第34回「日本賞」<2007年>最優秀番組

グランプリ日本賞
番組名 特別授業 差別を知る〜カナダ ある小学校の試み〜
機関名 カナダ放送協会
国名 カナダ
★東京都知事賞受賞
番組内容
 ケベック州の小学校のクラスで、女性教師が“差別を体験させる授業”を行う。それを記録し、女性教師へのインタビューとあわせて構成したドキュメンタリーである。
 ある日、教師は生徒たちに、「背が低い人は、背の高い人よりも優秀で、創造的で、何でも丁寧にできると科学の本に書いてありました」と話し、「身長 1m34cm を境にクラスを2つに分けましょう」と背の高い生徒に赤いベストを着せる。それを前提に授業が行われ、背の高い子が黒板で問題を解くと、「ほらね、字がきたないでしょう?やっぱり、背が高い子だからね」などと話す。背の低い子どもは「休み時間の5分前に教室を出てよい」「雪遊びをしてよい」といった特権を与えられ、目を輝かせる。実際に自分が「差別」を受けたらどう感じるかを体験させる授業なのである。2日目に立場を交代させた時、予想した効果が出ないと教師が嘆く場面もある。
 この授業は、1970年に放送された番組が元になっている。アメリカ人の女性教師が、青い目の子は優秀で、茶色の目の子は劣る、と教えて人種差別を経験させ、その実験授業が放送されて話題になった。それを見た小学校の教師が、生徒の親、委員会、校長の了解をとって実施した、と番組中に説明がある。
 2日間の実験授業から3週間後。こういう経験は子どもたちの“心に刻まれる”ので、差別や侮辱の軽減に繋がるでしょう、と教師は語る。
審査講評
 世界中の教室の中で、あるいは外で、今、何が起きているのでしょうか?歴史的に見て、今ほど多くの人が母国以外の国で暮らす時代はなかったでしょう。機会が与えられるという意味では良いことですが、教育者たちは、人間の違いをどう解釈するか、方針を立てて行かなければなりません。
 この番組は、ある教師が実際に子どもたちに差別を体験させることにより、及ぼす影響を子どもたちに理解させる様子に迫ったものです。こうした授業には、すぐに効果が出る部分と長期にわたって影響を残す部分があります。この番組の制作者はこの信じられないような授業を、シンプルに、そして細心の注意を払いながら番組にしています。子どもたちの表情や行動、思わず口にする言葉は差別の本質をついていて見る側の心に響きます。この番組はこの先も問題を提起し、差別を考える上で強い影響力を持ち続けることでしょう。
制作者コメント
パスカル・テュルビッド
記者


 暖炉の上に置かれたグランプリのトロフィーを目の前にして、いまだ信じられない気持ちです。フランス語圏カナダの小さな村の学校を舞台にした私たちの物語が権威ある賞をいただいたことに驚いています。しかし同時に、優れた話とジャーナリズムは、万国共通なのだと再認識しました。
 私は教育番組が専門ではなく、時事問題の記者です。人々が興味を持つありとあらゆる出来事に取り組んでいます。しかし、「日本賞」にノミネートされたことにより、これまで私が知らなかった、世界中の教育番組に出会うことができました。これは一人の母親として、大変うれしいことです。
 日本へ行き、みなさんに温かく接していただいたこと、さらに皇太子殿下にお目にかかれたことは、プロデューサーのルーシー・ペイヤーともども、私たちのキャリアで最も輝かしいものであると思っています。ノミネートされただけでも十分だと思っていましたが、グランプリをいただいたことで、よりすばらしい経験となりました。
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