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鹿児島県内の避難所1800か所を調査!きっかけは12歳の調査依頼

  • 2022年11月21日
12歳の女性からの調査依頼

視聴者からの疑問にこたえる「かごしま調査団」。
今回は、9月の台風14号の高潮の映像を見た12歳の女性からの調査依頼です。
県が体育館を作ろうとしている場所だと思いますが、避難場所として大丈夫ですか。
早速、取材してきました。

(鹿児島局記者 平田瑞季・熊谷直哉)

新総合体育館は避難所になるの?

県が計画している新総合体育館の整備予定地となっているのはドルフィンポート跡地。その近くの鹿児島港では9月の台風14号の際、1メートル88センチの潮位を一時的に観測。押し寄せた波で柵が破損し、木材などが散乱しました。

新体育館整備予定地周辺のハザードマップ

ハザードマップを確認すると、この場所は川に近く0.5メートルから3メートル浸水すると想定されています。県の担当者は取材に対して「想定される災害に十分対応できるよう整備に向けた検討を進めていきます。市町村は一定の基準に適合する施設を指定避難所として指定しなければならないとされており、設計段階以降においてその必要性があれば、鹿児島市から相談がなされるのではないかと考えております」と答えました。

つまり、避難所としての活用も想定して設計する一方、避難所の指定は市が行うため、いまの段階で県としてはっきりとしたことは言えないということでした。浸水想定区域に入っていることについては、かさ上げをするなどとして浸水に対応するとしています。

県の担当者に質問

1800か所あまりを徹底調査

こうした浸水想定区域内にある避難所は県内にどのくらいあるのか。私たちは今回のお尋ねをきっかけに、県内1800か所あまりの避難所をGIS=地理情報システムを使って調べてみました。具体的な作業は、QGISというソフトで国土地理院の地図に国土交通省や自治体のデータを重ね合わせて分析するというものです。

QGISによる分析

水色が浸水する場所、点が避難所を示しています。「1000年に1度」のいわゆる想定最大規模の雨が降った場合は洪水などで少なくとも63か所。そして津波では少なくとも12か所が浸水する想定区域に入ることが分かりました(※詳細は文末に掲載しています)ただ、今回使用したデータには中小河川は反映されておらず、実際にはもっと多い可能性があります。

どういった場所が入っているの?

最も浸水深が大きい場所の1つとしては、川内川の近くがあげられます。そのひとつ、薩摩川内市の「すこやかふれあいプラザ」では最大5メートルの浸水が想定されています。

姶良市文化会館

そして津波では、自治体が悩みを抱えているケースもありました。「加音ホール」とも呼ばれ演劇やコンサートなどで使われている姶良市文化会館です。収容人数はおよそ1500人(コロナ時は約700人)の、姶良市で最大級の避難所です。しかし、海からの距離はおよそ400メートル。津波で1メートル浸水すると想定されています。なぜ浸水する場所に避難所が指定されているのか。

姶良市の担当者
これ以上の公共施設となりますとかなり離れた場所にございまして、湾岸に近い方々の避難場所としてはこの大きな、人が収容できる施設、ここをどうしても開けないといけないということで、指定避難所にしています。

自治体はどうすれば

リスクはあるが、他に場所がない。こうした場合、自治体はどう対策すればいいのでしょうか。住民の避難行動に詳しい京都大学防災研究所の矢守克也教授は、数が限られている自治体では、浸水想定区域内の避難所はやむを得ないとしたうえで、災害の種類で分けることが大事だと話します。

矢守克也教授
常に使いませんっていうふうにしてしまうと本当に避難所が不足してしまうことになります。使える避難所は有効活用するという姿勢が重要ではないかと思います。同じ避難所と呼ばれていても、そこが大雨浸水災害を想定して逃げられますよとされている避難所なのか、津波を想定しているのか、地震を想定しているのか、自治体として、そういった災害の種類に関してしっかり情報を出すということは必要だと思います。

取材を終えて

避難所だからすべてが安心というわけではありません。私たちは今回、自治体の地域防災計画やホームページなどで避難所をチェックしましたが、津波や大雨などケースによって分けられている自治体もあれば、「避難所」としか書かれていない自治体もあり、実際に避難しようとした際に、どこが安全か分かりづらい面もあると感じました。また自治体は、避難所に移動するまでの間の危険性も含めて検討してほしいと思います。

そして、自治体が情報を周知することももちろん大事ですが、自分たちで調べておく必要があると感じました。住んでいる場所のハザードマップを見て、最寄りの避難所が浸水想定区域に入っていないか、避難所へ行くだけでなく自宅の中で垂直避難を行うべきかなどを、日頃から考えておくべきだと思いました。

情報を寄せてください!

NHKでは、定期的に視聴者の皆様の疑問について調べてお答えします。ホームページの投稿フォーム(コチラ)などから、質問を寄せてください。かごしま調査団のコーナーでした。

NHKが行った調査で浸水想定区域に設けられていることが分かった指定避難所は以下の通りです(災害の種類ごとに分けられている指定避難所は含まず)。

【想定最大規模による降雨】
▼鹿児島市
城南小学校
玉江小学校
山下小学校
鹿児島中央高校
清水中学校
城西中学校
西原商会アリーナ
中洲小学校
松原小学校
甲東中学校
甲南高校
甲東福祉館
甲南福祉館
松原福祉館
名山小学校
鹿児島玉龍高校
中央公民館
荒田小学校
八幡小学校
鴨池中学校
甲南中学校
天保山中学校
鹿児島大学(第2体育館)
鴨池福祉館
八幡福祉館
西田小学校
原良小学校
鶴丸高校
田上小学校
武小学校
伊敷公民館
郡山中学校
南小学校
鴨池小学校
真砂福祉館
武町公民館
松元地区保健センター
▼薩摩川内市
川内農民会館
亀山地区コミュニティセンター
薩摩川内市役所
鹿児島県北薩地域振興局本庁舎
SSプラザせんだい
川内北中学校
薩摩川内市中央公民館
可愛小学校
川内高校
薩摩川内地区交通安全協会
薩摩川内市水道局
育英地区コミュニティセンター
育英小学校
平佐西小学校
平佐東小学校
アミティプラザ東郷
すこやかふれあいプラザ 
峰山地区コミュニティセンター
▼さつま町
虎居地区公民館
湯田いきいき研修館
▼南さつま市
内山田地区公民館
本町公民館
地頭所公民館
内山田小学校(体育館)
▼湧水町
いきいきセンターくりの郷

【最大浸水想定の津波】
▼鹿児島市
磯ビーチハウス
小池公民館
▼姶良市
姶良市文化会館「加音ホール」
▼南さつま市
赤生木地区公民館
▼いちき串木野市
本浦交流センター
▼南大隅町
鹿児島きもつき農協根占支所
▼西之表市
市民体育館
▼奄美市
笠利小学校
節田小学校
▼龍郷町
円公民館
秋名コミュニティーセンター
赤徳小中学校

  • 平田瑞季

    NHK鹿児島放送局 記者

    平田瑞季

    2018年入局。事件事故の担当を経て奄美支局。世界遺産や奄美や沖縄の復帰を取材している。

  • 熊谷直哉

    NHK鹿児島放送局 記者

    熊谷直哉

    2020年入局 京都府出身 事件事故や経済を担当 営業部門を経て2月から記者に

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