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自宅に「核シェルター」はいかが? ウクライナ侵攻で関心呼ぶ

  • 2022年06月13日

ロシア軍によるウクライナへの侵攻が始まって3か月あまり。混迷が深まる世界情勢への不安を反映してか、なんと家庭用の「核シェルター」への関心が高まっていると聞きました。いったいどんな施設なのか?鹿児島のハウスメーカーがアメリカから輸入販売しているシェルターに潜入取材しました。

(鹿児島局記者 西崎奈央)

モデルハウスの玄関前に地下への入り口が・・

鹿児島市内の住宅展示場にある見たところ普通のモデルハウス。その玄関前の地面に鉄製の扉がありました。その扉を押し上げると、地下へとつながるハシゴが下りていました。

3メートルほどおりてみると、なかには簡易トイレやソファ、そして折りたたみ式の2段ベッドがありました。明るい内装で、思ったほど狭くはありません。

床下には家族4人が2週間生活できるだけの食料も備蓄されていました。

普通の部屋と違うのは、窓がないこと。そして外の空気を入れる巨大なダクトがあることです。放射性物質や有毒な化学物質の侵入を防ぐことができる特殊なフィルターがつけられていると言うことでした。

核シェルターに問い合わせ殺到

まるで秘密基地のようなこの空間は、アメリカから輸入した家庭用の“核シェルター”です。

このハウスメーカーでは、5年前に、国内で初めてこの商品の販売を開始しました。その後、ここ最近はあまり問い合わせはありませんでしたが、ロシアによるウクライナへの侵攻が始まって以降は、問い合わせが殺到しているといいます。

七呂建設 武藤康治さん

「やはり心配になって、シェルターをと考えられる方が多い。電話やメールの問い合わせは、ことし1月には1件ずつだったんですけど、ウクライナ情勢が始まるにしたがってどんどん増えていって、いまでは1月と比べると、約23倍の問い合わせ件数をいただいています」

ロシア軍の攻撃から身を守るために、地下のシェルターに避難する人々の姿が連日、報道されるなか、日本でも有事の際の避難先として、シェルターへの関心が高まっていたのです。

価格は2000万円!

取材に訪れた日には、伊佐市の30代の夫婦が内覧に訪れていました。戦争の脅威を身近に感じ、自分たちで備えを進めておくことが必要だと考えるようになったと言います。

見学に来た30代の夫婦

「急激に情勢が変わって。恐怖心じゃないんですけど、今まではすごい遠いところでのことだと思っていたのが、すごく身近だなと感じることが多くなった」

実際にシェルターに入ってみると2人は「圧迫感ないですね。地下室という暗い感じはあんまりないかもしれない」などと話していました。

担当者によると、販売価格は設置費用を含め、およそ2000万円と高額ですが、これまでに数件、
成約にいたったということです。

武藤さん 

「鹿児島県民の方だけでなく、九州だったり、全国からお問い合わせをいただくので、日本全体として皆さん考えていらっしゃるんだなと感じます」

遅れる地下のシェルター設置

しかし個人で2000万円も出してシェルターを設置するのは、なかなか出来ることではありません。
そこで気になるのが、住民の安全を守る国や自治体の取り組みです。
2004年に施行された国民保護法では、武力攻撃を受けた際などに備えて、国は都道府県知事に避難施設の指定を求めています。
実際、県内でも小学校や公民館など1672か所が避難施設に指定されています。
ただ地下にある避難施設は、鹿児島市にある「県民交流センター」1か所だけです。

県に話しを聞くと、追加の施設の指定に向けて、今年度から各市町村とともに検討を進めているということです。また今年度から来年度にかけて武力攻撃事態を想定した訓練も実施することにしているということでした。

取材を終えて

「核シェルター」と聞くと、有事の際の避難先というイメージが想起されますが、実際に中に入ってみると思っていた以上に室内は明るく、倉庫やスタジオなど普段使いもできると感じました。

販売担当者の武藤さんは元自衛官という経歴の持ち主で、今はウクライナ情勢を心配する声が多いが、台湾有事などを念頭に南西諸島の防衛態勢が急速に強化される中で、これからは鹿児島の自衛隊基地が標的になることを懸念してシェルターに関心を持つお客さんも出てくるのではないかと話していました。
 

市民が個人レベルでとれる対策には限界がある中で、国や自治体が連携して住民の安全をどのように確保していくのか、早急に備えを進めていかなければいけないと感じました。

  • 西崎奈央

    NHK鹿児島放送局 記者

    西崎奈央

    2019年入局。警察担当を経て薩摩川内支局。調査報道や国際問題などを担当

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