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「こども誰でも通園制度」 少子化と保育現場は

  • 2024年4月17日

保護者が働いているかどうかに関わらず、0歳6か月から3歳未満の子どもを保育園などに預けられる「こども誰でも通園制度」
国は少子化対策の1つとしてこの新制度を打ち出し、子どもに集団生活での学びの場を提供することや、親の育児負担の軽減、それに孤立の解消などにつなげたいとしています。
再来年度からのすべての自治体での本格導入に向けて、今年度は全国各地で試験的な実施が進められています。こうしたなか、地方では保育士不足だけでなく、少子化による園児の減少も大きく影響。新制度に対する模索と保育現場のいまを取材しました。

子どももっと来て

4月から「こども誰でも通園制度」を試験的に始めた、函館市にある「認定こども園 コバト保育園」です。この園では、専用のスペースを設け、短時間で多くの子どもが出入りするのに備えて荷物や食事を取り違えないようマークや色で分けたかごを用意するなど、準備を進めてきました。

そして4月9日、制度を利用する親子が初めて登園。この日は母親が、上の子の入学式に出席するため、2歳の弟が園で過ごすことになりました。園にとっても初めてで、母親から荷物を受け取りながら保育士が聞き取りなどを行っていました。

利用は午前9時から午後3時まで。個別の部屋で担当の保育士と一緒に、列車のおもちゃで遊んだりお昼寝をしたりしながら過ごしました。朝、母親と離れるときは落ち着いた様子でしたが、園で過ごすうちに寂しさからか泣いてしまったといいます。
そして、母親が迎えに来ると、いちもくさんに走って駆け寄りました。

制度を利用した母親は、「平日はなかなか親にあずけるのも難しいので、こうした支援制度があると心強いです」と話していました。

この「こども誰でも通園制度」は全国各地で試験的な実施が進められていますが、保育士不足などを背景に国は現在「月10時間」の利用上限を設定。
函館市でも保育士の人材不足が課題となる中、この園ではなぜ試験実施に手を挙げたのでしょうか。

背景にあるのは園児の減少です。

函館市の3歳未満の子どもの数は、ことし3月末時点で20年前の半数に近い3000人あまりまで減少。少子化の影響を受け昨年度いっぱいで閉園した施設があるなど、市内の保育施設の数も減少傾向にあります。

今回取材したこの園でも、20年ほど前は定員を上回るおよそ110人の園児がいました。しかし、近年は園児の減少にあわせて定員を下げざるを得ない状況が続いています。現在の定員は60人ですが、4月1日時点での園児の数は54人。0歳児の入園もありませんでした。
少子化に加えて、市内で子育て世帯が多く住む場所の変化なども影響していると感じています。

一方で、保育士人材の不足も課題で、この園でもさまざまな取り組みをしてきました。
市役所やハローワークで就職先を選ぶ際に何がポイントになっているかなどを聞き取り、賃上げや福利厚生の充実に取り組んできたほか、就職イベントなどにも参加しました。

コバト保育園 高野吉孝 園長
「一昔前は本当にはだし保育だけで、子どもが黙っていても集まってきたような時代がありました。保育士と子どもの対策を一度にできればいいのでしょうけれども難しい。
地域の活性化につながるのも子どもですし、園児の数をどう増やすか優先的に考えています。集団でしか学べないこともあると思うので、もう少し多くの子どもに囲まれた環境で保育をしたいです」

誰でも利用で増加に期待

函館市内で「こども誰でも通園制度」の試験的な実施に手を挙げたのは5つの施設で、利用したい場合は事前の登録が必要です。函館市ではことし3月11日から事前の登録を始め、3月中に子ども104人分の登録がありました(随時、登録の受付は継続中)。

この制度では就労の有無は条件になっていないため、この保育園のように親が就労していないと3歳未満の子どもを預けられない施設にとっては、制限が緩和されることで利用の増加につながることが期待されます。

高野吉孝 園長
「予約が埋まっていたり問い合わせが増えたりしているので、これから5月6月と忙しくなってくると思います。
この園は私の母が50年ほど前、保護者からのニーズにあわせてできるだけ制限なく子どもを預けられる場所として始まりました。こうした子育て支援に対する思いにも少し近づける制度なのではないかと思っています。
地域に根ざした保育園を目指して、この制度を皮切りに地域と一緒に連携したいですし、うちの園をもっと知って利用してもらいたいです」

月10時間以上の利用多数

この「こども誰でも通園制度」、先駆けて昨年度に一部でモデル事業が行われていました。道内では唯一、白老町に去年の夏からことし3月まで試験的に実施した「認定こども園 海の子保育園」があります。

今年度との大きな違いの1つは、「月10時間の制限」がなかったことです。

この園では1日4時間以下か4時間以上で区切り、月14日間の利用を上限としました。
その結果、1日あたり4時間以上がほとんどで、長いと8時間を超える利用も。さらに定期的に制度を通じて預かっている子どもは、1日8時間、平均週2~3回が多かったそうです。

子どもたちの成長には同年代の子どもとの関わりが不可欠だとの思いから、この園では慣れた子どもは通常のクラスに入り、ほかの園児と一緒に過ごすことにしていました。

今回の取材で出会った、この制度を利用して通園してきた女の子は、短い時で1日3時間、長いと7時間、一月あたり20時間ほど利用。保育士が見守る中、女の子も慣れた様子で皆と一緒に歌を歌ったり、駆け回ったり、お昼ご飯を食べたりして過ごしていました。

利用した父親
「娘は一人っ子なので、いろいろなお友達と触れあえる時間を増やしてあげたいと思って利用しました。家に帰ってきてからも保育園の話をうれしそうにしてくれます。
妻も子育ての時間が軽減されてリフレッシュできるほか、家事や買い物もスムーズにできるので喜んでいます。預かる側からすると大変なことは分かるのでなんともいえないですけれども、あまり時間制限がないのがいいかなと思います」

園によりますと、利用した保護者からは、「家事をすませてから子どもを迎えることで、家で子どもに向き合う時間を確保できた」や、「突発的な用事ができた時に助かった」などの声があったということです。多い月ではのべ46人が利用し、この制度をきっかけに4人の子どもが実際に入園しました。

園長の川野隼人さんは「うちの園では長時間の利用が多く、月10時間の制限でどの程度利用が見込まれるのかは見えないところも正直あるが、保護者にとっては数時間でも育児の負担軽減やリフレッシュなどにつながる。こうした受け皿をつくるという意味では、施設としてもそのニーズに応えたい」と話しています。

業務増でも成長感じる喜びに

この園では、利用する園児が定員に満たない場合に空いたスペースや保育士を活用する「余裕活用型」という方法で、親が就労していない場合も含めて一時預かり保育を実施してきました。こうしたなかで、今回の新たな制度も試験的に導入したため、大きな戸惑いはありませんでした。
しかし、実際の保育士の業務は増えたと言います。

1つは、日々の事務作業です。
通園している園児に加えて、制度を利用した子どもについても利用日や利用時間のほか、情緒面や行動面など一人ひとりの様子をこまめに記録しています。このほか、突発的な預かりなどでこの施設に慣れていない子どもには、1人の保育士がつきっきりになることもあります。

保育士
「特に単発できた子どもの場合は、毎日登園している園児と同じように日数をかけて制作するものはなかなか進められないので、そこは大変。
ですが、制度を利用しているかどうかに関わらずすべての子どもに同じように接し、けがや事故に気をつけて保育をしています。成長を肌で感じられますし、それをまた親御さんと共有できることがうれしいです」

運営考えるきっかけに

白老町では2022年度の出生数が34人となり過去最低を記録しました。この園では少子化が進むいまの時代、保護者や子どもとのつながりを大切にすることが必要だと考え、地域の子育て世帯と関わるさまざまな工夫をしています。

例えば、保育施設などに通っていない未就学児を対象にした行事や、悩みなどを聞けるよう肩肘を張らずお茶を飲みながら保護者と話をする会。さらに、保育園から飛び出して外で園について紹介するイベントなどにも力を入れています。

一方、この園では長時間の利用が多かったことから、「月10時間」の利用制限がある今年度の実施については悩んでいました。最終的には、国からの追加公募もあり白老町とも相談して手を挙げることにしました。「余裕活用型」の一時預かり保育もしながら、「こども誰でも通園制度」では1時間単位でも利用できる「ちょこっと預かり」というような名目で、2つをあわせて取り組みたいと考えています。

保育士不足や少子化が進み、地方と都会それぞれの状況など子育ての環境は地域によって大きく違います。こうしたなかで始まろうとしている「こども誰でも通園制度」。子育て世帯のニーズにどう応えていくか、この園でも改めて考えるきっかけになっていると話します。

海の子保育園 川野隼人 園長
「私たちも人口減少や少子化を体感しています。施設の運営を考えると子どもに来ていただくことが不可欠で、地域とのつながりが大切だと感じています。
だからこそ、この園で子育ての相談ができる、産前産後のケアが整っているなど小さな安心や安全、つながりをしっかり積み上げていきたいです。
ここで子育てをしたいと思ってもらえる地域になることがすごく大事で、私たちの思いや取り組みが地域全体にも広がるといいなと思います」

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  • 毛利春香

    函館局記者

    毛利春香

    2018年入局 秋田局を経て2022年から函館局 人生初の北海道で幅広く取材

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