NHK札幌放送局

ホルスタインに魅せられた、一人の画家(※本当はアナウンサー)の話

堀 若菜

2022年10月24日(月)午後5時15分 更新

※この記事は、一部フィクションを含みます。

 今月22日の朝。 出演準備を進めていた私のもとに、一人の画家が訪ねてきた。 大きな瞳でこちらをじっと見つめると、「リュウイチ・ヨシカワです」と名乗った。 なんでも、群馬県は高崎市からやってきたのだという。 私は突然の訪問に驚き、準備の手を止め、彼を打ち合わせ室に案内した。 彼はソファーに座るやいなや、一枚の絵をこちらに提示した。 

リュウイチ・ヨシカワ「ホルちゃんです。」

雨上がりの地面にできた水たまりのような何かに、黒いシミが点在している。
困惑する私を前に、彼は静かに語り始めた。

リュウイチ・ヨシカワ「これはホルスタインを描いたものです。道東の別海町に行ったときに車窓から見たホルスタインが忘れられなくて、いてもたってもいられず絵にしたんです。」

「ホルちゃん」と題した絵は、別海町に生きるホルスタインを描いたのだという。点在した黒いシミのようなものは、ホルスタインのまだら模様を表しているようだ。リュウイチ・ヨシカワが続ける。

リュウイチ・ヨシカワ「生産量日本一で、北海道を支えているホルスタインに対する敬意、そしておいしい牛乳をありがとうという感謝の気持ちですね。この二つがこもった絵になりました。」

熱い思いを込めた絵を携えて、わざわざ遠方からやってきたのだ。私は、彼に制作時の苦労を聞いた。

リュウイチ・ヨシカワ「黒いまだらの形によって『ホルスタインに見える見えない』が変わってきてしまいますので、線の形はすごく計算をしました。一つ変われば全く違うものに見えてしまうおそれがありますので、気を付けて描きました。」

さらに私は、イラストの下部に注目した。まるで入江のようなくぼみがあるのだ。ちょっとした筆のいたずらだったのだろうか。おそるおそる聞く私に、彼は堂々たる声で答えた。

リュウイチ・ヨシカワ「これはお乳の出る部分です。」

確かに前足、後ろ足よりも小さく描かれている。図らずも、彼の強いこだわりに触れることができた。

そして彼は、興奮気味にホルスタインへの思いを述べた。

リュウイチ・ヨシカワ「あなたたちのおかげで素晴らしい作品が生まれたと思っています。これからも日本の酪農をぜひ支えてほしいなと思います。僕も毎日牛乳を飲んでいます、本当に。最高です。今日もありがとう。そしてごちそうさま。」

私は感動した。彼の身体は、「生乳」によって形づくられていたのだ。そして、それを生み出すホルスタインへの敬意と感謝を、誰もが目に触れられる形にした。

私は、NHKが主催するある企画を紹介した。

「道民の179で彩る木彫りのクマ」。
北海道土産の定番品である、木彫りのクマ。実はいま、再び人気を集めており、「観光王国・北海道の100年の歴史がぎゅっと詰まっている」と語る研究家もいるほどだ。そこでNHK北海道では、北海道にまつわる思い出の写真やイラストを募集し、それを1メートルほどの大きさのクマのレプリカに貼り合わせることで、北海道の魅力が詰まった巨大なクマを作りあげようと考えている。

企画の趣旨を説明すると、彼は純粋無垢な目で私を見て、こう言った。

リュウイチ・ヨシカワ「応募します。」

去り際に見せた彼の笑顔は、まるで別海町の朝日のように眩しかった。

※この記事は、一部フィクションを含みました。



と、冗談はさておき、NHKでは、皆さんの北海道にまつわる思い出の写真とイラストを募集中です!
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皆さまの心の北海道をお寄せください!お待ちしております。

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