NHK札幌放送局

ほっと通信(108)【瀬田宙大】

瀬田 宙大

2020年6月1日(月)午後2時59分 更新

ほっとニュース北海道でお伝えした「オンライン宿泊」。和歌山県のゲストハウスがコロナ禍の4月にはじめた取り組みで、オンライン会議システムを活用して、写真やライブ映像で宿や地域を紹介するほか、参加者同士が交流を楽しむ時間も設けられていて、地域の紹介をしたり、参加者同士が交流を楽しんだりするもので、ゲストハウスに宿泊した時に得られる体験をオンライン上で提供するものです。札幌市にあるゲストハウスでも6月から本格的にはじめることに。今後、道内でも広まりを見せそうな「オンライン宿泊」の可能性を探りに行ってきました。

はじまりは、札幌市を中心に7つのゲストハウスを運営する会社の創業メンバーのひとりで、前回のブログ でご紹介した「the Locals」のみなさんと親交の深いローカルプレーヤー・柴田涼平さんからもらった連絡でした。そこには「いまブームになりつつある、オンライン宿泊を始めます!取り上げられる可能性があればお願いします」と書かれていました。…ブーム?!え、知らない…。そもそもオンラインで宿泊?!よくわからん…。確かに最近この文字の並びを目にしていましたが、そんなに注目されているものとは…。すぐさまネットやSNSで検索。確かにブームになっていました。そんな私にダメ押しで「初日を終えました!可能性が見えまくりで、最高の時間となりました!海外にしっかり届けていけるようアプローチしていきます!」と連絡が入りました。その興奮を感じて動き始めました。

柴田さんは私のブログでもたびたび登場する若きローカルプレーヤーのひとりです(イベント「宿コミュ」登壇者紹介情報と冷静に向き合う)。 ことし6月で創業6年の節目を迎える起業家です。新型コロナウイルス感染拡大で中止となった札幌でのゲストハウスサミットの主催者で、サミット中止に始まり怒涛の日々を過ごしていました。放送でもお伝えしましたがゲストハウス自体も3月の売り上げが前年比65パーセント減、4月は90パーセント減で「創業以来の危機」と表現しています。

左から河嶋峻さん、木村高志さん、柴田さん

この厳しい状況で、柴田さんをはじめ、ゲストハウスの創業メンバー3人は笑顔を絶やさず、前を向いて闘っていました。宿の状況や、今考えていることをしっかりと自分たちの言葉で伝えたいと行われたライブ配信。1時間余りで語られたのは、宿として最大限の感染対策を行いつつ、ゲストハウスらしさを守り抜くという思い。さらに、こんな時でも新たなチャレンジをするという発表。そして、旅を諦めないという決意でした。

このライブ配信を柴田さんはこう締めくくりました。

重複してしまいますが、僕たちは変わらず元気に、コロナに対応しながらやっているので、そういうのを伝えられたらなというのと、暗い気持ちで家にいる人がいたら一緒に手を取り合って頑張っていけらなって。こんな状況下でも一緒に小さな楽しみでも分かち合えたらなと思っていますので、遠くにいても“ステイリンク”していますよ!というところを少しでも感じてもらえれば嬉しいなと思います。ありがとうございました。

配信のあと、私は3人にインタビューをお願いしました。
放送ではご紹介できなかった彼らの言葉をテキストでお伝えします。

瀬田
配信の中でも少しお話しされていましたけど、今回、なぜこんな配信をすることにしたんですか?

河嶋
普段、宿泊施設の事業もそうなんですけど、会社をやっていていろんな人に応援してもらったりとか、支援をしてもらっていて、そういう方たちに「元気です」って伝えるのと、「これからこういうことに取り組もうと思っています」っていうことを伝えて、ちょっとでもプラスの情報を出せればなと、そういうきっかけでやりました。

瀬田
周囲の皆さんから、結構心配されたんですか?

木村
心配されましたね。

瀬田
それはご家族だけじゃなくて。

木村
そうですね、友人とかも。僕らがゲストハウス、宿泊をやっているということを皆さん知っていただいている中で、そういった方々から「大丈夫か」とか。北海道が全国的に見ても観光への影響が一番早く伝えられたこともあって、心配していただいていましたね。

瀬田
実際、3人にとってこの状況を言葉で表すとしたらどんな?

柴田
言葉にするなら創業以来の危機ですね、完全に。こんなに大変だったことがあったのかなっていうぐらい、深刻な状況ではありますね。

瀬田
河嶋さん、木村さんも同じ印象ですか?

河嶋
そうですね。やっぱりお客さんがゼロっていうのがなかなかね。しかも、それが毎日続くというのは経験していなかったので、そういう意味では同じ気持ちですね。

木村
全く同意です。いい意味でも悪い意味でも、メイン事業は宿泊。頂いた宿泊費で経営をしていた部分が多かったので、それがある日突然ゼロになるというのは本当に想像もしていなかったですし、やっぱり今までやってきたことがリセットされちゃうような感覚も強くありましたね。

開業準備に追われていた当時の3人

瀬田
そういう意味ではアットホームな空間を提供して、泊まるということだけじゃなくて、地域との橋渡しも含めた場の提供をずっとされてきたわけじゃないですか。それが場を提供できなくなるというのはどういう感覚だったんですか?

柴田
それは…今まで、仰っていただいたように場を提供することで喜んでいただいたりというのが多々ありましたし、あと、2年前の胆振東部地震の時は特に顕著だったなと思っていて、場を提供することによって帰れなくなった方々が喜んでくれたり、それによってまた日本に旅行者として来てくれたりというのが実際にあったんですよね。なので、そういうのも考えると、来てもらって喜んでもらうというのができないという時に、じゃあ自分たちに何ができるんだろうという感情に駆られてしまいました。凄くもどかしいの一言ですね。

瀬田
お二人は。

河嶋
そうですね、実際に人が来てもらってできる事業というか、僕らゲストハウスの良さは人が集まって、交流が生まれたりというのがあるので、そもそも人が来れない状況だし、僕たちも来てくださいと言える状況ではなかったので、そこは本当に場を提供できないもどかしさと、じゃあ僕たちには何ができるんだろうという感じでしたね。

瀬田
明るい配信ではありましたけど、裏側には葛藤がたくさんあったんですね。

木村
葛藤というか…段々この状況に慣れてきちゃう。3月とか4月とかはお先真っ暗みたいなのがあって。オリンピックがなくなったというのがやっぱりこう一番大きかった。札幌の観光にもオリンピックというのが間違いなく大きなイベントではあったので。それがなくなったという時にズドーンみたいな…。で、どうなるんだろうというのはその後、2~3週間くらいあったかな。

柴田
確かに明るい配信だったと思うんですけど、根本的には明るいメンバーなのでそこはうそ偽りない配信ではあるんですけど、ただ振り返ると、木村君が言ったように3月はズドンと落ちたというか、現実と向き合わなきゃいけない、どうすればいいんだという焦りとかを凄い感じていた時期があって…でも、それは一つ一つ時間をかけて乗り越えていこうと。じゃあ何が最善の解決策なのかというのは見いだせているかはわからないんですけど、ただ見出そうと、必死に動いているのが今なのかなと。

「すべての人が笑顔になれる居場所を作る」左から柴田さん、河嶋さん、木村さん

瀬田
人が関わり合いを持つことで価値が生まれる。交流と密。このあたりを考えると、ゲストハウスって一番難しい業態かもしれないですね。

木村
そうですね。それは間違いないですね。ただ維持するためにも、僕はゲストハウスだからこそコロナウイルスに対してアクションをとっているというのをお客さんに対していわかりやすく発信していくというのが、今後ますます大事になってくるんじゃないかなと思っています。その中で、お客さんの安心安全を考えた時には部屋タイプ、ドミトリーを、一つのグループや家族のお客さんだけで泊まれるような部屋に改装するというのが一つの考えです。もちろん、いずれドミトリーとしても利用できるようにという余白は残しながら、個室という形でも提供できるように変更しましたよと提案するのがいいかなと、今のところ思っています。

瀬田
オンライン宿泊を始めたり、改装を検討したり、新たな事業をこの中でも始めたりと、コロナ時代にも観光をしっかり提供したいという思いを強く感じたんですが、厳しい現実のなかでも感じる、あるいは信じる旅の可能性ってどんなことなんですか?

河嶋
ゲストハウスの良さにもなるんですけど、今まで出会わなかった人とかに出会って、自分の視野が広がる。これは僕自身が大学生の時に旅をして感じた良さです。どうしても今は、なかなか旅ができない状況だと思うんですけど、そういう新しい人との出会いとかを求める感情や喜び自体は変わらない部分だと思うので、実際に密の環境ではできないかもしれないんですけど、それはオンラインなのか、物理的な場所も少しそれに対応した形に変えつつ、ただそういう旅の根本的な価値は変わらないのかなって思います。

瀬田
コロナ時代だから変化だけは求められるが、変わらない部分もあるということ。

河嶋
そうですね。そういう提供する側の物理的な環境ですとか、部屋のタイプですとか、そういう部分は変わっていかなきゃいけないと思うんですけど、そういう旅の価値とか、僕らが提供したいものみたいなところとかは、大幅に変わるというよりは、変えずに大事にしていきたいなと思っています。

瀬田
諦めないと。

河嶋
そうですね。新しいことをやろうということではなく、今の状況に合わせて、どうやったらその価値を提供できるのかを考え続けていきたいなと思っています。

木村
僕も、変わらない部分があるのかなと思っていて、いま、いわゆる日常から非日常という言われ方もするんですけど、リフレッシュという目的は一つ大きくあると思うんです。人間の根本的なものというか、変わらないんじゃないかなと思います。ただ、旅の仕方とか、旅の選択の方法っていうのが、やっぱり変わってくるんじゃないかなと思っていて、だから価値自体、求めている価値自体は変わらないけど、それが満たされる条件みたいな、選択肢、選択方法というのが無意識のうちに変わってくるし、なんかそこに施設側がちゃんと答えられるような準備をしていくというのがすごく大事だと思います。あとなんか、正解はやっぱり誰もまだない状況なので、なるべく、なんて言いうんですかね…、ゲストハウスだからこそなんですけど、横のつながりがあるのでそういった気づいたことは、ほかの宿にどんどんみんなでシェアしながら、業界全体で対策を打てると、また違った動きができるんじゃないかなと思っています。

瀬田
条件?

木村
具体的には河嶋がさっき言っていたんですけど、まちがいないのは密ですよね。密を避ける観光。僕が見て面白かったのが、動物園のレストランでカピバラのぬいぐるみを置いているというニュースを見て面白かったんですけど、ドミトリーであればベッドを減らしたり、人形を置くとか。人はいないけど人はいるっぽい空気。あとはIT化というのも大切になってきますよね。チェックインをIT化するとか。うちらの人形を使わないドミトリーに置いておく?

一同

瀬田
正直、売り上げはいまどういう状況なんですか?

柴田
赤裸裸に言う?

河嶋
前年度比で、3月6割くらいで、4月が9割だよね。

柴田
じゃあリアルにいこうか。3月でいうと前年度比が65%程度下がっていて、4月に関しては90%くらい下がってしまっているので、数値面でも誰もがわかるくらい、かなり危機的な状況なのは伝わるんじゃないかなと。

瀬田
厳しい中でもゲストハウスという形は守ろうとしているじゃない。そこの思いは?

柴田
本当に、固執するのがいいのかはそれぞれの経営者によって違うと思うんですよね。こういう状況だから観光業からは離れた方がいい、支出がかさむものはすぐに手放した方がいいというのは、ある意味で正解だなと思いつつも、ただ6年弱くらい、6月6日でこの会社も6年を迎えるんですけど、6年弱やってきて感じてきた価値というのは確かなものがあって、人が集うからこそ生まれる新しい価値だったり、人と人が出会うからこそ生まれる関係性だったりとか…そういうちょっと感情的な部分になっちゃうかもしれないんですけど、あたたかさみたいなものはゲストハウスで生み出してきた気がしていて、そこは大事にしていきたいなって。たとえオンラインで何かを提供するのは、今後オフラインで実際の場で提供したとしてもやっていきたいなと思います。で、今後の可能性に関していくと、そういうオンラインを通して、事前に宿泊体験をしてもらうだったり、会う前に会う楽しみを作っておいて、実際に来た時には「はじめまして」から始まるんじゃなくて、「やっと会えたね」っていう感動から始まるような旅のスタートが提供できるのであれば、それはまた新しい旅の形になりうるんじゃないかなと思っています。実際に来る前から関係性がある程度できあがっているって面白いと思うんです。会いに行くのが楽しみになるというのは、世界の人も含めてつくれるというのが、環境整備も含めて可能性だなと思っています。

木村
本当にコロナがないと、ずっと考え方も目指すものも一緒だったんですけど、この時代にどういう経営がそもそも正しいんだろうって。なんだか、そういうところですらわからなくなってきている部分はありますよね。

瀬田
そのあたりも含めて、お客さんと一緒に答えを探していくということでしょうか。

木村
そうですね、まずはいままで泊まってきてくれたお客さんで、お客さんが何を僕らに求めている、そこをちゃんと、旅の話じゃないですけど、くみ取って提案できるというのが大事だと思っています。そこがなんなのかっていうのは正直詳細にはまだ見つけられていないんですけど、オンライン宿泊だったりとか、一棟で貸してみるとか、そういうのをやりつつ探していければなと思っています。

河嶋
そうですね。明確な正解は僕らも見つけられていないので、一個一個やりながら、それでも正解かはわからない。だからこそ、自分たちらしいものを見つけられたらいいなと思っています。

柴田
うん…なんか、燃えるよね!

木村
そうだね。大きいホテルも小ちゃい宿も関係なくスタートラインに立っている状況なので、ここでまた新しくゲストハウスの価値を再定義できればまた新しい波を作れる。そことはものすごくやりがいというか、面白いというか、いいよね。

瀬田
今後の回復も含めて、予測ってどう立てているんですか?

柴田
国内の需要は少しずつ、本当に緩やかにですが回復するとは思っています。ただ、海外の人たちが戻ってくるのはいつかわかりません。楽観視できないし、時間がかかることは間違いないと思います。そう考えた時に、海外の人たちに日本を体験してもらいたいと思っていて、オンライン宿泊を始めたんです。ずっと待ってるのではなくて、オンライン上でまず体験してもらいたくて。実際にまた世界中で旅が始まる時期が来た時に、2年間なり3年間、何もしないでいたとして、日本、北海道っていうのをまた観光地としてのファーストチョイスしてくれるか分からない。それだったら、その動けない期間の間でも、少しでも日本、北海道、札幌、っていう場所を感じてもらいたい。そして海外の人に、旅したいという欲求が芽生え、その芽生えた欲求の矛先を向けてもらえるような関係はいま築く事ができるんだなと思います。

瀬田
いまの話をしてる時ってすごく楽しそうだなって印象があるんですけど、厳しいけどマインドとしては前向きにという感じですか。

柴田
そうですね。もちろん苦しい部分もたくさん会社としてもありますし、僕たちだけじゃなく様々苦しんでいる皆さんもいらっしゃるんですけど、ただどんな時でも希望だったり楽しさだったりは抱いていいと思ってますし、抱き続けたいです。そういうものがないと苦しいと思うので。このオンライン宿泊での出会いだったり、その次いきたい場所が増える喜びだったり、次会いたい人が増える喜びっていうのは、誰しもが持っていいと思いますし、僕自身も和歌山県のゲストハウスの取り組みに参加したことでその感覚を持つ事ができたので、その感覚を、誰にも、誰でもが持てるように、これからもオンライン宿泊もやっていきたいなと思ってます。あとは社員のみんなも、もしかしたら元アルバイトや元社員、元ヘルパーで手伝ってくれたスタッフのみんなが、オンラインだからつながりなおして、一緒に盛り上げてくれたら素敵だななんていうふうに思ってます。ここからが始まりなので、これからどんどんどんどん、ブラッシュアップというか、より磨いていって、多くの人たちに価値を感じてもらえるように頑張っていきたいです。

瀬田
ありがとうございます。みなさんがこの荒波を泳ぎ切った時に、またお話聞かせてください。


いかがだったでしょうか。3人の言葉は力強く、素直で、信念を感じました。私の心にはものすごく届きました。実はこのほかにも観光関連の取材をしています。今週木曜日にはソフト面で観光を支えるガイドの皆さんの現状と摸索をほっとニュース北海道でお伝えします。

それでは、また\| ・vvvv ・ |/

(2020年6月1日)

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