NHK札幌放送局

厚真に外国を?!

瀬田 宙大

2021年10月28日(木)午後4時39分 更新

10月23日と24日の二日間、厚真町であるモデルツアーが開かれました。その名もEnglish Camp in ATSUMA。厚真にいながら海外気分を味わえる空間を演出するというもので、渡航が容易ではなくなったコロナ禍の今だからこそ実現したかったと語る主催者・佐藤稔さんにその思いを聞きました。

主催者は「英語が苦手」だった?!

佐藤さんは高校卒業後、ワーキングホリデーでニュージーランドに。その後、オーストラリアで就職し貿易業に携わります。そして15年前、2006年頃に独立。以来、佐藤さんの背後に写るキャンピングトレーラーなどを日本に輸入したり、日本製品を輸出したりしています。厚真町には2017年に移住しました。最近では、地域の食材の流通や販売も手掛けているほか、レンタカー事業なども行っています。

外国人の講師と英語が喋れる日本人スタッフが子どもたちを見守る今回の「English Camp」。参加者を募集したところ、町内の小学校5年生から中学校3年生まで8人から応募がありました。

こうした企画を主催。
海外で働いた経験もある佐藤さん。
さぞ英語が好きで得意だったのかと思いきや・・・

実は学生時代は英語苦手だったんですよね。それこそ単位をとれるかどうかというレベルで。

そうなんですか!いや~意外でした。

佐藤さんは「海外渡航は新たな出会いがある。視野を広げる大きなチャンスだと思う。その感覚を少しでも体感してもらい、苦手に向き合ったり、自信を得るきっかけになったりしたら嬉しい」と優しいまなざしで語ります。

でもこの方、実は結構スパルタな面があることもわかってきました・・・。

子どもたちを困らせまくる?!

一泊二日のキャンプ。模擬パスポートをつくり、外国人講師が待つ入国審査からスタートします。

子どもたちは、パスポートに書かれた名前や生年月日などを英語で外国人講師に伝えます。

入国審査を担当する外国人からの問いが聞き取れない時には「もう一度」とお願いし、英語が浮かばない時にはジェスチャーを交えながら、相手に伝えようと努力していました。

無事に❝入国❞を終えた生徒や児童は、キャンピングトレーラーに向かいます。

実はここ、銀行になっています。

この空間では日本円は使えません。英語を駆使してキャンプ中に使える通貨に両替します。

食べるものも英語で注文。
ランチはひとりひとり注文が終わるまで、その場を離れることができません。

小腹が空いたときはお菓子が買えます。
でも、オーダーはもちろん英語!銀行で両替した通貨を使って支払います。

「将来的にはお釣りをちょろまかす店員さんも置きたい」という佐藤さん・・・厳しい!!

あえて厳しく、佐藤さんの言葉を借りるなら「ガチ」でやるにはもちろん理由があります。
これらのプログラムは、いずれも佐藤さんやボランティアで参加したスタッフらが、海外で実際に困ったシーンを再現したものなんです。

海外で体験する、して困るであろうことをとにかく詰め込んで、どんどん困らせようと思いました。コンセプトとしては、失敗が許される安全な場所でチャレンジする。何が起きるか分からない、日本語が通じない外国気分を味わう。間違えてもいいんです。でも、わかったふりはよくない。ジェスチャーなどをまじえながらでも相手に思いを伝える面白さや、わからないことはわからないと伝えることで次のコミュニケーションがはじまるということを知ってほしいんです。だからガチガチに、それこそ子どもたちが泣きだすギリギリまでやろうと思いました。今回参加してくれた子たちは本当に強くて、楽しんでくれました。僕が子ども時代に参加していたらきっと泣いていましたけど。

Campを企画したワケ

厚真町は英語教育に力を入れています。
希望する中学生を海外に派遣する事業を行ってきましたが、去年、ことしと新型コロナウイルスの影響で中止になりました。

今回のEnglish Campは、その代替のひとつとして、厚真にいながら海外気分を味わえる時間を提供したいという佐藤さんの思いが原点にありました。

中学3年生は1度しかないんです。また来年ね!がきかないんです。中止になったからあなたは行けなかったねは、なんだか違うなと思って。それなら厚真に外国をつくればいいんだと企画しました。僕からすると、厚真への恩返しです。

自然と出てきた「恩返し」という言葉。
お話を伺うと、移住した時期との関わりが見えてきました。

佐藤さんが厚真町に移住したのは2017年。町の事業「ローカルベンチャースクール」がきっかけでした。多くの地域の人と関りをもつなかで、町と、そこで暮らす人たちにほれこんでいきました。

その翌年、2018年9月6日、胆振東部地震が発生。厚真町は震度7を観測しました。佐藤さんの自宅は全壊。移住して間もないなか、支えてくれたのは町の人たちでした。

佐藤さんご自身も生活を始めた直後に大きな喪失を経験しています。失われることが続くつらさを知っているからこそ、地震やコロナに翻弄される子どもたちを放っておけなかったのではないか。佐藤さんに、私が感じたことをぶつけると、こんな答えが返ってきました。

そういうところはありますね。少しでも自分ができる仕事で子どもたちのプラスになること、体験の足しになることができないかなと思ったんです。移り住んでから、本当にこの町の人にはお世話になっているので、僕なりのお返しがしたかったんです。2人の子どもを育てる親でもありますし、町を歩いているとどの子もみんな挨拶をしてくれるんです。たまたま知っている子が海外派遣に興味を持っていて「ことしもなくなっちゃった」って言っているのを知ったら、つらい思いはさせたくないなって思ったんですよね。どうせ働くならそういう仕事をしたいなって。

またやります!

参加した子どもたちからは「以前、小樽で外国人に写真を撮ってと言われてドキドキしたけど、今度は緊張感がなくできるかもしれない。海外も行ってみたい」とか、「わからないことはわからないと言っていいんだとわかった」「積極的に話かけられそう」「苦手な方向に向かっていく精神が少し身についた」「英語の勉強と英会話が違うことがわかった」などの声が寄せられました。

またスタッフとして参加した町の人たちからも「またやろう」という声が届きました。もちろん、佐藤さんもその思いを強くしています。

厚真町には奇跡的にすべてがあるんです。まず、共感してくれる人たちがたくさんいます。例えば、こういう企画を考えていると伝えれば場を貸してくれる方がいて、英語が堪能だったり、海外で暮らした経験があったりする人がたくさんいますし、今回は知り合いにお願いをしてカヌー体験もしましたが、厚真にはサーフィンができる海もあります。おいしいものもあります。これだけ環境がそろっている場所は都会やほかの地域を探してもなかなかないと思うんです。地域の観光資源、海外に行けないから厚真に行こうみたいにしたいですよね。

厚真町に外国を!~佐藤稔さんの思い~は、10月29日(金)のNHK総合 ほっとニュース北海道(午後6時10分~/全道)で放送します。ぜひご覧ください。

≪厚真町の記事≫
▷ほっと通信104 和牛メゾン 
▷ほっと通信112 子育ての味方は”おやつ”?!
▷特集チェンジ「起業家×厚真町」

2021年10月28日


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