NHK札幌放送局

ほっとニュース通信(31)【瀬田宙大】

瀬田 宙大

2018年12月6日(木)午後3時38分 更新

9月6日の夜。 午後9時過ぎ、徒歩で自宅に帰宅する途中、真っ暗なススキノで大きな荷物を持った人たちと何度もすれ違いました。恥ずかしながら、当時は自分も放送と自宅に残してきた家族と、身の回りのことで精一杯で何もできませんでした。 

同じ夜。
行き場を失った観光客を受け入れ、避難場所としてゲストハウスを無料開放した人たちがいます。

26歳の柴田涼平さんもその一人です。
札幌市豊平区にあるゲストハウス「WAYA」をはじめ、市内で3つのゲストハウスを運営する会社の共同代表です。

柴田さんが開放を決めたのは宿泊していた外国人観光客の言葉でした。「“私たち、きょうチェックアウトなんですけどどうすればいいですか”と言われたときに、このままこの人たちを追い出してしまったらどこに行けばいいのかもわからず途方に暮れてしまうと思ったのが一番のきっかけです」と振り返ります。

2日間で受け入れたのはおよそ200人。そのうち6割が外国人でした。

今回は“気持ち”で行動したという柴田さん。
しかし、それでいいのか疑問もあったといいます。
継続性に欠けるからです。

ネックは資金。
今回、無料開放にかかった費用はおよそ15万円。9月のキャンセルもあわせると損失は120万円近く。一部は全国の人の援助で補填できましたが、毎回それができるかもわかりません。もしまた災害が起きたとき、おそらく同じように行動するだろうが、どこかで費用を意識してしまい頻発した際にはブレーキがかかってしまうかもしれない。それだけは避けたいと考えたといいます。

そこで考え出されたのが「ゲストハウス基金」でした。
実はもともと全国のゲストハウスのオーナーらとミーティングを重ねる中、ことし6月にアイデアを思いついていました。来年2月に東京で開く予定の「ゲストハウスサミット2019」で発表しようと準備を進めていたところ自らが被災。自分が今できる備えとして急いで準備を進め、地震1か月後に基金を立ち上げました。柴田さんはこれまで以上に「何かが起きてからでは遅い」と強く感じたといいます。

ゲストハウス基金」はスマートフォンの無料アプリ「Gojo」で管理されています。

基金に賛同する人はアプリをダウンロードしたうえで、月額100円、300円、500円、700円の中から選んで納めます。そして災害時、避難所としてゲストハウスなどを無料開放したオーナーに対して、審査を経て1日あたり1万5千円を支払うことにしています。

取り組みは始まったばかり。
基金開設を知らせるとともに改善点を探りたいと、柴田さんは先月、「ゲストハウス基金」の説明会を開きました。

参加者からは「どういう人がどう使うのかが分かるように運営してほしい」と、透明性の確保が重要だという意見が寄せられたほか、「全員がアプリを使うのは難しいのでゲストハウスに募金箱を置いて、オーナーが基金にまとめて納めてはどうか」という意見が寄せられました。
また地震当日、柴田さんのゲストハウスで過ごした韓国人の男性からは「旅行者にとっても自分自身の問題。特に、避難場所を提供してくれたり、あえてもともと予定していたイベントなどを開いてくれたりしたことは心に残っている。自分にも何かできることがあればやりたいと思う人はいる」と当時を振り返ったうえで、多言語バージョンを作ったり、外国人も参加できる仕組みづくりを考えてみてはどうかと提案がありました。

柴田さんは「迎える立場の日本人で取り組みを進めるつもりでいたので、ゲストである外国の人たちに参加してもらうという発想はなかった」と応じていました。

説明会のあと「文書でも思いは伝わるとは思う。でも、直接顔をあわせて、気持ちを通じ合わせて理解を広めていきたい。焦らず、ゆっくり、丁寧に思いを届けたい」と話す柴田さんの姿が印象に残っています。

いまある枠組みで足りないのであれば、創り出せばいい。大学卒業後、ゼロから起業した若きフロンティアならではの発想に強い刺激を受けました。

来年はラグビーワールドカップ、2020年には東京オリンピック・パラリンピックといま以上に多くの外国人観光客を迎えることになる日本。柴田さんが考える防災という“おもてなし”がどのような広がりを見せるのか、今後も注目していきたいと思います。

それでは、また(^^)/


(2018年12月6日)

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