11歳のメーレが木工彫刻に興味を持ったのは9歳のとき。授業の一環で彫刻家のマルコから教えを受けて以来のことだ。そんな彼女に、市内の病院から初めての正式な作品依頼が舞い込んで来た。患者の子供たちを励ますために小児科病棟に彫刻を飾りたいというのだ。
 彼女が作品のテーマとしたのは「自由」。実は、1年前に3週間の入院生活を送り、退院した時に感じた気持ちを表現したかったのだ。彼女は巨木の幹から2メートルを超す初めての大作を切り出す作業にとりかかった。
 何かに取り組むことで子供が喜びや 自信を得ていく姿を、あたたかく見つめたドキュメンタリーである。

 人間としての成長に有効であると認められる作品にこの賞は贈られます。すなわち社会にとって普遍的に重要なことを追求する姿勢、優れたストーリー展開、技術的なデザイン、創造的で革新的であることがその条件となります。
 品位があり感動的でした。「小さな彫刻家」は、熱心で健全な若い主人公が熱意を持って取り組めば達成できることを示してくれた作品です。技術的にもすばらしく、カメラは主人公の学んでいく行程をありのままにとらえています。
 子どもが成し遂げた偉業を賞賛した作品「小さな彫刻家」は、すべての子どもに勇気を与え、後押しをし、夢に向かってやり遂げようとチャレンジさせることになるでしょう。

 KROの制作チームとディレクターであるヒルト・ローヒンは、情熱あふれた子どものドキュメンタリーを作りたいと望んでいました。
 ある日、地方新聞に、オランダ東部に住む彫刻家、11歳のメーレの記事が掲載されました。ヒルトは、メーレに出会い、その情熱と才能にすぐに感銘を受けたそうです。私たちは、メーレと彼女に彫刻を教えるマルコとの強い協力関係があれば、メーレはもっと大きい挑戦ができるはずだ、と確信しました。メーレの作る子ども病棟用に飾るための彫刻は、大きいだけではなく、私たちが想像した以上に美しい出来上がりでした。
 メーレの情熱のおかげで、私たちはこのドキュメンタリーを教育的であると同時に、わくわくドキドキする“冒険もの”にする原動力を得ること ができました。
 「日本賞」での受賞は、私たちのチームワークを高め、真の名誉となりました。メーレ、彼女の家族、マルコ先生、そして、KRO青少年番組部、ディレクター、技術スタッフ、EBUのドキュメンタリー交換のパートナーに代わって、この作品を選んでくださった日本賞、審査委員の方々に感謝いたします。このサポートがあったからこそ、メーレは世界中の子どもたちの心を動かすことができるのです。

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