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鹿児島をたびたび襲う大雨 線状降水帯の新情報どう受け止める

  • 2022年06月10日

2021年7月10日、鹿児島は大雨に見舞われました。特別警報が発表され、各地で道路が冠水。陥没したところもありました。発達した積乱雲が次々と連なる「線状降水帯」が発生したのです。この線状降水帯をめぐって、新たな情報が始まりました。どう受け止めたらいいのか考えます。

(鹿児島局記者 津村浩司)

線状降水帯を予測する情報?

線状降水帯をめぐっては、2021年からも「顕著な大雨に関する情報」が発表されていました。

この情報と新たな情報との違いは、“発生”と“予測”です。

新たな情報は、線状降水帯が発生するおそれがある場合、事前にそのことを伝えるものです。2022年6月から、気象庁が発表する「気象情報」の中で記述されることになりました。

情報発表のタイミングは「半日前から6時間前」まで。気象庁は、できるだけ早い時間での発表を心がけるとしています。

精度の現状と背景は

予測となると、気になるのはその正確さです。

情報の対象範囲は「九州南部」や「奄美」といった地方単位ですが、的中率は4回に1回程度。さらに情報が出ない中で線状降水帯が発生する、いわば“見逃し”は、3回に2回程度あるとしています。

2021年7月の大雨でも、事前の予想に反してかなりの雨が降りました。

依然として大雨の予測が難しい背景には、鹿児島の地理的な位置も関係しています。線状降水帯を予測するには、雨のもととなる水蒸気の量を把握することが重要ですが、鹿児島の周囲には海が広がっています。こうした海上では、陸の上と違って観測データが得づらい現状があるのです。

そのため気象庁も2022年6月以降、鹿児島大学を含む関係機関と連携して、海上で集中的な観測を行うことにしています。線状降水帯の予測精度の向上につながるかが注目されますが、予測にはまだ多くの課題があるのが実情です。

新情報をどう受け止めるべきか

精度が十分ではないことを踏まえると、この新情報をどのように受け止めたらいいのでしょうか。

気象のメカニズムに詳しい名古屋大学の坪木和久教授は次のように指摘しています。

情報が出ていないからといって安全・安心ではないという認識が必要だ。また、情報が出るときは大気の状態が不安定で、非常に危険な状態にあると認識してもらい、ほかの気象情報や気象庁の危険度分布などをもとに適切なタイミングで避難につなげることが重要だ。

たとえば直近の雨量や、川の水位、土砂災害の危険度などは、NHKの「ニュース防災アプリ」気象庁ホームページの「キキクル」などで確認できます。

こうした情報を主体的に取りに行き、線状降水帯がもたらす大雨によって深刻な事態になる前に、自治体が出す避難の情報に従って安全を確保することが大切だと思います。

大雨対策が進む鹿児島でも過信は禁物

一方で鹿児島は年間降水量も多く、「8・6水害」をはじめ、これまでもたびたび災害があったことで堤防の整備などの対策が進みました。

ただし、過信は禁物です。近年は雨の降り方が変わり、集中豪雨の頻度がこの45年間で2倍余りに増えたというデータもあります。

2020年7月の豪雨では、鹿屋市で平年の7月1か月分を上回るおよそ500ミリの雨が1日のうちに降りました。その結果、用水路などから川への排水が追い付かなくなり、内水氾濫が発生。水に浸かる住宅が相次ぎました。

2019年の梅雨末期には、前線が停滞して記録的な大雨が降りました。鹿児島市の総雨量は659ミリに到達して崖崩れなどの土砂災害が各地で起き、大規模災害の発生が切迫しました。

過去の経験を踏まえて備えが進められていますが、そうした対策が追い付かないほどの大雨は、今後も降る可能性があります。

過去に災害を経験して、対策が進んだからもう逃げないではなく、川や斜面のそばに住むのであれば、大雨の際は避難を検討する。新たな線状降水帯の情報も、そうした避難に向けて意識を高めるひとつのきっかけにしてほしいと思います。

 

  • 津村浩司

    NHK鹿児島放送局 記者

    津村浩司

    2013年入局 和歌山局などを経て鹿児島局で災害担当 県内の常時観測火山は全て訪問 三宅島出身で全島避難を経験

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