NHK札幌放送局

ほっとニュース通信(51)【瀬田宙大】

瀬田 宙大

2019年3月14日(木)午後5時00分 更新

3月11日、映画監督の白石和彌さんへのインタビューを放送しました。視聴者の方から「北海道についての話など、もっと聞きたかった」という声が届いたのでこちらで少しだけ。

実はわたくし、「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭」の審査委員長になるまでは白石監督が旭川出身のどさんこだとは知りませんでした。作品はこれまでにも拝見していただけに情けなさと、驚きとが交錯しました。

インタビューを伺ったのは3月8日。
まず幼少期、白石監督がどのように映画と出会ったのか、そして、最後の冬開催となったふるさと北海道での映画祭にどのような思いをお持ちなのかについて伺いました。

瀬田:子ども時代から映画は好きでよくご覧になっていたんですか?

白石監督:うちの祖父母が定食屋をやっていて、その定食屋の前がバス停だったんですよ。バス停だと人が集まるので、よく映画館が「ポスターを貼らせてください」と来ていたんです。お店の前にポスターを貼ると、招待券をもらえるんですね。子どもが見られそうなものは連れて行ってもらって、人よりは映画館で観る映画の本数は多かったです。

瀬田:監督の作品を観たことがあると、子ども時代どのような映画をご覧になっていたのかがきになるのですが…

白石監督:貼られていた映画が洋画系だとかだったので、当時はブロックバスター映画が多かったので「バック・トゥ・ザ・フューチャー」だとか当たり前にそういうのを観ていました。邦画も割と見ていましたよ。

瀬田:やはり幼いころから映画、映画館に親しんでいたのが…

白石監督:今の仕事のひとつのきっかけとしてあったかもしれないですね。

瀬田:映画祭はことしで冬の開催が最後。その区切りの映画祭に審査委員長として参加できたことはどう感じていますか?

白石監督:ゆうばり映画祭=寒い中でやっているというイメージがあったので、最後にギリギリでしたけれども参加できたのはよかったなと思います。暑い時期の映画祭というのもまたどういうふうになるのか、それはそれで楽しみですけれども寂しい部分もあるとは思います。

瀬田:寂しさ、具体的には?

白石監督:30年やっぱりこの同じ環境の中で夕張市が財政破綻しても、有志が何とか民間でお金と知恵を出し合って、それでも冬にこだわってきたというある意味、歴史みたいなものがあって、それを大きく変えなきゃいけない時期に来ているというのはよくわかるんですけれども、その頑張ってきた思いも引き継いでもらいたいなという思いもあっての寂しさですね。オープニングで、お帰りってなかなか言えない言葉というか、何度も参加している人たちは「またここに戻ってこれた」という温かい思いをするのではないかなと。そのお帰りという感じも、冬の方が効くのではないかな…などなど。でもそれはそれとして、来年からは新しい一歩を踏み出していくということなので、夏の開催となれば野外などオープンな中で上映会をすることもできるので、いいチャレンジ。頑張ってほしいなと感じています。

初めての参加となった今回の映画祭。オープニングセレモニーで白石監督は、オープニング上映される韓国の映画についてのコメントの中で「シンポジウムなどを開いて映画界にある問題を話し合う場を映画祭に設けてみてはどうか」とアドバイスをする一幕も。どのような思いがあったのか、詳しく知りたいと思いこの点についても詳しく伺いました。

瀬田:シンポジウムがあってもいいのではないかと発言されていましたが、考えや問題意識を共有する場があった方がいいということですか?

白石監督:あいさつで別の方も仰っていましたが「罪を憎んで映画を憎まず」というのも意見としてはあると思います。でも、当然逆の意見もありますよね。過ちを犯した人の作った映画をどんなことがあっても、被害者がいる中でかけちゃいけない。それは韓国だけではなく、今の日本の映画界を取り巻く状況もそういうことがすごく起きていると思うんですよ。例えば、何か事件を起こした人の映画でその人が出ていた過去の作品まで見せないようにしようという流れがありますよね。でもその是非というのは、別にガイドラインがあるわけではなく、それぞれの会社が自分たちの思いでやっているんですけれども、それってどうなのかということはおそらくあまり議論されてきていないと思うんです。例えば、そういうことを議論する場が映画祭にあってもいいと思うし、映画祭は単純に映画を上映して楽しむだけではなくて、せっかく映画人や一般の人や映画に興味を持っている人が集まるので、映画祭がそういう役割を果たすのもいいのではないかなと思いますね。

瀬田:SNSがこれだけ隆盛を極めている時代、そうした問題の是非を個々人が発信していることからも、議論をする場を映画祭が用意するというのは歓迎されるかもしれないですね。

白石監督:あると思います。今すごく重要な問題だと思いますし、なかなか答えが出る問題でもないと思います。もちろん誰かを傷つけたりとか、そういうことが起こらないのが一番ベストなんですけれども、なかなかすべてをコントロールするということは残念ながらできないですし、問題が起きてしまったときに過去の名作が二度と見ることができなくなるのは、文化としての損失だと思うので、その点について議論する余地はまだまだあるんじゃないかなと思うんです。その役割の一端を映画祭が担えると、それはすごく素敵なことだなと思って、アドバイスとして提案してみました。

そして最後に、映画館で映画を観る楽しさを白石監督に伺いました。キーワードは“10.5倍”。

瀬田:どこでも映像を見られる時代ですけど、やっぱり映画館という特別な場所で観る映画には違う力があると感じていますか?

白石監督:映画って出来上がったものをただ流しているんじゃなくて、やっぱり映画館の良さって知らない人と隣り合わせて否応なく見ることになるが、それこそが面白いんです!映画は実はライブなんだと僕は思っていて、隣でげらげら笑ったりとか、ここで笑うんだとか、実はいろんなことを学びながら観ているんですよ。そういう意味で、満席の映画館で観る映画はガラガラよりも僕の感覚で10.5倍くらい面白くて、その感覚をいろんな人に知ってもらうことが、映画館に足を運びたくなる人が増えることにつながるのかな。あと音の環境も特別で、自宅ではなかなか再現できないんですよね。いろんな人が映画館に足を運んでくれればまた小さな映画館が街のどこかに生まれたりということができるといいなと思うんですけれども。期待したいですよね。

白石監督が今後どのような映画を製作し、世に何を問うのか。映画を愛し、作品やクリエイターへの優しに溢れた人柄にふれ、ますます楽しみになりました。

それでは、また。


(2019年3月14日)


関連情報

ほっと通信(72)【瀬田宙大】

瀬田 宙大

2019年9月6日(金)午前10時33分 更新

ほっとニュース通信(35)【瀬田宙大】

瀬田 宙大

2019年1月7日(月)午後5時42分 更新

ほっとニュース通信(13)【瀬田宙大】

瀬田 宙大

2018年6月28日(木)午後0時00分 更新

上に戻る