7月17日(日)、札幌市中心部の北三条広場にやってくる黄色いスクールバス。True Colors CARAVANと題して、違いに気づき、多様性の真の意味を知る種を全国にまくことを目的に4月から各地をまわっています。
東京、名古屋、広島に続き北海道・札幌を訪れるのを前に、クリエイティブ・ディレクターをつとめる森下ひろきさんに、取り組みへの思い、札幌開催の注目点を聞きました。
全国6都市をめぐる
「True Colors CARAVAN」とは

そもそも、この取り組みを知る上で欠かせないのが、バスにも記された「超ダイバーシティ芸術祭」の存在。
東京オリンピック・パラリンピックに向けて、2019年9月から行われている取り組みで、障害の有無や性的マイノリティーの人たち、世代、国籍などの異なる参加者たちが、ダンスや音楽などのパフォーミングアーツを通じて多様性を世界に発信する芸術祭のことです。
公式ホームページには以下のように書かれています。
歌や音楽、ダンスなど、私たちの身近にあるパフォーミングアーツ。
障害や性、世代、言語、国籍など、個性豊かなアーティストがまぜこぜになると何が起こるのか。
そのどきどきをアーティストも観客もいっしょになって楽しむのが、True Colors Festival(トゥルー・カラーズ・フェスティバル)です。
居心地のいい社会にむけて、まずは楽しむことから始めませんか。
こうした取り組み、日本財団が主催しこれまでは東京を中心に行われてきましたが、全国にもその思いを広げていこうと、ことし4月から全国6都市をめぐることになりました。
東京を除く地域としては3都市目。
17日(日)に札幌を訪れます。
入場・参加いずれも無料で、正午から午後5時までの予定でプログラムが組まれていて、スペシャルゲストには東京2020パラリンピック開会式に登場した盲目のロックギタリスト田川ヒロアキさんも登場します。
クリエイティブディレクターが語る
札幌CARAVANに込めた思い

イベントに先立ち、きょう(15日)札幌入りしたクリエイティブ・ディレクターの森下ひろきさんに、この取り組みにかける思いを聞きました。
――――ことし春からなぜ全国をめぐることにしたのですか?
森下ひろき なんとか東京2020オリンピック・パラリンピックが終わり、D&I(ダイバーシティー&インクルージョン)が加速すると思ったらどこかトーンダウンしたんじゃないかと思いました。オリパラはゴールではなく始まりだったんだと改めて感じました。True Colors Festival自体はずっと東京を中心にやってきましたが、僕の中ではいつか「全国に届けたい」という思いがありました。全国で開くことで、関わった人たちの心の中に花が咲くんじゃないか―。僕らがやるべきプロジェクトは、そんな種まきのようなものなんじゃないかと思い、どこか使命感をもって取り組んでいます。
――――この取り組みを通じて、どんなことを全国の人に届けたいと考えているんですか?
森下ひろき このFestivalの背骨には、パフォーミングアーツという表現があります。言葉が通じなくても、国籍や文化が違っていても、身体の特徴が違っていても、パフォーミングアーツという表現で笑ったり、涙を流したり、励まされたり、あらゆる違いを超えて伝えられるものがあります。それは、言葉という言語を遥かに超えたコミュニケーションがあります。それを感じていただきたい、そう思っています。

キービジュアル(提供 True Colors Festival)
――――キービジュアル、砂浜を走るバスのわだちに色とりどりの花が咲く様子が印象的ですが、これが意味するものとは?
森下ひろき 僕たちは、True Colors CARAVANという「種まきの旅」だと思っています。パフォーミングアーツや実際に障害のある方たちの考えに触れることで、関わった皆さんの心のなかに芽が出ると思っています。種をまいてもすぐに花は咲かないけど、大切にする、水をあげ続けることで、やがてきれいな花が咲くと信じています。その花は何色の花なのかはわかりませんが、きっと素敵な花が咲くと思っています。この轍に咲いた花は、皆さんの心です。是非、このプロジェクトに注目いただき、関わって誰かに伝えていただきたい。そうしていただくことで、たくさんの花が咲くと信じています。咲かせていきたいです。

6月 広島CARAVANの様子
――――実際に名古屋や広島で開催して、各地でどんなことが起きました?
森下ひろき 東京で作った、完成したものをもってきて、見てもらうというのは違うと考えています。地元の方々とつくりあげる、最後完成させるのは地元の方々。そんな、一緒にやるというプロセスを踏んでいます。その一つとして各地域では、本番前日に地元の方々とダンスのワークショップを行っています。もちろん、そこがはじめましてとなるわけなので、いろんな壁があるんです。でも、同じ空間で、身体を動かして、自分をさらけ出し、相手を受け入れることでその壁は一瞬でなくなります。そして、その皆と翌日の本番でステージをともにするんです。パフォーマンスのリーダーであるDAIKIは全会場で泣いています(笑) 確実に。きっと今回の札幌も涙します。先日、広島でご一緒したI4P(アイフォーピー)の皆も泣いていました。それを見た僕も泣いていました。短い時間ですが、あらゆる違いを超えてひとつになる。つながったことを感じる瞬間でもあります。
会場に集まった方が参加する演出も施しているので、気がついたらステージと観客ではなく、一つになる感覚がえれられるのではないかと思っています。

――――札幌でのステージではどのようなパフォーマンスが予定されているのですか?
森下ひろき 札幌には、パラリンピックの開会式で光るトラックに乗ってさっそうと登場してきた盲目のロックギタリスト 田川ヒロアキさんが登場してくれます。実は、CARAVANのコンセプトムービーのために作曲した音楽は超ロックなんです!リハーサルで僕たちのテーマソングに田川さんのギーターリフがのってきた時、鳥肌が立ちました。ぜひ、間近で見ていただきたいです。

田川ヒロアキさん
森下ひろき そして、忘れてはいけないのはスクール・オブ・ロックの「ソーシャルロックス 課外授業」です。教頭のぺえさんは東京からずっとご一緒いただいていて、毎回印象的な黒板を書いてくれるんです。黒板とは、トークステージの最後に今日思ったこと、感じたことを黒板に書くシーンがあるんです。
さらに、僕が大大大ファンのとーやま教育委員です。以前、別のプロジェクトで全国行脚したこともあり、本当に大ファンです。
そして、皆さんお待ちかねは山之内すずちゃんだと思います。どんなトークが展開されるのか今からとても楽しみです。
――――最後に北海道の皆さんにメッセージをお願いします。
森下ひろき 実は、2021年に日本財団が行ったダイバーシティ調査で「現在住んでいる地域には、D&Iを前向きに捉えようとする流れを感じるか」という項目があったのですが、なんと北海道は最下位だったんです・・・。今回の僕たちの使命は、北海道の皆さんの心を掴み、動かしてD&Iを前向きに捉えていただくこともあります。
でも、まずは難しいことは考えず、目の前で起こるパフォーミングアーツを見ていただきたい、感じていただきたいと思っております。ココロの中に花が咲く瞬間に出会えると思います!17日(日)アカプラでお待ちしております!!
※当日、天候次第ではプログラムを縮小し、トークイベントを中心に変更する可能性があります。最新情報はTrue Colors CARAVANのTwitterでご確認ください。
札幌のステージに登場する
CARAVAN Performers

True Colors CARAVANのために結成されたパフォーマンスユニット。「CARAVAN Performers」は7人+各公演のスペシャルメンバーで構成されます。
≪札幌開催 ※敬称略≫
日本人初の低身長症クランパー / DAIKI(リーダー)
車椅子ダンサー・サーカスパフォーマー / かんばら けんた
耳の聞こえない(にくい)ストリートダンサー / かのけん
バレエダンサー / Eri
フリースタイルダンサー / テコエ 勇聖
ダウン症候群と生きるヒューマンビートボクサー / HARUKI
車椅子DJ・ファッションジャーナリスト / 徳永 啓太
全盲のロックギタリスト/田川ヒロアキ(札幌スペシャルメンバー)
取材後記
True Colors CARAVANは東京2020オリンピック・パラリンピックを前に始まった取り組みが発展したものです。あの東京大会からもう1年になるんですね。
私もNHKの東京パラリンピック放送に携わりました。
放送に携わりながら、人々の意識に変化が起きていることを感じました。
大会を通して確かにまかれた種。
それらを大切に、かつ確実に育てていくことができれば、パラスポーツの世界をはじめ、社会にも小さな気づきと変化の連鎖が起きていくと思います。
その重要性に触れたり気づいたりするために、キャラバンは多くの人が混ざりあえる場の実現を掲げています。
その証がHPに。

細かく書かれたアクセシビリティです。
誰でも参加できる仕組みを当たり前に整える。
決して特別なことでなくなる社会になってほしいですよね。
将来振り返った時に、潮目になるかもしれない。
そんな期待を込めて、札幌でのCARAVANを多くの人に体感してもらえればと思っています。
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※インタビューの内容は15日(金)の「ほっとニュース道央いぶりDAYひだか」の中で放送予定です
2022年7月15日 瀬田宙大