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鹿児島 南日本新聞 「経済部」設立の狙いは

  • 2022年08月05日

全国に数ある地方紙の中でも地元で圧倒的なシェアを誇る南日本新聞社が、この春、新たに「経済部」を発足させました。変化のスピードが速い今の時代に、なぜ経済部を作ったのか、その狙いを取材しました。

(鹿児島局記者 古河美香)

みなみの経済部とは?

南日本新聞編集局

新しく発足した南日本新聞社の「経済部」は、編集局のフロアの一角にあります。この春、記者7人を含む9人でスタートしました。これまで、経済の取材を担当するグループは、事件を担当するグループなどと同じように大所帯の「報道部」に属しましたが、そこから1つの部として独立させたのです。

経済部のメンバーが中心となって手がけたのが、鹿児島の和牛をとりまく状況を展望した6部構成の大型特集です。ことし10月に鹿児島県内で開かれる「全国和牛能力共進会」を前に、畜産の現場を徹底取材。生産や流通など異なる視点から業界の課題を検証しました。

なぜ経済部ができたの?

なぜ経済部を作ったのか?。県内で圧倒的な強さの南日本新聞社ですが、実は、長年、経済ニュースに弱いのが悩みだったと國弘崇編集局長は言います。

南日本新聞 國弘崇編集局長

「今まで弊社の経済取材は弱いと言われていたところもあり、なんとかしたいというのは長年の課題でした。どうしても企業側の発表記事が中心になって、掘り下げる取材ができていなかったと思います。今回の経済部の発足を機に、記者たちには掘り下げた取材をぜひしてもらいたいという思いもありますので、これからそういった方向にかじを切っていきたいです」

経済部所属のベテラン記者は?

三宅太郎記者

会社から強い期待をかけられている経済部の記者たち。その中核を担う1人が、和牛の特集記事をとりまとめた入社24年目の三宅太郎記者です。部の発足を受けて、これまで以上に、ペンの力で地域経済を盛り上げていきたいという思いを強くしています。

三宅太郎記者

「経済部という名前を背負うということで、鹿児島の経済をよりよくしていくためにどうしたらいいのかという立場というか、そういうふうな仕事なんだという意識は、より強く持つようになりました」

その三宅さんが着目しているのが、1次産業です。2020年の国勢調査によりますと、鹿児島県で1次産業で働く人たちの割合は8.3%。全国平均の3.2%を5ポイント以上上回っています。それだけ地域経済に大きな影響を与えているのです。

湧水町の工場

中でも取材を進めようと考えているのが林業です。畜産や農業と比べて消費者の目につきにくい林業ですが、ウッドショックと呼ばれる世界的な木材価格の高騰のなか、ことし5月には湧水町に、東京の大手企業が出資した工場が建設されるなど、これから伸びる大きな可能性を秘めていると、三宅さんは感じています。

 

三宅太郎記者

「鹿児島は森林の面積が広い地域ではありますけど、産業としてみると、ちょっと弱い部分があるのかなと思っています。課題を見つけて、解決策を一緒に考えていけば、ひょっとしたら重要な、それこそ”稼げる産業”になるんじゃないかという期待感を持っているので、そういう視点で取材をしていきたいと思います」

鹿児島経済のポテンシャルに光を

発足から4か月がたった経済部。
デジタル化による紙離れや世帯数の減少を背景に、新聞の発行部数が減る傾向にあるなかで、國弘編集局長は、鹿児島経済のポテンシャルに光を当てたニュースの充実で読者を引き留めたいと考えています。
 

國弘崇編集局長

「部として独立したということで、これから経済に力を入れていくんだというメッセージとして伝わっている部分はあるかと思います。商品価値を高めていかないことには部数が減り続ける一方ですので、商品価値を高めるというところに力を入れたいということです」

”経済”で時代を切り取る

そして、物価や日々の暮らしが、世界情勢に大きく左右されるようになった今こそ、地域に根ざした取材を通して、県民の暮らしが上向くヒントになるような紙面を作りたいとしています。

國弘崇編集局長

「コロナ禍やウクライナ危機など、ますます先行きが不透明になっていますので、そういった意味でも経済をキーワードとして時代を切り取る作業は、おそらく今まで以上に求められているんだろうという気はします。経済が潤うことで私たちの暮らしが豊かになるというのが一番理想だろうと思いますので、まずは地域経済の足腰を強くしていくためにどうするかということを、地域の皆さんと一緒に考えていきたいというスタンスです」

 取材を終えて

どうして今、経済部ができたのだろう。そんな素朴な疑問から、競合相手でもある南日本新聞社に取材を申し込みました。最初は、取材を受ける側に回ることに少し戸惑う様子も見えましたが、カメラがフロアに潜入する取材を快く受けてくれました。

また、國弘編集局長へのインタビューの中で出てきた「掘り下げる取材をしてもらいたい」という記者に向けたことばは、私自身にも響きました。
発行部数が減少傾向にあるとはいえ、県内での南日本新聞の影響力の大きさは、日ごろから強く感じています。

「経済部」の独立・発足は、組織改編の1つにすぎないのかもしれませんが、経済部の記者たちの動きや記事が波及して、経済やビジネスへの意識が鹿児島でも高まれば、塩田知事も掲げるような「稼ぐ力」が根付いていくのかもしれません。
そして同じ取材者としては、社会全体に閉塞感が漂い、先が見通せない今の時代だからこそ、人々の暮らしのこれからを照らす経済取材の大切さを、今回の取材を通して改めて感じました。

  • 古河 美香

    古河 美香

    長崎局を経て鹿児島局勤務 県政担当などを経て、現在は教育や経済を担当   2児の母親

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