ページの本文へ

かごしまWEB特集

  1. NHK鹿児島
  2. かごしまWEB特集
  3. 鹿児島県の新体育館経済効果50億以上?その根拠は?

鹿児島県の新体育館経済効果50億以上?その根拠は?

  • 2022年09月22日

視聴者からの疑問にこたえる「かごしま調査団」に今回寄せられた調査依頼は、県が計画している新しい総合体育館についてです。
県は年間1億円ほどの赤字だが、経済効果は年間50億円以上を見込んでいるとのことです。どのように算出したのでしょうか」というお尋ねでした。
県が整備を計画している新しい総合体育館の見通しと経済効果の算出根拠について調べました。

(鹿児島局記者 熊谷直哉)

“収益施設ではない”新総合体育館

現在の県総合体育館

新体育館についての議論は10年あまり前から始まりました。60年以上前に作られた建物は老朽化が進み、一部がはがれ落ちるほどの状態です。敷地も狭く、競技によっては全国大会の開催基準を満たせなくなっています。県は、ことし3月になって新体育館の基本構想案をまとめました。整備予定地は鹿児島市のドルフィンポート跡地。5年から6年後の完成を見込んでいます。

ただ、懸念されている問題があります。200億円以上の総工費に加え、年間の維持費は3億円近く。利用料などでおよそ2億円の収入があるものの、毎年9000万円弱の赤字になります。

鹿児島県スポーツ施設対策室の西博夫室長は、重要なのは利用料をおさえて県民が使いやすくすることだと話します。

西室長

「スポーツ・コンベンションセンター(=新体育館)については、すべての県民の皆様がスポーツに親しむ公共施設でございまして収益施設ではございません。子どもやお年寄り、障害を持った 方も含めて、多くの県民の方々に使っていただけるシンボル的な施設として検討していきたいと考えております」

“赤字は出すがメリット大きい”

一方で、県は50億円以上の経済効果を見込んでいます。赤字は出すものの、総合的に見るとメリットが大きいというのです。その経済効果の概要は、利用される日は年間9割あまりで、利用者の居住地に応じて想定された額を計算すると、年間50億円以上が県内に落ちるという計算です。

西室長

「多くの来場者が見込まれる集客施設でございますので、中心市街地との回遊性を確保することで経済波及効果をもたらす施設である、このように考えております」

どうなっている?経済効果の算出根拠

では、まず一般的に経済効果とはどのように算出されるのでしょうか。例えば、コンビニで売っている焼き鳥を例にとってみます。コンビニで買えばたった100円あまりですが、経済効果とはこの100円だけを表したものではないのです。

消費者の元に届くまでには多くの経済活動が…!

焼き鳥が私たち消費者の元に届くまでには、
①鳥を育てる生産者、②鳥の餌を作る業者、③鳥を焼き鳥に加工する業者、④鳥の串を作る業者、⑤焼き鳥をトラックで運送、⑥ コンビニで売る人、など
さまざまな経済活動が行われた上で、100円として売られています。
経済効果とは、これらの経済活動の波及した効果を概算したものなんです。

さて、本題の県の算出根拠はどのようになっているのか、詳しくみていきます。
県は年間328日利用され、42万人が来場すると見込んでいます。そして、この42万人を居住地や属性で4つに分類しています。

そして、それぞれが1日に消費する額についてこのように想定しました。

この数字を根拠に経済効果を計算すると、50億円以上になるということなのです。

一方、この試算については疑問もあります。「直行直帰型の観客が多く、お金は車のガソリン代と駐車場代しか使わないと考えられ、本当にそんなに経済効果はあるのか」という意見が、県が実施したパブリックコメントで寄せられていました。

はたして体育館を利用する鹿児島県内の人は1日に1人3000円も使うのでしょうか…。そこで実際に体育館を利用した人に話を聞いてみました。

実際に調べてみると…

取材したのは8月27日にいまの総合体育館で行われた中学生の女子フットサルの大会。鹿児島市などの中学生7人が所属しているペガサスFC鹿児島は、この日2試合を行いました。
ほとんどの選手が水筒や昼食を家から持参。試合後にジュースやゼリーなどを購入していましたが、1日に消費した額は500円にも達していませんでした。

県の経済効果の想定について質問すると…。
 

中学生

お小遣いで月3000円ぐらいでもらう人が多いと思うので、ちょっと高いんじゃないですか」

保護者

「そんなに使わないですね。そんなに使わない。高いかな」

専門家は別の見方も

専門家にも話を聞きました。経済効果に詳しい鹿児島大学の石塚孔信教授です。

実は新体育館の経済効果は、スポーツで訪れた人がどのくらいのお金を使うかというデータがないため、観光庁の統計データなどを根拠に計算しているのだといいます。そして、この手法は一般的に使われているものだと話しました。

石塚教授

「どういう指標を使うかというと、やはり観光というのは外から人が入ってくるのを計上するわけですから、現状としては観光統計のデータを使うということが一番合理的です。同規模の他県の施設をみても、大体それぐらい計上されていることが多いです」

取材を終えて

3年前の大学時代、経済学部だった私は、ゼミで「大谷翔平選手のホームラン1本の経済効果は何円か」というテーマで論文を書こうと思いながらも、経済効果の計算方法がとても難しく、恥ずかしながらも断念しました。
それから視聴者からの疑問が寄せられるまであまり考えることはなかった経済効果の根拠。取材をすると、あらためて経済効果とはあくまでもシュミレーションであり、今後新体育館のあり方を考える際には、訪れる人が施設以外の周辺の場所でも楽しむことができるのかといった「まちづくり」の視点も必要になると感じました。

整備予定地のドルフィンポート跡地は鹿児島一の繁華街・天文館と隣接したエリアです。今後どのように鹿児島の経済を活性化させていくのか、これからも取材を続けます。

情報をお寄せ下さい!

NHK鹿児島放送局では、定期的に視聴者の皆様の疑問について調べてお答えします。コチラから、質問をお寄せください!
 

  • 熊谷直哉

    NHK鹿児島放送局 記者

    熊谷直哉

    2020年入局 京都府出身 事件事故や経済を担当 営業部門を経て2月から記者に

ページトップに戻る