)

MQ9その性能は

鹿屋航空基地 10月27日

鹿屋航空基地で運用に向け動きが本格化しているアメリカ軍の無人機「MQ9」。全長は11メートル、翼の端から端までだと20メートルあり、一般的な軽飛行機より一回り大きいイメージです。

機体前方の下についているのが高性能のカメラ。相手の艦艇などの映像をリアルタイムで地上に送ることができます。

今回、鹿屋基地にはあわせて8機配備される予定で、防衛省は、複数の機体を連続して運用することで、切れ目なく情報収集が可能になるとしています。

このMQ9、実は、精密誘導爆弾など武器の搭載も可能で、これまでアフガニスタンやイラクでの軍事作戦で使われたこともあります。ただ、防衛省は、鹿屋に配備されるMQ9については、情報収集用の仕様になっているため、武器は搭載しないとしています。

なぜMQ9が鹿屋に配備?

防衛省は、▼東シナ海などで情報収集を行いやすい地理的な条件、そして、▼自衛隊との連携、さらには、▼運用に必要な滑走路や格納庫があることを考慮し、鹿屋を選んだと説明しています。

CSIS上席研究員 ジョン・シャウス氏

一方で、アメリカ軍の戦略に精通した人物は、台湾情勢を念頭に置いたものだと指摘しています。その人物とはワシントンにあるシンクタンク、CSISの上席研究員で、国防長官のもとで働いたこともあるジョン・シャウス氏です。
このシャウス氏が指摘するのが、中国軍が台湾統一に向けて武力侵攻するいわゆる“台湾有事”に備えて、南西諸島の監視活動を強化する必要性です。
 

CSIS上席研究員 シャウス氏
(鹿屋を選ぶにあたっては)去年の終わりから今年の初めに、さまざまな場所で調査が行われたのではないか。このところ、中国は、南西諸島から台湾にかけての圧力を明らかに高めている。MQ9の配備は、今何が起きているのかを見極め“有事”を起こさせないために日米両国の対処力を向上させることが非常に重要だ

台湾情勢の緊迫化に備えるために、鹿屋への配備があるのではないかと指摘するシャウス氏。

中国が台湾有事を念頭に、アメリカ軍の接近を阻む防衛ラインと見なす「第1列島線」。台湾から沖縄・奄美といった南西諸島、そして延長線上に鹿屋があります。台湾問題をめぐって米中の対立が激しくなる中で、第1列島線沿いにある鹿屋の地政学的な重要性が高まっていると指摘します。

“台湾有事”の可能性は?

台湾有事の可能性については専門家によって見解がわかれています。ただ、中国の習近平政権が異例の3期目に入る中で、台湾統一に向けた軍事的な圧力はさらに強まるだろうというのが大方の見方です。

こうしたなかシャウス氏などが今、行っているシミュレーションがアメリカメディアで大きく取り上げられています。シミュレーションでは2026年に中国が台湾への侵攻に踏み切ったという想定で、ことし8月から行われているものです。

シミュレーションで使われた地図には、九州本土のあたりに航空自衛隊を意味する「JASDF」という文字があり、そして「support aircraft」、「支援機」とも書かれています。シミュレーションでは、アメリカ軍が日本国内にある基地を使用するだけでなく、自衛隊が支援にあたるシナリオも含まれています。
シャウス氏は、“台湾有事”となれば、日本の役割も求められることになると指摘します。

CSIS上席研究員 シャウス氏
普段からわれわれは有事にどう対処するかというシュミレーションを行っている。台湾有事において、どのようなリスクが潜んでいるのかを分析し、備えなければならない。その上で、アメリカとしては何よりもまず日本に防衛力を強化することを求めている。自衛隊はその役割を担ってほしいし、われわれはそれをサポートする用意がある

自衛隊基地の共同使用 専門家は

自衛隊基地にアメリカの無人機が配備され、さらには、一時的にせよ、アメリカ軍の部隊が駐留するのは初めてのことです。自衛隊基地の共同使用について、日米同盟のあり方を長年研究してきた専門家からは、問題点を指摘する声が出ています。

軍事評論家 前田哲男さん
これまでになかったような基地提供のあり方が今回の鹿屋で実体化するということになる。今進んでいる日米の(基地の)共同(使用)の枠組みというのは1つエスカレートした形になっていく。そういうような行動をとれば中国側も当然ながら敵対国として受け止めることはもう明らかなので、そういう意味で攻撃を受ける可能性というのも考えておかなければならない

日米”一体化”の動き進む中で

鹿児島県内では、鹿屋のほかにも、南西諸島の防衛体制強化の名のもとで、日米のいわば“一体化”に向けた動きが着実に進んでいます。

奄美大島で11月に行われるアメリカ軍との共同演習では、装備品や燃料などの集積を行う日米共同の後方拠点が設けられる予定です。

さらには、奄美駐屯地に配備され、訓練でも使われる予定の「12式地対艦誘導弾」について相手のミサイル発射基地などを狙ういわゆる「反撃能力」も念頭に、射程を大幅に伸ばすことも議論されています。
一方、こうした一連の動きは、地元の住民の理解が追いつかないまま、進められているのが現状です
力に力で対抗することが本当に抑止力になるのか、地域の住民がかえって危険にさらされることはないのか県民全体で議論するときに来ていると思います。

  • 西﨑奈央

    NHK鹿児島放送局 記者

    西﨑奈央

    2019年入局。警察担当や薩摩川内支局を経て、県政や調査報道、国際問題などを担当。

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