鹿児島でアナウンサーが若者と「リアルな場」をつくった理由
- 2022年09月21日
わけもんラボとは・・・
同年代の仲間と”わけもん(若者)”が自ら鹿児島を「アップデート」していくプロジェクト。
鹿児島の次世代が行き交い、新たな出会いや発想が生まれる交流拠点を目指しています。
社会人、学生、立場は関係なく、変化が加速するこの時代で何ができるのか、全員で模索していきます。
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こんにちは。 アナウンサーの齋藤湧希(さいとう はやき)です。 ふだんは鹿児島局で報道番組「情報WAVEかごしま」のキャスターを担当しています。 もともとこの「わけもんラボ」は、鹿児島のためにNHKができることは何か、もっと社会貢献できることは何かと考えて始めたプロジェクトです。簡単に言うと「アツい思いやモヤモヤした思いを持つ10代、20代の背中を押したい」という思いで始めました。 |
「伝える」だけでいいのか?
私は1年半前まで、富山局で勤務していました。
およそ3年間は、聴覚障害ではないのに聞こえづらさを感じるAPD=聴覚情報処理障害など現代社会であらゆる「生きづらさ」を感じる人たちや、東日本大震災の被災者のもとを富山から10年以上もかかさずに訪れて支援する人など、いろいろな人の声を取材して放送を通じて伝えてきました。
放送で伝えることで、同じ生きづらさを感じている当事者同士や支援者がつながることもあり、社会に貢献するやりがいを感じていました。その一方で、実際に1人1人と正面から向き合って長い時間をかけて支援している人たちを目の前にして、私はただ1回や2回の放送で伝えるだけでいいのだろうかという葛藤がありました。このころから放送だけでなく、リアルな場で1人1人と向き合い支援できる形を考え始めていました。

コロナ禍で感じた孤独
鹿児島には新型コロナ禍の2021年3月に転勤してきました。
もちろん歓迎会もなく、3月に転勤してきたのは私1人だけ。宮城⇒東京⇒富山と、ずっと東日本で生きてきた私には、鹿児島の人とのつながりは全くありませんでした。局内でも、転勤してすぐに番組のキャスターを担当することもあり、常に気を張って、孤独を感じていました。
1つのきっかけが人生を変える
そんな私を救ってくれたのは、1つのオンラインイベントでした。
鹿児島に来て数か月がたった頃、ふとSNSで「鹿児島100人カイギ」というオンラインイベントの告知を見かけました。毎月ゲストが5人ずつオンラインで自分の活動や思いなどを話し、ゲストスピーカーが合計100人になったら終わりというものでした(現在は100人達成につき終了)。
とにかく「誰かとつながりたい」という思いでいっぱいの私は、すぐに応募しました。
ゲストは会社経営者もいれば、起業に意欲を燃やす大学生、とにかくサッカーが大好きな人など、鹿児島で活動している多種多様な人たち。ゲストが一方的に話すだけでなく、参加者がゲストと交流できる時間も設けられていました。
私は1人1人のストーリーと思いに「鹿児島にはこんなに魅力的な人たちがいるんだ」とすごくワクワクして、イベント後にゲストに片っ端から連絡したのを覚えています(笑)
それをきっかけに、次から次へと数珠つなぎのようにつながっていきました。そのつながりから取材をして放送した人もいます。踏み出した一歩が、私と鹿児島の人たちをつなげ、世界を開けてくれました。その経験から、自分も誰かにきっかけを与えるような場をつくりたいと思うようになりました。
今の10代、20代って自分と同じように〝発散する場〟を求めているのではないか?
鹿児島では10代、20代を中心に取材してきました。
コロナ禍で入学した大学生を取材した時、「もう慣れた」「もう何も感じていない」という諦観に達したような声がある一方で、「留学に行けない」「サークル活動ができない」「バイト先以外の付き合いがない」と悶々とする声もたくさんありました。その声や表情からは、つながりが希薄化してあらゆる物事が制限される時代だからこそ、人とのつながりやエネルギーの発散場所をより求めているように感じました。中には自ら場所を求めて行動する人もいましたが、それは一握りで、多くは自分もそうだったように「きっかけ」を探しているように見えました。だからこそ、そのきっかけを作ろうと「わけもんラボ」を立ち上げました。

もうすでに成功です!
わけもんラボは、参加者にとって「一歩を踏み出すきっかけ」となることを目指しているので、大きな成果は求めていません。ここでの新たなつながりや、参加者が踏み出した一歩が後の鹿児島の未来を動かすきっかけとなったらいいなあ・・・くらいに考えています。
だからこそ、私たちからテーマや活動については基本的に口を出していません。参加者には自分と向き合い、新たな出会いを経て、悩み尽くしながら一歩ずつ行動に起こしていってほしいと思っています。
えらそうに言ってる私もトライ&エラーを繰り返して進行しています(笑)
「わけもんラボ」が始まって早1か月。すでに「企画してよかった」と感じています。参加者はそれぞれ、過疎地域に移住して街おこしとして観光事業を始めた人や、焼酎産業の未来のために行動を起こす経営者など、ふだん関わることのなかった様々な分野のフロントランナーたちとつながり、そのつながりから次の行動を起こして1歩1歩前に進んでいます。
台本のないプロジェクトなので、ここから先どんな結果が待っているのか、正直、私も全く予想できません。
全力で駆け抜ける4ヶ月間。
多くの人に応援していただけると嬉しいです!よろしくお願いします。