NHK札幌放送局

ほっと通信(89)【瀬田宙大】

瀬田 宙大

2020年1月30日(木)午前11時02分 更新

ローカルフレンズの中西さんと佐野さんが今夜紹介してくれるローカルクリエイターは、東京オリンピック・パラリンピックのメダルケースを制作している津別町 山上木工の三代目、山上裕一朗さんです。

山上さんは7年前にふるさと津別町に戻り、家業に入りました。

いまは今年開かれる東京オリンピック・パラリンピックのメダルケース5000個あまりを製作中。忙しい中で迎えてくださいました。(※今回は特別な許可を得て撮影させていただきました)

訪問時は、そのオリンピックメダルから山上さんが津別で実現したい夢まで、ものすごい熱量で教えてくれました。

~以下、敬称略~

山上
僕らとしてはメダルケースを早く完成させて、選手に届けられるようにしたいと思って、急ピッチでやってます。

瀬田
ことし1月、ほっとニュース北海道でお伝した時、山上さんは凄いなと思ったのが『技術があれば地方でも世界と戦える』という信念。本当にその通りだよなって思って。

山上
実はその話、ゆっくりしたいんです!僕まさに、拓郎くんとか佐野くんとか、同じ気持ちで活動するクリエイター仲間がオホーツクにはたくさんいて、おそらくみんなそう考えていると思うんです。田舎だから逆に強みがあるんじゃないかって、僕らは感じてるんです。だから、都会でやる方たちも頑張ってる人はたくさんいるんですけど、こういう何もないところをうまく利用すれば、土地だって安いし、食べ物はおいしいし、何をするにも環境が良かったりするわけなんですよね。しかも、人が少ない分、こういう案件があれば、みんなに喜んでもらえて、楽しんでもらうことができるっていうのは、仕事に対する幸福感も、ある意味で倍増するっていう感覚はありますよね。

全員
たしかに、たしかに。みんなで喜べば、自分事になるっていう。

山上
隣町・北見の拓郎くんとかだって、僕がこういう案件とったときにメチャクチャ喜んでくれたし、非常に愛を感じますね。オホーツクの。

中西
うんうん。これも、グローカルですね。

瀬田
グローカルですね。

中西
本当そうっすね。オホーツクから世界へを公言しているのが山上さんの木工会社。ずっと言い続けてたら叶うんだと、夢みたいな話でも努力し続けたら目標は達成できるんだなと。加えて、こうして多くの仲間がいますから、どんどんローカルからエネルギーをこめて発信していきたいなと、いま話してて思いました。うん。

瀬田
就職活動中に口にしていたグローカル、実は長く忘れていたんです。でも、山上さんの取り組みをスタジオで見ながら「あっ、これ!」てパッと思い出したのが、グローカルだったんですよね。でもグローカルって言っても放送では十分に思いを伝えられないと思って、「地域の可能性を示し、それが津別・オホーツクのレガシーになる。選手の皆さんには栄誉とともに津別の職人魂も大切に持ち帰って、世界に広めて欲しい」という趣旨のコメントをしたんですよね。

山上
僕、放送を見ていて最後に頂いたコメントの内容がすごく嬉しかったです。すごいあの言葉、僕も突き刺さりましたし、そういう風にみてもらったってわかって嬉しかったんです。本当にありがたかったし、そういう風に響いてくれる仲間が、あの放送でさらに広がってくれたら嬉しいですよね。

山上
こちらは工場のすぐそば、旧活汲小学校です。少し前まではここに子どもたちが通ってたんですけども廃校になり、5年前から我々が利用させていただいています。そして、2年前に「ツクール」という場所としてオープンさせました。この中もぜひご案内したいなと。僕らはもともと建具屋で、おじいちゃんのときからやってた仕事でもあるんですけど、扉とか窓とかそういうものを作ってきたんですよ。その技術も生かして整備しました。

瀬田
工場は木のいい香りがする働く場所でしたけど、こちらは木をふんだんに使った素敵なショールーム。製品の魅力が良く伝わる明るい空間ですね。

山上
ありがとうございます。簡単に説明させていただきます。「ツクール」という場所なんですけども、オホーツクはロシア語でOKHOTSKと書きます。で、TSKを取ってツクールですね。もともと学校ですから、スクールですね。あと我々はもの作りをしてますから、物作り。これらをかけて「ツクール」という名前をつけてます。入り口でも申し上げましたように、私は建具屋の三代目ですから、TSKOOLのO二つは扉をイメージして、しかも開かせた形にしてるんです。津別町は人口4600人の小さな町なので、この場所に人を呼び込みたい、そういう思いでロゴにしたわけです。キャッチコピーにもある通り、スクールが、ツクール。とか、まちのあしたもツクール覚悟とか、そんな思いです。

瀬田
それって学校時代のやつ?

山上
まさにそうです。活汲というは、活かすと書いて、水を汲むんですね。まさに、この活かすというのはこの場所を活用して、津別町に人を呼びこむ。関係人口づくり、そういうきっかけづくりとなる。そんなシンボリック的な意味もあるので、この場所に飾らせてもらっています。では、奥に進みましょう。

山上
こちらの空間が、メインのショールームです。我々の椅子は、いま全国で60店舗。あと香港とフランスにも輸出をしてまして、年間で1200脚くらい生産している主力商品になります。で、座り心地なんですけど、座ったときにおへそを貫通させた位置に第三腰椎というのがあるんですけども、もしかしたら背中よりも高めに感じるかもしれませんが、最も評価をいただいているこの椅子に座っていただくと…

瀬田
おー、安定しますね。

山上
これが本当に、人間工学的に考えられた椅子なんです。まさに第三腰椎を抑えているか、抑えていないかが非常に重要なポイントになります。結果、体にあってるか、あってないかということになります。

瀬田
ちなみに中西くんと佐野くんは、この中でお気に入りとかあるんですか?

中西
…あんまり大きいこと言えないです。だって持ってないから。恥ずかしい話(笑)

山上
値段的なところは4万円から10万円するんですけど、こだわって作っているんですよね。座面の裏とかも完璧な仕上げなんですね。触るとわかるんですけど、表も裏も同じ仕上がりにしているんです。最新機械とベテランの職人技の融合で量産しているわけなんです。大手さんのやる量産、要は大きな工場の考え方と、一人でやってる工房さんたちの考えの間を取ったところを私たちは狙っていきたいなという風に思って、こういう細かいところまで気をつかってやっています。

瀬田
さっきの工場でね、みなさん、椅子できあがったのを一生懸命磨いてらっしゃったじゃないですか?あれだって手作業じゃないと絶対にできないですよね。

山上
そうなんです。職人力と機械力のバランスと共存がめちゃめちゃ重要なんです。忙しくなったら拓郎くん、メダルケースの研磨手伝ってもらいたいなぁって(笑)

中西
飛んできます。なんでも!でも、冗談と分かっていてもメダルは難しいので、とりあえずご飯の買い出しとかならやります(笑)

山上
こういう感じのショールームがツクール1.0なんですけども、夢はまだまだあるんです。それがツクール2.0。テーブル用の一枚板を実際にお客さんに買ってもらって、この奥に工作室があるんですけれども、工作室で半年とか1年間かけて一緒にテーブルとか、自分で作りたいモノを作りあげていくような本格的な木工教室をやりたいなと思ってるんです。津別にまた人がきて、泊まってもらって、それが2.0の構想だったりするんですね。それをやって、3.0というのが入り口の奥のスペースでカフェ的なことをやりたいんです。やりたい人に場所を提供して、学校のグラウンドが駐車場。お客さんに食事を楽しんでもらうような場所も作っていけたらなと思ってます。そして、将来的には製造工程なども含めてお客様に見学してもらえるようなこともしていきたいですね。繰り返しになりますが、津別は人口4600人の小さな町ですから、人を呼び込んできっかけづくりみたいなのが必要だと思うんですよね。僕らは観光をやっているわけではないのであれこれできませんが、木工教室だったらできる。そして、人が津別に集まる仕組みを作れるかもしれない。町内にはいまゲストハウスができる動きもあり、コワーキングスペースもできて人が集まる場所がけっこう増えてきているんです。そうなるとここで木工教室を楽しんで、夜はそこで泊まってもらって、次の日は農家の体験してもらったり、雲海を見に上里地区に行ってもらって、津別で数日楽しめる。そんな夢を持っています。そういうところで横のつながり、連携して関係人口増やすきっかけづくりを地域のみんなとやっていきたいなというのが、僕の夢。きっと近い将来、これは確実にできるなと思ってますね。人口は増やせないですよ、小さな会社だから。僕らはたくさん雇って増やすことはできない。でも関係人口なら増やせる気がします。自分たちの動きだったり、魅力だったりをしっかり見せていけば可能だと信じてます。

瀬田
そういう意味では、東京オリンピックのメダルケースの山上さんというのは大きな狼煙になりますね。しかもその山上さんの木工会社の協力を受けて、自分の手で、一生ものの家具を作れるとなると、津別がさらに面白くなりますね。

山上
はい。津別に来てもらえたら、まずはすごくうれしいです。こういうアイデアは、拓郎くんや佐野くんに色々教えてもらったり、情報くれたり、地域を超えて人と人を繋いでくれたりが大きいんです。気がついたら津別を飛び越えて、まさにオホーツクだったりとか、大きなエリアで完全に一体化しているように思います。これからも津別だけじゃなくて、他の市や町だったりでこんな空気がどんどん起こってくれたら、非常に面白い場所ができてくるんじゃないかなと思います。

瀬田
中西くんがずっと言っていた、一つの町ごとに境界線がはっきりしてるのがもったいない。でも、グラデーションで繋がったら新しい価値が生まれるんじゃないか。まさにそういうことですね。

山上
そういう考えを拓郎くんから教えてもらって、ぼくは乗っかりたいと思っているんです。まさに本当に面白くなってきていますよね。オホーツクという、都心から遠いからこそ情報もあまり届いていないいわば未開の地が、道東という未開の地が、これから先はものすごく面白い場所になると僕は思ってます。

佐野
なかなか離れて住んでて、接点もない感じだったのが、拓郎さんだったりみんな、あちこち走り回っている人たちを介して繋がったりすることでいろんな情報が回ったりとか、それでお互い知り合いになって、気にするようになって、距離は離れてるけど心は近く!みたいなのが出来てきてる。最近出来てきたなっていう感じですよね。

山上
まさに拓郎くんのドット道東という団体が目指すところですよね。まさに僕たちプレイヤーたちはドットだったんだけど、拓郎くんたちがまとめてくれつつあって、これがきっと大きなムーブメントになる。なりつつあると思うんだけどね。

中西
行きましょう!笑

瀬田
この数年の出来事、みなさんの実績を考えると、ここからまた三年経ったら、今度はぼくら取材とかじゃなくて、なんか一般の人がこの道を歩いているという可能性ありますもんね。それをやろうとしているわけですもんね。

山上
だからそのためにいっぱいお金をちゃんと儲けて、この場所をリノベーションしたり機械を買ったりしたいんです。なんだかんだお金は大切なので、体制を整えていきたいなと思ってます。

瀬田
こういうのって、善意でやっちゃうとどっかで、折れちゃうじゃないですか。ちゃんと儲けるのって大事。だって未来への投資もできないから。持続可能性を考えると大切なはずなのに、それってどこか言いにくい社会だよなと。

山上
そんな空気ありますよね。あの一応言っておくと、うちの会社まったくお金ないんです。なぜなら儲けたお金は次のプロジェクトに完全にいっちゃうから。まさにツクール1.0で頂いたお金は、全て次の夢に。その前に、改修しなきゃいけいないところいっぱいあります。まだまだ修繕もかかるので、正直なところはツクール2.0、3.0にはまだいろいろと思い至らないところも結構あるのが正直なところです(笑)

中西
でもね、ずっと一緒に頑張ろうと、知り合った時から言い合っていたんですけど、みんなそれぞれに進んで、形になってきているというのは、自信になるし、嬉しいですよね。

山上
まさに、数年前はこんな取材なんてされたことなかったわけですよ。実際そうです。新聞に載ることもなかった。載ったら、それこそなかなかな大ごとだった。

中西
そうですね。同時多発的に。それがまた影響しあってますよね。

山上
彼たちみたいな存在が、オホーツクにいるっていうのは本当に大きいことだと思いますよ。

中西
お互いにじゃないですか。思うのは、肯定されるとか、背中を押してもらえるとかって、母数が少ないからこそ、なかなか難しいということがある。だからこそ、同じ思いを持った人が、業種とか年代、拠点が違っても関わりあっていくというのが大事なことかなと思っています。

瀬田
テレビの画面を通して見るだけだと、メダルケースが一つの集大成、完成形っぽく捉えてしまっていたけど、話を聞いてみると夢のスタートなんですね。この先の、あくまで入り口というか。

山上
そういう感じですよね。もちろん特別ですよね。でも一方で、僕たちにとっては数ある中の一つのプロジェクトだったりするわけです。大事なのはこれをきっかけにどうしていくかってことかなと。

瀬田
2020の先が、すごく楽しみですね。

山上
安心してください。カマしますから。

全員
(爆笑)

山上
ほんとに「カマす」っていうこと、ぶち上げていくということをみんなで、オホーツクみんなで、年齢問わずやっていく。その思いです。あともう一つだけ話してもいいですか。僕たちはUターンで戻ってくるときに、どういう大人たちがどういう仕事をしてるかって、あんまり知らなかったんですけども、いまはこういう時代ですから、簡単に情報って得ることができるじゃないですか。僕たちがやってる実績とかしっかり子どもたちに伝えて、外に出ても戻ってくる場所がある。自信を持って戻ってきたいと思える場所があると、戻ってきてもなんとかなりそうだなと思ってもらいたい。それで、僕たちよりも若い子たちに「俺の方が先輩たちよりももっと面白いことできるんじゃないか」っていうような思いを持って帰ってきてもらって、志の高い、若い人たちが増えていけば嬉しいですよね。ローカルでも挑戦できる時代ですから、まずはやっていく仲間がさらに増えればなぁと思うわけですね。

瀬田
正直な話、一昔前までは「地方」ってあんまり良いイメージで語られないというか、言葉自体が持つイメージも当たり前に中央と比べらて、それ以外みたいな感じがあったじゃないですか。

山上
ありましたねー。

瀬田
でも、これからはちょっと違いますよね。

山上
まったく違います。拓郎くんと前も話していたんですけど、将来こうなればいいなと思っていることがあるんです。「まだ都会に住んでるの?」と。こういう極端な言い方は都会の人に大変失礼ですけど、心としては田舎がかっこいい、田舎暮らしは楽しいね、イケてるね。そんな思いをみんなに持って欲しい。選択肢に入れて欲しい。そういう場所にしていきたいんです。

中西
そこでしかできないことができたら、すごくいいですよね。

山上
僕もいろいろ言いながら都会に憧れて外に出ました。東京に出て、名古屋の方に出て、正直田舎は不便なことが多いというネガティブな気持ちも強かったんですけど、外に出てから田舎の良さを心の底から感じて、同時に強みも感じました。自分たち津別に住む人たちが、津別のことを好きじゃないと、他の人はたぶん、津別いいねとは言ってくれない。自分たちが「最高だよ津別!」っていうことをしっかりみせていかないといけないし、それがあれば人が集まってくるんじゃないかなと思うんですね。いろいろ語りましたけどひとつひとつ実現させたいですね。

瀬田
それがオホーツクモデルとか、道東モデルとか言われるようになったらかっこいいですね。で、「それを作ったのが僕たちです」ってみんながこの椅子に座りながら自慢してほしい。

全員
成功者!!(爆笑)

瀬田
でも、地域にいてもそれくらいのゆとりが生まれる。そんな暮らしがイメージできると本当はいいですよね。心のためにも家族のためにも。

中西
そうならないと、後にも続かないですからね。

瀬田
一瞬の憧れとか、瞬間風速だけ高まっても意味がないっていうことですよね。

山上
まかせてください。かましますから!!!(笑)

オリンピックのメダルケースで多くの注目を集める山上さん。それを請け負うことができる確実な技術力と、テキストでは伝わりきらない熱量はぜひ今夜の放送で。ほっとニュース北海道は今夜も午後6時10分からです。

それでは、また(^^)/


(2020年1月30日)




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