NHK札幌放送局

ほっと通信(106)【瀬田宙大】

瀬田 宙大

2020年4月27日(月)午後1時54分 更新

1月末、札幌市で菓子店を営む柴田愛里沙さんから連絡をもらいました。「非言語×映像で北海道のホンモノの魅力を伝える取り組み、取材してもらえませんか」と。以前取材でお世話になった富山浩樹さん(詳細は過去ブログBOSAI POINT元気です北海道)がYouTube「愛里沙の北海道暮らし」をSNSで紹介しており、私も視聴していました。その世界観に魅了されていたことから、放送でお伝えするタイミングを探っていました。コロナ禍の暗鬱な日々に光を届ける、一服の清涼剤となることを願ってお伝えしました。

【動画配信は菓子店の延長線上】
動画を企画、配信しているのは札幌市で菓子店を営む柴田愛里沙さんです。「誰もが安心して食べられる」「みんなが同じ食卓を囲める」をテーマに、アレルギーや宗教に対応したお菓子を製造・販売しています。愛里沙さんは、菓子店のほか、料理教室も開いています。みずから生産者から集めた食材を使い、北海道が持つオーガニックな食や土壌への興味を想起させることを目指してきました。その延長線上として、今度はその魅力を映像にまとめ配信することで全世界の人に北海道の本質の魅力を届けたいと考えました。愛里沙さんは「オフラインとオンラインの両輪で私が生まれ育った札幌、北海道の魅力を多くの人と共有したい」と話していました。

映像で地域の魅力を伝える…とだけ聞くと、これまでにもあったように感じるかもしれませんが、一度映像を見ると愛里沙さんと北海道が織りなす心地よい世界観に驚くと思います。

愛里沙の北海道暮らし」は北海道の食と自然、暮らしの魅力をナレーションなしのショートムービーで伝えるチャンネルです。ことし1月に配信をはじめ、これまでにおよそ40本を投稿してきました。最も多いもので再生回数は16万回を超えています。

私たちが取材にお邪魔した日は、鹿肉を使ってスパイスカレーとオハウをつくっていました。動画投稿サイトで5月1日(金)配信予定です。

なぜ鹿肉を使ったのか。
愛里沙さんの答えは明確でした。

札幌市商工会議所がSNSやHPで新型コロナ経済対策掲示板『緊急在庫処分SOS!』という取り組みをしています。北海道物産展とかに出店する予定だったところが、コロナのせいで中止になってしまって皆さん困っていたので、参加している企業さんの中で、食材の行き先に困っている方がいれば私が調理をして紹介させてもらいたいと相談しました。

愛里沙さんはひとつひとつに明確な答えをもっています。意味があるんです。話をすればするほど彼女の視点や見ているもの、見ようとしているものが理解できてとても楽しい時間でした。そんな愛里沙さんを取材していて、私が特に印象に残ったのは2つのリアルです。ひとつは、愛里沙さんが伝えたいという北海道のリアルへの思いと、マレーシア在住のジュニタさん(Junita Jaafar)が語ってくれた世界のリアルでした。

まず、愛里沙さん。北海道のリアル、つまり“ホンモノ”を伝えたいという思いを聞きました。

瀬田
映像コンテンツづくりで大切にしていることは何ですか?

愛里沙
北海道の食は凄く丁寧につくられていて、手間暇もかかっているじゃないですか。自然も、歴史とか文化とか伝統とかが背景にあるので、そういったものを表現するのであれば、自分も手間暇かけて、ごまかさないで映像を作ることが求められているなと思っています。ホンモノを取り上げるんだからちゃんとつくりたいということです。

瀬田
北海道発にするから、ホンモノを出したいということ?

愛里沙
そうですね。北海道が持つ、大地のオーガニックなイメージだとか、すごく厳しい冬の天気だとか、そういう深いところの魅力を伝えるにはやっぱりごまかさないで手間暇かけるというのが大切かなと思っています。

瀬田
面白いと思ったのがナレーションをしないこと。理解を促すならあった方がよくないですか?

愛里沙
収穫から調理、完成と一貫してご紹介していますが、これらはあくまで北海道を伝えるためのものであって、作り方動画=How To動画にはしたくないんですよね。説明を増やすと、見ている人はどうしても料理の作り方にフォーカスしちゃうと思うんです。そうなると素材の魅力とか、作っている雰囲気とか大切にしたいことが伝わりにくいかなと思っています。私はなによりも「」と「自然」と「暮らし」を感じてほしいんです。だから切っている時のサクサクという音とか、コトコト煮ている時の湯気の感じだとか、そういったものに意識を向けてほしいという意図があります。

そして、北海道の暮らしや文化に興味を持ち、北海道に訪れたこともあるマレーシア在住のジュニタさん。インターネット検索で愛里沙さんの動画を知ったと話していました。今回はテレビ会議システムを活用してお話を伺いました。ジュニタさんはマレーシアの現状と、この動画がいまの暮らしにどのような光をさしてくれているのかを教えてくれました。

瀬田
いま、マレーシアの新型コロナウイルスはどういう状況ですか?

ジュニタ
(ロケをした今月11日時点で)4000人以上が感染している状態ですが、1800人前後が回復傾向と言われています。ただ悲しいことに70人ほどが新型コロナウイルスが原因で亡くなってしまいました。いまかなり厳しい施策がとられていて、外出は制限されています。買い物も必要なものを買う時だけ、家族で1人だけが許される状況です。

瀬田
そうした中で、愛里沙さんがつくっている動画はどんな気持ちにさせてくれますか?

ジュニタ
誰もが家にいなければならない状況ですが、「愛里沙の北海道暮らし」を見る事で、気持ちだけでも北海道に戻る、そんな感覚を得ることができます。私が特にすばらしいなと思うのは、映像で表現しているように、何もない状態から何かを生み出すっていう事と、北海道のすばらしさ、とりわけ冬のすばらしさを感じられることです。

瀬田
このコロナが終息した際にはまた北海道に来たいって思ってますか。

ジュニタ
もちろん北海道が大好きなので、また絶対行きたいと思っています。北海道という場所を、私、そして私の身近な人たちの第二の家のような場所にしたいと思っているので、終息さえしてくれればすぐにでも行きたいと思っています。

瀬田
配信されている動画の中でも特に好きなものはなんですか?

ジュニタ
最近、特にいいなと思ったのは手作りマスクです。マレーシアでもマスク不足は問題になっています。その解決策としてすばらしいなと思いました。あと、手作りマスクの動画だったり情報はたくさんあるんですが、機械を使わないとできないものや、複雑な工程のものがたくさんあります。その中で、愛里沙がつくっているマスクはすごくシンプル、簡単に作れて、なおかつ可愛い。しかも、家族で楽しめるアクティビティーになっています。いまは子どもたちが外に出られない状況なので、家族で過ごす“おうち時間”の大切な要素になっています。

言語にとらわれず、映像だけで理解できるようにという愛里沙さんのこだわりが結果として助けになっていると聞いて、私も嬉しくなるインタビューでした。ジュニタさんありがとうございました。それぞれにコロナと向き合う日々、頑張っていきましょう。そしてまた、落ち着いた際には北海道にお越しください。

海外からも注目が集まる愛里沙さんの動画。いまも週2本のペースで配信を続けています。そこには「こんな時だからこそ、せめて映像を通じて北海道を近くに感じてほしい」という思いがありました。

コロナの影響で、海外の人が北海道に来たくても来れないじゃないですか。そういう人が多い中、自宅に閉じこもっているのであればその時間に北海道をちょっとでも感じてほしいなという思いがあります。そして将来、この状況が落ち着いたときに、北海道に来てくれる人が増えるように、お手伝いが出来たらいいなと思って頑張っています。いずれ落ち着いたら、北海道に実際に来てもらって、自然だとか、食を心底楽しんで頂けたらと思っています。今はこれを見て北海道を疑似体験して頂き、北海道への思いを温めておいて欲しいなと思っています。

この取り組みは自らを育ててくれた北海道への恩返しでもあると話す愛里沙さん。言葉の端々に大地への感謝と、北海道のために働くすべての人への敬意を感じました。だからこそ自分も脚色せず、広告的にならないように北海道のホンモノの魅力をありのままに伝えることに力を注いでいるのだということがわかりました。今後も続く、彼女の挑戦が楽しみでなりません。

それでは、また\| ・vvvv ・ |/


(2020年4月27日)


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