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林業を変える新技術!CLTってなに? 

ゼネコンや不動産大手が湧水町の新工場に顔を揃えたわけは
  • 2022年08月16日

ウクライナ情勢などで木材価格が高騰するなか、鹿児島県湧水町に完成した木材の加工工場での式典に、東京の不動産大手やゼネコンのトップが顔をそろえました。背景にあるのはCLTと呼ばれる新技術。Cはクロス交差させるという意味です。高層建築にも使用され注目が集まる木材の新たな可能性について取材しました。

(鹿児島局記者 猪俣康太郎)

不動産大手トップも 注目の工場完成

湧水町の新工場

湧水町の閉校となった高校の跡地にできた木材の加工工場です。敷地はおよそ9万平方メートル。南九州の木材を活用します。5月30日に開かれた工場の完成を祝う記念式典では鹿児島県の須藤副知事が塩田知事の祝辞を代読しました。

(塩田知事の祝辞代読 須藤副知事)
「県産杉材などの使用による林業の活性化やさらには地域経済の浮揚発展にも大きく寄与するものと期待をいたしております」

出資した不動産大手の三菱地所や大手ゼネコンの竹中工務店など各社のトップも顔をそろえました。

三菱地所 吉田淳一社長
「鹿児島県から革新的なイノベーションを起こしていければというふうに思っております」

注目の理由は新たな木材

モデルハウス

県外の大企業がこの工場に出資した理由は何か?。
その答えは工場の近くに建てられたモデルハウスの床や天井にありました。使われていたのは、CLTと呼ばれる画期的な木材パネルでした。

CLTはCross Laminated Timberの略称で、日本語では直交集成板と呼ばれます。

木には繊維があるため強い向きと弱い向きがありますが、CLTは上下の板の繊維の方向が交互に「クロス」するように貼り合わせていきます。

そうすることで「弱いところを補いあい、どの方向にも強い」パネルができあがると言います。

5階建ての建物に使った場合の耐震実験でも、大きな揺れに倒壊しなかったという実験結果もあります。また、分厚くゆっくり燃えるため消火などの時間を稼げるといいます。耐震性と耐火性を兼ね備えたCLTは、新たな建築資材として注目を集めています。

MEC Industry 西牧聡課長
「国内でも大型の木造建築物が採用されていまして、それにはほとんどCLTが使われています。安定した品質強度がありますので耐震壁とかにも採用されたりしています」

高層階が木造のホテルも

湧水町の工場に出資している三菱地所では、CLTを使ったホテルを札幌に建設しています。9階から11階の高層階の壁や床、天井を木材にしたのです。
鉄筋とコンクリートよりも軽いため、柱への負荷が少ないうえに、部屋に木のぬくもりを与えることができたと言います。

三菱地所 吉田淳一社長
「持続可能な社会を作っていくというために、木材活用、国産材の活用は非常に重要なポイントです。我々がいろんなところで街づくりをするうえにおいても非常に有効なPR材料になると思っています」

国産材の活用後押しか

さらにCLTが注目される背景にはウッドショックと呼ばれる世界的な木材価格の高騰があります。コロナ禍からの経済回復にともない外国産の木材価格が上昇。ロシアの軍事侵攻に対する経済制裁で高騰に拍車がかかるおそれも出ています。

こうしたなかCLTを使った工法にはコスト面で強みがあります。CLTは大規模な工場で住宅のパーツまで安定して大量に生産できます。このため建設現場では組み立てが容易で、工期や人件費などを削減できると言います。

モデルルームのダイニングとリビングはわずか3個のパーツで作られています。家1軒を立てるのに使われるパーツは9個から12個。

100平方メートルの住宅の価格は平均的な新築住宅の価格より20%ほど抑えられたということです。輸入材の価格が高騰する中、CLTが国産材の活用を後押しするのではないかと期待されています。

鹿児島県 須藤副知事
「CLTですとか新しい工法を使って高度な利用も期待できるのではないかと思います」

MEC Industry 小野英雄社長

「住宅は今期100棟を受注していこうというところを考えております。地元の大工さんたちとの連携を深めていって、私たちも活用しますが、ほかの方々もそれによって新たに発展していけるように相互に協力してやっていきたいと思っています」

取材後記

なぜ県外の大企業が湧水町の木材加工工場に多額の投資をしたのか、疑問に思い取材を始めました。現在、日本の森林では戦後に植林した木がちょうど伐採期を迎えているといわれています。一方で、輸入材におされ国産材の活用はなかなか進んでいないと指摘されてきました。国内の資源をうまく活用することはできないのか。ホテルのような大規模な建物でも木材の使用を可能にするCLTは、その1つの解決策を提示するのではないかと感じました。

  • 猪俣康太郎

    NHK鹿児島放送局

    猪俣康太郎

    2004年入局
    前橋局・函館局を経て
    ニュース7・おはよう日本
    ニュースウオッチ9で勤務
    現在は遊軍キャップ

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