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2人の職員の労災(過労死)と働き方の抜本的見直し

NHKでは、2013年に佐戸未和記者が亡くなり、翌年、労災(過労死)と認定されました。これを受けて業務の進め方や勤務制度の見直しを行ってきましたが、2019年には男性管理職が亡くなり、3年後に再び、労災(過労死)と認定されました。
佐戸記者が亡くなってから2023年7月で10年になります。このページでは、2人の過労死と、同じことを決して繰り返さないために、NHKが取り組む働き方の抜本的な見直しについて説明します。

佐戸未和記者の労災認定について

佐戸未和記者

2013年7月24日、首都圏放送センター(現:首都圏局)で、東京都政の取材を担当していた都庁記者クラブの佐戸未和記者が自宅で亡くなりました。31歳でした。翌年5月、労働基準監督署から長時間労働による労災(過労死)と認定されています。

佐戸記者は当時、都議会議員選挙と参議院選挙が続き、連日猛暑のなか取材にあたっていました。参院選の投票日の3日後に亡くなりました。

労働基準監督署は、発症前1か月間の時間外労働時間数が、過労死ラインとされる100時間を大きく上回るおよそ160時間と認定しました。深夜に及ぶ業務や十分な休日の確保もできない状況で、「相当の疲労の蓄積、恒常的な睡眠不足の状態であったことが推測される」「業務と発症との関連性は強い」として過労死と認定しました。

男性管理職の労災認定について

2019年10月には、佐戸記者と同じ首都圏放送センター(現:首都圏局)で、東京都政の取材指揮にあたっていた都庁記者クラブキャップの40代の男性管理職*が自宅で亡くなりました。2022年8月に、労災(過労死)と認定されています。(*氏名についてはご遺族の意向で掲載を控えます)

男性管理職は当時、統一地方選挙や参議院選挙、台風やラグビーワールドカップの取材など、都政に関わる取材の陣頭指揮にあたっていました。

勤務記録では、亡くなる前、半年の間に、 1か月あたりの時間外労働時間数が、“過労死ライン”の80時間を上回っていた時期がありました。

佐戸記者の過労死のあとに進めてきたはずの、職員の健康確保のために設けられた長時間労働を抑制する取り組みを徹底していなかったとして、当時の上司など4人が懲戒処分や厳重注意を受けました。

労災認定後の働き方改革・健康確保の取り組み

報道現場では、佐戸記者の過労死を踏まえて、泊り勤務の負担を減らし、休日勤務や深夜労働の抑制を進めました。また記者に新しい勤務制度を導入(2017年4月)するとともに、長時間労働を抑制するため、労働時間に一定の制限を設けました。

佐戸記者の過労死公表後の2017年12月には「NHKグループ 働き方改革宣言」を公表しました。健康を最優先に、長時間労働に頼らない組織風土づくりを目指し、過度な働き方になっている職員の業務を職場全体で見直すよう、全職場で月2回、「働き方点検の日」を設けました。改善されない場合は、長時間労働となっている職員に「健康確保休暇」を付与する取り組みも進めてきました。

2022年に男性管理職の過労死が認定されたことを受けて、新たな健康確保措置や、過重労働防止に向けた取り組みをさらに強化しています。

二度と過労死を起こさないために

佐戸記者のご両親をお招きした研修会(2023年6月)

これまでの取り組みで労働時間は少しずつ減ってきています。NHKでは「長時間労働に頼らない組織風土」をつくるため、毎年、新たに管理職になる職員の研修などで、2人の仲間の過労死という重い事実と心身の健康管理の重要性を伝え続けています。

佐戸記者のご両親は
「どんなに忙しくても睡眠時間をしっかり確保して自分の健康を守ってほしい」
「職場の仲間の状態に目を配ってほしい」
と繰り返し訴えています。

わたしたちは、2人の仲間を過労死で失った事実を深く反省し、ご家族の言葉を胸に、働き方の抜本的な見直しを続け、NHKグループ全体で心身の健康維持と業務改革を進めていきます。