NHK札幌放送局

ほっと通信(109)【瀬田宙大】

瀬田 宙大

2020年6月5日(金)午後2時41分 更新

コロナ時代の“ニューノーマル”=新しい日常。観光業界も模索を始めています。美しい景色、特別な体験、旅先での出会いは人生を豊かにしてくれます。宿泊施設や観光施設でも対策を整え、自分たちが強みとする価値を提供できるよう準備が進んでいます。新しい観光スタイルは、観光を下支えするガイド業にも求められています。しかし、2月末から客足は遠のき、予約も収入もゼロの日が続いているガイド事業者も少なくありません。「北海道の魅力をよく知る自分たちが倒れてはならない」と動き出したガイド事業者らの模索を追いました。    

取材のはじまりは、5月27日に行われたオンラインミーティングでした。
札幌、十勝、知床の4事業者が参加しました。
それぞれがガイドの強みを生かした「オンラインツアー」の実現に向けて、ライブ配信に挑戦。その反省と、現状共有、今後のあり方を検討しました。

これに先立ち、5月21日にはオンラインツアーの情報共有をするためのグループをSNS上に開設。参加者は放送時点で350人を超えていました。このグループでいち早く「ライブ配信」を行ったメンバーで行われたのが、27日のオンラインミーティングでした。

2時間超の会議。
決まったのは動画投稿サイトYouTubeにチャンネルを開設することです。
会議の翌日にはチャンネルを立ち上げ、タイトルやコンセプトを検討。6月3日「We Love Hokkaido」というタイトルで、北海道の観光ガイド業の見本市でありプラットフォームとなるチャンネルを公開しました。見るたびに動画が次々と公開されています。このスピード感に驚く方もいるかもしれませんが、その背景にあるのは強い危機感です。

ガイド事業者は施設を持たず、屋外で仕事をすることから休業要請の対象にはなっていません。しかし、当然、人の動きは止まるため、開店休業状態に。2月末から仕事がほとんどなく収入がゼロという事業者も少なくありません。また、法人でも夫婦二人で事業を行っている事業者は雇用調整助成金の支給対象にならず、持続化給付金などを申請したとしても、厳しい状況に置かれているということが会議から伝わってきました。

「笑ってないとやってられない」
「持ちこたえられたとしても1年…」
「やりたいではなく、やらざるを得ない」

人を楽しませたい。地域の魅力を共有したい。自分たちのフィールドに触れてほしい、特別な場所にしてもらいたい、そしてまた来てほしい。そんな思いが根底にあるガイドの皆さんは基本的に明るいです。取り組みベースでお話をすると元気な人たちに見えます。でもそれは一面であって、真実ではありません。

このほか会議では「危険性が高いのは3密だということは共通認識だが、アウトドアフィールドでのリスクはどうなっているのか、危険性が低いのはどのような状況なのかも明示してほしい」という声も出ていました。

ライブ配信の強みと課題

5月30日。
十勝で農場見学や収穫体験ツアーなどを行う「いただきますカンパニー」という事業者が、毎年人気を集めている7haあまりの菜の花畑を案内するツアーをオンライン上で行いました。無料のモニターツアーで、今後の事業につながるかの試金石でもありました。

オンラインツアーと銘打つだけあって、あれやこれやの工夫が。
これはぜひ参加して体感していただきたいところです。
とはいえ、どんな様子だったのかは私もお伝えしたい。
そこで東京から参加した石井さんご家族に代弁してもらいます。

3年前から毎年9月に十勝を訪れ、ことしも行く予定が新型コロナでやむなく見合わせ。残念に思っていたところオンラインツアーを知って参加しました。6歳になった晶くんと、ガイドの皆さんの「元気?」「大きくなったね」「前歯ぬけちゃったの」「とうきびかぶりつけないね」という会話からも、お互いにとってこれまで素敵な時間を過ごしてきたことが伝わってきました。そんな石井さんは「においとか風とか広さとか、もちろん画面上ではそこまでは感じられないんですけど、不思議と楽しめました。特に子供もいるので5月はなかなか休みもとれず、行きたくても行けないんですよね。菜の花をあれだけの規模で見たのは初めてだったので楽しかったです。子どもも思いのほか喜んでました」と話し、上の写真にもあるように晶くんの「行きたくなった」という思いにつながりました。

この感覚は私もよくわかって、 #ローカルフレンズ出会い旅 15分版の最新作 #オンラインで旅してみた件 < 6月6日(土)午前0時25分~40分(*5日深夜)(BS1/全国) でも同じ感情が沸き上がりました。コンテンツとしてオンラインも楽しめて、さらに現地に足を運んだり、案内をしてくれた人に会ったりする未来の楽しみもうまれる・・・これってすごく素敵なことじゃないですか?オンラインツアーにはそんな可能性が秘めていると感じました。

一方で、課題も。
それは雄大な北海道ゆえのものでした。

そう、電波環境です。
どうしても画像が止まってしまったり、ガイドの声が途切れてしまうというもの。ただこれについても「事前に撮影した動画を、環境がいいところでライブで説明したら?」とか「ある程度のカクカクはオンライン上では面白みとして使えるかも」など次から次へとアイデアが出ていました。

そういえば、ちゃんと紹介していませんでした。
この座組の中心人物はモニターツアーを行った団体の代表 井田芙美子さんです。

なぜ課題があるなか、ライブ配信にこだわるのか。
井田さんは「私たちはお客様とのコミュニケーションを大事にしたい。ガイドらしさや、ワクワクを感じてほしいと思っている。だからリアルタイムのやり取りにはこだわっていきたい」と話しました。
また知床の若月さんは「ネイチャーガイドとして、本物志向な感覚がある。現地で案内するのには確かにかなわないが、リアルタイムのやり取りはホンモノを伝える可能性は感じられている」と補足していました。

これがメイン事業になることはなくても、必ず未来につながる。つなげる!そんなパッションを感じました。

生き残りをかけて

道内130あまりのアウトドア事業者や体験型観光事業者等の実態調査を進めている藤崎達也准教授は、アンケートで、稼ぎ時の夏季シーズンの売り上げ減少の見込みを聞いた設問で、回答者数69の速報値で33事業者が80%以上の減少を見込んでいると回答したことなどを踏まえ「アンケートで収入の6割を稼ぐ時期を7月・8月と答える事業者が多いことがわかった。冬季シーズン等の売り上げがほぼないなか、夏に売り上げが見込めないとなると事業縮小や最悪の場合廃業を決めるガイド事業者がでてきてしまうかもしれない。その結果、アドベンチャーツーリズムには欠かせないガイド事業者らが減ってしまうことは観光資源の一部が失われるものと同じだと考えている」と評価しました。

井田さんは現在の模索をこのように話しています。 

私たちは性分で楽しくやっちゃう。だから、きっと楽しく見えちゃうんですよね。大変だけど、やるからには楽しくやりたいし、楽しくやっていれば結果がついてくるかもしれない。可能性が開けるかもしれないという期待を私は持っている。一年なにもやらずに事業が死んでしまうよりも、諦めず、もがいて、やれる努力を精一杯して、北海道の魅力をもっと高めていきたい。そうやって取り組んだ結果、段々元気も出てきたし、いいアイデアも増えてくるし、新しい仲間も増えてくるしと、新型コロナウイルスのうねりに巻き込まれてからようやく正のスパイラルに入れた気がしています。みんなで力をあわせて生き残っていきたいと思います。

今週のほっとニュース北海道では、円山動物園や旭山動物園、札幌テレビ塔、夕張の石炭博物館など再開した観光施設のほか、道東・弟子屈町の川湯温泉の宿事業者の取り組み、そしてガイド事業者の模索をお伝えしてきました。対策が急がれる中ではありますが、長期戦になりそうです。アイデアや行動力を生み出す活力のためにも脳と心と身体をいたわりながら北海道の新しい観光スタイルを再構築していってほしいと思いました。

いやー、旅したいですね。

それでは、また \| ・vvvv ・ |/

(2020年6月5日)


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