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鹿児島県の新総合体育館 専門家「経済効果疑問」その真意は?

  • 2022年11月19日
現場を視察する萩原准教授

鹿児島県民から多くの関心が寄せられている新体育館問題9月に新体育館の経済効果について報じたところ、さまざまな意見をいただきました。その1人が、スポーツ施設が地域経済に及ぼす影響について専門で研究している名古屋学院大学の萩原史朗准教授です。そして、南さつま市出身の萩原准教授は実際に鹿児島に視察へ来ることに。同行して取材しました。

(鹿児島局記者 熊谷直哉)

整備予定地ドルフィンポート跡地にて…

萩原教授が視察に訪れた10月4日。私たちは新体育館の整備予定地ドルフィンポート跡地の近くで待ち合わせました。開口一番、萩原准教授は

萩原准教授

渋滞は大丈夫なのかな

このように口にしました。

この日、鹿児島中央駅からドルフィンポート跡地にやってきた萩原教授。本題の経済効果の話に入る前に、鹿児島で社会問題の一つになっている渋滞問題の更なる悪化に懸念を示しました。

そしてスポーツ施設が地域経済に及ぼす効果について、賃金や税収を増やすという効果はないという研究結果を明らかにしました。 

萩原准教授

学術的にスタジアムとかスポーツ施設が、雇用とか賃金とか税収を増やすのかというと増やさないというエビデンスがある。だから無理に経済効果とかを出すのではなくて、公共施設として地域の人に利用してもらうことを考えた方がいい。

次に萩原准教授は、ドルフィンポート跡地から天文館までの道を歩いて、このように述べました。

萩原准教授

スポーツ施設に来た人が天文館に遊びにいくことは考えられるが、逆に天文館に来た人がふらっとスポーツ施設に行くことは考えにくい。

県の検討委員会などでは、体育館と天文館との「回遊性」が議論されています。それに対して、利用客がスポーツ終わりに天文館でお酒を飲んだり、買い物に向かうことは行動として考えられるが、逆に天文館に訪れたスポーツに興味がない人がふらっと体育館に向かうことは考えにくいと疑問を投げかけたのです。

老朽化が進む現在の県の総合体育館

最後に訪れたのは下荒田にある現在の県の総合体育館。老朽化が進む体育館を実際に視察し、新しい場所での建て替えの必要性に言及したうえで建設費を減らしていくことを指摘しました。

萩原准教授

体育館は利用の予定表をみてもかなり予約で埋まっていて、県民の需要はある。老朽化もしていることから建て替えの必要性はあると思う。しかし、経済効果に頼るのではなく、民間の力をいれるなどして、まずは建設費を減らしていくことから始めるべきではないか。

経済効果は県試算の4割…? 

新体育館の整備予定地

萩原准教授は県の試算した経済効果について、2点の疑問点をもっているといいます。

1つめが、建設に伴う経済効果についてです。

県は新体育館建設により、288億円の経済効果が発生するとしています。これについて萩原教授は、県内だけでなく県外の企業も合同で建設することが多いことが十分に考慮されておらず、過大だと主張していて、独自の試算だと115億円と4割にとどまるというのです。

2つめに、来場者の行動に伴う経済効果についてです。

県は新体育館を建設し、訪れる来場者によって、年間50億円の経済効果が発生すると試算しています。この額は以前もお伝えしたように、鹿児島県に訪れた観光客が1日に利用する金額を参考に経済効果を算出しているのですが、これは実態に見合った額ではなく、実際に使う額についてアンケート調査をするべきだというのです。

萩原准教授

経済効果については過大推計になっていると思います。経済効果がなくても住民に便益があれば公共施設としては必要だと思うので、あまり経済効果にこだわる必要がないのではないか。

萩原准教授はもともと本港区で建設が検討されているサッカースタジアムについて研究を行う予定でしたが、今後並行して県の総合体育館についても研究を進めることにしています。 

取材を終えて

ドルフィンポート跡地=本港区は、鹿児島市のサッカースタジアムの建設の候補地にもなっています。鹿児島県は令和10年~11年を新体育館の完成を目安にしていますが、鹿児島市との調整もまだ不透明な状況です。取材していて、大切なのは施設ができた後だと感じました。萩原准教授によると、公共事業の経済効果は、整備される前は算出される一方で、効果検証をすることはまれだといいます。経済への影響や利用者の状況について、施設ができたあとも継続的に調査し、鹿児島にとってよりよい施設になるように改善を続けていく必要があると思いました。これからもNHKは県の新しい体育館について取材を続けていきます。ご意見などがある方はコチラから情報をお寄せください!

  • 熊谷直哉

    NHK鹿児島放送局 記者

    熊谷直哉

    2020年入局 京都府出身 事件事故や経済を担当 営業部門を経て2月から記者に

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