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鹿児島 スポーツの強豪校 “かな入力”で全国制覇?!

  • 2022年09月30日

 野球をはじめさまざまなスポーツの強豪校として知られる、鹿児島市の樟南高校。鹿児島商工高校を前身とするこの学校には、「ワープロ部」もあるんです。
 いまどきワープロ?と侮るなかれ。キーボードのタイピング速度や正確さを競う全国大会でことし4連覇を達成。しかも “かな入力”での快挙だったのです。
                        (鹿児島放送局ディレクター 赤﨑英記)

驚異のスピード

 7月下旬。夏休み中の静かな校舎を訪ねると、タイピングの音が響いていました。

 部員20人の樟南高校ワープロ部。夏の全国大会の速度部門で4連覇を達成したばかりですが、すでに次の大会に向け、練習に励んでいました。

 ワープロ競技は、3人の選手がそれぞれ10分間入力した文字数の合計で競われます。
 ちなみに、ワープロ検定1級は、10分間700文字が合格ラインですが、部員の多くはなんと2,000文字以上を入力。誤字1文字につき10文字分が減点されるため、早さだけでなく正確さも必要とされます。極度の集中力を必要とする、まさにeスポーツなのです。   

 全国屈指のタイピング技術を誇る部員たちですが、入学前はキーボードに触れることもほとんどなかったそうです。

部員 堀さん(2年)
 部の存在も知らず、興味もまったくありませんでした。部活には入らないつもりでしたが、友達に誘われて入ろうかなって。

 そんな生徒たちを日本一のチームに導いたのが、商業科教諭の桑畑竜さん。大切にしているのは、部員たちに日々の成長を実感してもらうことです。 

桑畑先生
 この競技は、結果を数字で表せる。普段の練習から結果を意識していれば必ず伸びる時期が来るので、諦めないでこつこつやっていけば力がつくんです。

ワープロ部を託された闘将

 

 自身も樟南高校出身の桑畑先生。あこがれの野球部に入り、日本一を目指しましたが、その夢はかないませんでした。そして卒業後は、教職の道へ。

桑畑先生
 野球の指導者をしたいなというのもありまして、教員になろうかなと。母校から「来ないか?」と誘いがあって、ただ(担当の)部活は、ワープロ部だと。あ、ワープロ部か・・・と。

 思いがけず託されたワープロ部ですが、野球で果たせなかった日本一を目指そうと、ある信念を貫いてきました。それが、基礎練習の徹底です。

 樟南高校ワープロ部では、一般的なローマ字入力ではなく、かな入力を採用しています。日本語の入力スピードは上がりますが、使うキーが多く難易度も高くなります。

 このかな入力を使いこなすため、桑畑さんが生徒たちに課しているのが、キーボードの特定の列だけを使った地道な基礎練習です。呪文の様なひらがなの羅列をひたすら入力し続けます。
 言葉を話すように自然と指が動く感覚を身につける訓練。4連覇を果たしたいまも、部員たちはほぼ毎日欠かさず、練習しています。
 

桑畑先生
 本当にきつい練習ですけど、決まっている基礎練習だからしなさい!ということでなく、この練習にどういう意味があり、なぜうまくなっていくのかというところを説明しています。

 桑畑さんは、単調な練習もその意義を丁寧に説明し、結果を目に見える形で示すことで、生徒たちのやる気を引き出してきたのです。

 数々の大会の実績はもちろん、こうした日々の教育の実績が評価された桑畑さん。6年前には、商業科の優秀教職員として文部科学大臣表彰を受賞しています。 

“自信”が平常心を生む

 全国大会を控えたこの日、桑畑さんは生徒たちに新たな課題を出しました。
 モニター画面を見ずにタイピングをするよう求めたのです。
 思わぬ課題に動揺する選手たち。いざ入力を始めると、ミスタイプはほとんどありません。

 この練習のねらいとは。
 

桑畑先生
 平常心ですね。このくらい思い切ったことをしないと見えないこともある。画面を見なくても意外と打てるんだと実感できるので。普通の人じゃこんなことできないよねと。

 

 全国47都道府県から集まったチームが一堂に会し、一斉に入力を始める大会。ライバルの動きに気を取られ集中力が途切れると、本来の力を発揮できません。
 基礎から積み重ねてきた技術が、確実に身についていることを実感させ、生徒たちが常に平常心を保てるようにするのが、桑畑先生のねらいだったのです。
 

桑畑先生
 高校生なので、社会人に向けてどう自分を磨いていくかが大事な時期です。日々の積み重ねが自然に生徒たちを成長させてくれるので、このワープロ競技はすごくいいものだと思います。

<取材後記>

 いま教育現場では、プログラミングなどが必修化されていますが、スマホ世代の若者たちは、意外にもタイピングが苦手。樟南高校ワープロ部の部員も、ほとんどがゼロからタイピングを学んだ生徒たちです。
 一方、独自の練習メニューを編み出し、強豪チームを育て上げてきた桑畑先生。「ワープロ競技は、本番10分間にかける集中力やチームワークなど、社会に出てからも必要とされる大事なスキルを学べる」といいます。
 地道な練習を積み重ねる中で、生徒たちに成長を実感させ、やる気を引き出すその指導法は、学校に限らず、企業社会にも通用するのではないかと思いました。


 

  • 赤﨑英記

    鹿児島放送局ディレクター

    赤﨑英記

    生まれも育ちも鹿児島の40歳。2児の父。
    地元民放で送受信技術を担当後、 ディレクターとして、鹿児島の魅力を県内外に発信する職人やアーティストなどを取材。 2021年入局。

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