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鹿児島 国連大使になりきって~世界をみつめる高校生~

  • 2022年08月08日

国連や国際会議で各国の代表がどのように話し合いを行っているか、考えたことはありますか?。高校生が各国の大使になりきって議論する「模擬国連」が、初めて鹿児島県内の高校生だけで行われました。国際問題を話し合い、世界を見つめる高校生たちに密着しました。

(NHK鹿児島ニュースカメラマン 笹原怜奈)

放課後の教室、集う生徒

鹿児島県立甲南高校 7月

鹿児島県立甲南高校、放課後の教室でもくもくと机に向かう生徒たち。英語部や生徒会などの14人の生徒が初めて臨む、模擬国連の会議に向けて準備を進めていました。

会議の議題は「地雷問題」。対人地雷の使用を規制したり、地中に埋まる地雷の除去など、問題解決には国家間の協力が不可欠な課題です。この地雷問題について高校生たちは、世界の現状や情勢、それぞれの国の方針を調べます。そしてそれらを踏まえて会議で提案する政策を考えます。

ウクライナ大使を担当する生徒

県立甲南高校から参加する外園響希さんと尾辻はるかさん。2人が担当するのはウクライナ大使です。ウクライナは地雷の使用に反対の立場で、会議では戦争で使用された地雷の速やかな除去や、被害者を減らすための対策を訴える予定です。

ウクライナ大使を担当 外園響希さん

「地雷をまくのは簡単だと思いますが、それを除去するにはお金と長い時間がかかってしまいます。いまのウクライナでは地雷の除去に最低でも10年はかかると言われています。故郷に10年帰れないのは相当大変なことだと思います」

ロシア大使を担当する生徒

その隣で準備していたのはロシア大使を担当する、県立甲南高校の吉村歩乃佳さんと梶原理緒さんです。地雷の使用を続けるロシアの現状を調べ、自国を守るためには使用せざるをえないと、会議で主張することにしています。

ロシア大使を担当 吉村歩乃佳さん

「日本に住む自分が考えたら地雷を使わない方がいいと思う。でもロシア情勢を調べ、ロシアの立場で考えたら必要としている国の現状についても分かったので、地雷を使うと主張していこうと思っています」

鹿児島で初めて!模擬国連の会議

「Now I would like to declare the opening of the 77th session of the United Nations General Assembly(国連総会第77会期開会を宣言する)」

鹿児島県内5つの高校(鹿児島育英館高校、鹿児島情報高校、鹿児島中央高校、鶴丸高校、甲南高校)から集まった21か国、42人の大使たち。2日間にわたる会議が始ると、事前に準備してきた英語のスピーチで自国の立場を主張していきます。そして議論や交渉を積み重ね、より多くの国が賛同できる決議案を作成し、採択を目指します。

議場はさっそく、地雷の規制に前向きな国々と消極的な国々に分かれて話し合いが繰り広げられました。地雷の使用や保持を続ける国々の間では・・・。

ロシア大使担当生徒の訴え

ロシア大使担当生徒

「地雷を全部規制されると困る。地雷を使用するエリアを制限するといえば理解してもらえるかな」

各国の理解を得ながら、地雷の使用を続ける方法がないか探ります。

ウクライナ大使担当生徒の呼びかけ

そして地雷の使用禁止を訴えている国々は被害を減らすための政策を考えます。

ウクライナ大使担当生徒

「ウクライナとして大事にしたいのは地雷教育を推進することです。地雷汚染地域において地雷に関する基礎知識や回避方法について教え、地雷について知識を広く普及させたいです」

なかにはこんな意見も。

ウクライナ支持 ドイツ大使担当の生徒

ウクライナ支持 ドイツ大使担当生徒

「地雷がどこに埋まっているか分からない状況が危ないので、(地雷の場所を)世界中に情報を発信できるアプリを開発してみてはどうでしょうか」

自国の国益を守りつつも、どこで折り合いをつけるのか。議論が白熱していました。

ウクライナ大使担当 外園響希さん

「自分たちの国益だけを重視しても世界的に孤立してしまいます。一筋縄ではいかないということを感じました」

会議2日目 決議案には何を?

いよいよ会議2日目。この日は決議案を作成するために、朝から大使たちは大忙し。同じ方向性で動いてくれないか、なんとか仲間になってくれる国はないか。妥協点を探る交渉も行われていました。

ロシア大使も積極的に各国の大使の元に歩み寄ります。
 

ロシア大使
「どういう案だったら賛成できますか?」

フランス大使
「保有する地雷の数を減らすのであれば賛成できる」

ロシア大使
「うん、徐々に減らしていきます」

あくまでも地雷を使用するという姿勢は譲らず、使用や保有する数を減らすと約束し、より多くの国の支持獲得を目指しました。

きのうは一筋縄でいかないと悩んでいたウクライナ大使。自国で地雷による民間人の犠牲者が絶えない現状を訴え、地雷の保持を続ける国に破棄を呼びかけますが・・・。

インド大使
「地雷を手放そうと思っても、怖いじゃん。いつどこが戦地になるか分からない状態で重要な戦力を手放せない」

ウクライナ大使
「でも暴力に対して非暴力でいかないと結局戦争は激しくなる」

インド大使
「非暴力で話し合うためには、武力が必要だって」

ウクライナ大使
「武力に対して武力は激しくなるだけじゃん」

粘り強く交渉を続けますが、なかなか地雷の全面破棄は受け入れてもらえません。しかし、国が地雷の保持数を管理し、さらに地雷の輸出や生産を規制するという条件についてなんとが合意を得ることに成功、決議案に盛り込むことにしました。

決議案の行方は!

ウクライナ側とロシア側。それぞれを支持する国々が1つにまとまることは難しく、別々の決議案を提出することになりました。

模擬国連では提出された決議案の投票まで行われます。地雷の数を国で管理し、生産や輸出を制限すると、妥結点を探して盛り込んだウクライナ側の決議案は賛成多数で採択。数を段階的に減らしながらも、地雷の使用を続けるとしたロシア側の決議案は不採択になりました。

会議を終えて

ウクライナ大使担当 外園響希さん

「自分たちの意見と対立する国に対して完全に否定するのではなく、そういう意見もあることを踏まえて交渉をして折り合いをつけることが大事だと感じました」

ロシア大使担当 梶原理緒さん

「ロシアと言われた時に、悪いイメージというか、自分の意見と、ロシアの考え方が違いました。でも、ただただロシアがいけないとなにも考えずに思うのではなく、物事について隠された背景を理解することが大事なのではないかと気付かされました」

初めて取り組んだ、模擬国連の会議に生徒たちは戸惑いながらも、課題に対する「理想」と、世界の「現実」を把握し、その差をどのようにしたら縮められるか、考え続けていました。

取材後記

鹿児島、そして日本の未来を担う高校生たち。模擬国連の会議を通して、世界の多様な考え方や価値観について理解を深めながら、国際問題の解決には何が必要かを懸命に取り組む姿に心を打たれました。社会情勢や自分たちを取り巻く環境がめまぐるしく変化するこの時代。相手の立場に立って物事を見つめることの大切さを改めて感じました。

  • 笹原怜奈

    ニュースカメラマン

    笹原怜奈

     2017入局 大阪局、鹿児島局で勤務 
    高校生の時は模擬国連に熱中した「もぎこっかー」でした!

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