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釧路 悲惨な事故を繰り返さない 海難救助の拠点は今

  • 2024年5月17日

知床半島沖の観光船沈没事故から2年。事故発生前の道東海域はいわば“海難救助の空白地帯”で、海上保安庁の救助体制の強化が求められていた。道東の救助体制はどう変わったのか、海上保安庁の拠点を取材した。(NHK釧路 梶田純之介)

「ほっとニュースぐるっと道東!」で放送しました。NHKプラスで配信しています。

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見逃し配信は5/23(木) 午後6:55 まで

急ピッチで体制強化

釧路空港のターミナルビルを横目に、奥まった細い道を進んでいくと、空港利用者にはおよそなじみのない建物が見えてくる。海上保安庁の釧路航空基地だ。もともとおよそ30人の職員が働いていたこの基地に去年4月、機動救難士9人が初めて配置された。

機動救難士のために、基地にはプレハブの倉庫が新たに建設された。倉庫の中には、隊員が救助に使うロープや、救助された人を手当てするための道具が、棚ごとに整然と並べられている。道具に不具合がないよう、隊員たちの手で一つ一つ厳重に管理されている。こうした数々の道具は、基地の機能を強化するために、全国から急ピッチでかき集められた。

およそ半年で十分な道具をととのえるのは簡単ではなかったと、当時立ち上げに関わった機動救難士のリーダーは振り返る。

神谷高仁 上席機動救難士
「ここにある資機材は、例えば函館や小樽、全国の他の基地から寄せ集めた資機材を使わせてもらっていました。資機材が不足している状態で現場に行くのは不安があったが、各方面の協力で急ピッチに補充を進めることができた」

基地内のボイラー室だった部屋は、トレーニングルームに。わずかなスペースに、筋トレ用のダンベルやペダルローラーなどが所狭しと並んでいる。
廊下にも懸垂の器具をつけ、限られたスペースを最大限に活用している。

さらに、ことし3月からは救助用のヘリが2機から3機に。

これで、整備のための1機と、警戒のための1機に加えて、大きな事案に備えて常に1機が基地に待機できるようになった。

急ピッチで基地の機能が強化されたきっかけは、おととしの4月に発生した知床半島沖の観光船沈没事故だった。この事故では20人が死亡、6人が今も行方不明となっている。当時、釧路では潜水士が巡視船やヘリコプターに乗り込んで現場に向かったが、配備されていた2機のヘリコプターだけでは迅速な出動は難しかった。それに、実際に吊り上げて救助を行える機動救難士が置かれていたのは、現場海域から400キロ以上離れた函館だけだった。

“もっと高いレベルへ”日々訓練に励む隊員

現在、基地内では日々、隊員たちが救助訓練に励んでいる。そのうちの一人が、機動救難士の倉幸永隊員(29)だ。1年間の養成期間を終えてことし4月、出動できる1人前の隊員の中に加わった。

倉幸永 機動救難士
「事案をイメージして、もっとレベルの高い、負荷の高い訓練にもどんどん挑んでいかなければいけない」

機動救難士とは、ヘリコプターを使った吊り上げ救助を専門にする隊員のこと。1時間以内には現場に到着して迅速に救助することが求められている。

“1秒でも早く”悔しさをかみしめる

おととしの観光船事故の際は、釧路で潜水士として活動していた倉隊員。事故の一報を受け、巡視船で4時間半かけて現場海域に到着したが、波も高く、すでに救助できる状況ではなかった。だからこそ、1秒でもより早く救助に向かえる機動救難士を志した。

倉幸永 機動救難士
「捜索にあたった当時、なかなか船体を発見することさえできず、時間がかかってしまったというもどかしさを感じていた。悔しかった思いを忘れずに、業務にまい進したい」

倉隊員は、1人前として認められてもなお、新しく配備されたヘリを使って日々訓練に励み続ける。5月中旬のある日、記者が基地を訪れると、倉隊員は「HR訓練」と呼ばれる難度の高い訓練に挑んでいた。ヘリコプターから1本のロープを伝って目標地点に正確に着地し、遭難者を確保して迅速にヘリコプターへ収容する、というものである。

機動救難士の活動を支えるヘリコプター。3機に増えたのは、倉隊員にとって心強い出来事だった。

倉幸永 機動救難士
「1機だけではなく2機と、数多くの隊員を投入しなければいけないような事案もあると思う。そういった時、すぐに(隊員を)追加投入できる体制が取れているのは、すごく強みだと思う」

いざ出動

すでに出動も。先月、紋別市の港で乗用車が海に転落した事故で、倉隊員は釧路から出動し、およそ1時間で現場に駆けつけた。体制が強化されるまでは、機動救難士が駆けつけるのに数時間かかるエリアだった。

悲惨な事故を繰り返さないため、迅速な救助の重要性を倉隊員は強調する。

倉幸永 機動救難士
「何かあった時にすぐに駆けつけられるようになったのが、釧路航空基地の強みだ。要救助者の方に安心してもらえるような機動救難士になれればと思う」

取材後記

釧路に機動救難士が配置されてから1年あまり、釧路航空基地の様子を追い続けてきた。今回紹介した機動救難士だけではなく、ヘリコプターのパイロットや整備士など、一人ひとりが事故防止への強い意識を持って日々訓練や出動に携わっていることがうかがえた。
こうした努力で道東の体制は強化されたものの、稚内など道北の一部の地域は、いまも機動救難士が到着するのに1時間以上かかるという課題が残されている。悲惨な事故を防ぐための取り組みが今後も求められている。

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  • 梶田純之介

    釧路局記者

    梶田純之介

    2022年入局 報道局を経て釧路局へ。 学生時代に身につけた48か国語の能力を生かし事件・事故から街ネタまで幅広く取材。旭川市出身。

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