NHK札幌放送局

宗谷プチ滞在 DAY2

瀬田 宙大

2021年4月20日(火)午後2時17分 更新

❝個人的には世界遺産並みのポテンシャルがこの村にはあると思っています❞そう語るのは写真の中央、猿払村在住30年、宗谷育ちの佐川康雄さん。「猿払の釣り名人」と聞いてお邪魔しましたが、実際は「自然を愛する守り人」でした。驚きと発見に溢れた猿払村でのロケ初日の記録です。   

バス旅も満喫

朝9時39分。

稚内駅前のバス停で音威子府村行きのバスに乗車。バス待ちをしていると「あまり事前に打ち合わせしていないのでどうなるかはわかりませんが、楽しみましょう!」と滞在ディレクターの流儀をサラッと伝えてくる越村D。出会い旅時代以上にロケ感がありません。いいね!!

乗車後しばらくすると、車窓からの景色に驚かされます。

あれ、乗ったのバスだよね?船じゃないよね?

海沿いを走る宗谷ヒストリーロードからの眺めです。すごくないですか?ひとり感動していると、越村Dがおもむろに語りだします。「白波がたっているあたりより手前、このあたり浅瀬になっていて、干潮時には干潟がはっきりと見えるんです。夕陽の時間帯にここを通るとサンセットのきらめきが最高なんですよね」・・・なに、見たってこと?そんなこと言われたら見たいじゃん。でも、見るチャンスあるかしら。3週間も滞在すると当たり前にそんなことが言えるようになるのね!そんなことを心の中で呟く私に対して、越村Dは「一か月いても正直、時間が足りないんですよね。なんでも一人でやるので大変ですけど、宗谷滞在、めっちゃ充実してますね」と続けます。そこまで言わせる宗谷の底力。そして、そこに生きる人たちの魅力のすさまじさを感じることができました。それにしても滞在ディレクターの言葉は説得力が半端ないです。

そうこうしていると有名なモニュメントが出現!!

宗谷岬の突端を示す碑です。

バスの窓越しに撮影しました。数枚撮ったあと、カメラをしまった瞬間にバスが出発。もしかして私が撮影終わるのを待ってくださっていたんですか?!感動しました。バスの運転手さんのホスピタリティも最高です。あったかいな~。ここまでの写真でお気づきと思いますが、稚内から宗谷岬へバスで向かう方は進行方向左側の席に座ることを強くオススメします。

釣り名人は“自然を愛する人”

バスに揺られることおよそ1時間。東浦というバス停で降車。待ち合わせの漁港に向かいます。

いました!!

ルアー釣りをしているこの男性が、待ち合わせをしていた佐川さんです。

私が「釣り名人ですか?」と尋ねると「ただの釣り好きです」との答え。聞けば、毎日1時間ほど釣りを楽しんでいるんだとか。釣りの魅力を聞くとこんな答えが返ってきました。

いろいろ考える時間がもてることでしょうか。釣るためには魚の生態を知らなければならないですし、それは地域の自然を見つめることにもなるので。

私たちも長靴に履きかえ、海に入ります。

潮騒のなか、波を感じ、雨を浴びていると、なんだか自然の一部になったような感覚に。不思議なものですね。私も小中学校時代に釣りをしていたのですが、釣果よりもゆっくりとした時間を求めて足を運んでいたことを思い出しました。

でも、いかんせん寒い・・・

佐川さんに言わせると宗谷地方では“普通”という風速8メートルほどの風と雨で徐々に身体が冷えてきました。それを察してか、佐川さんが「そろそろ行きましょうか。今日は風が強いのでここくらいしか釣りができないなと思ったので待ち合わせに選んだんですが、実はここはまだ稚内市なんです。きょう一番見せたい猿払村の魅力はほかにあるので」と話し、竿をしまい始めます。

佐川さんの車に乗り込んで向かった先は・・・。

山の奥!?

海辺で吹いていた強い風も、この山の中に入ってきたらほとんど無風。あたたかくさえ感じました。

川沿いを進むと…

あっ、いたいたいた!

指さす方向を見ると、・・・確かにいます!!
イトウの姿を確認することができました。

~~~~~

以前はここに、目撃したイトウの写真を掲載していましたが、長年、猿払村で保護活動に取り組んできたイトウの会の方と、記事掲載後にお話をしたところ「産卵期を迎えたイトウの姿を見て、誘発される釣り客がいる」というご心配の声を頂きました。その思いを受けて21日(水)記事を、以下のように修正します。

村には、このような立て看板が設置されています。

1.できる限り魚体に影響を与えないキャッチ&リリースをお願いします
2.釣り場環境保全のため、ごみの持ち帰りをお願いします
3.許可なく私有地(牧草地)へ立ち入り、車両の乗り入れをやめましょう
4.産卵期(4/1~5/20)は、産卵区域での釣りは自粛しましょう
5.夜間の釣りは危険が伴うので、自粛しましょう

佐川さんが今回、見せたかった猿払村の魅力は、“幻の魚”と呼ばれるイトウでした。村に特別な許可を得て、ご案内いただきました。しかし、放送やWEBでご紹介することを控えることにしました。

村とイトウの会では、イトウを村のシンボルとして捉えています。川と海を行き来する魚だけに、村全体の自然が守られていないければ天然のイトウが生息し続けることはできません。つまり村の豊かな自然が守られていることの証が天然のイトウの存在なんです。イトウの会としても「いつまでも天然のイトウが釣れる川を残そう」という目標を立てて活動を続けています。

イトウと共に生きる村を守り、未来につなごうとする皆さんの思いに触れることができました。

一方で、残念ながらマナーが十分に守られていない事も起きてしまっていることも知りました。もちろん、全ての釣り人がルールを守っていないとは考えていませんが、残念ながら村のみなさんの思いを無視した行為も現実にあり、悩みを持っている地域の方がいるということを感じる滞在でもありました。村の人たちの思いを全ての人で共有できる環境が生まれることを心より願っています。

今回、私たちをご案内くださった佐川さんも長年保護活動に取り組んできた「猿払イトウの会」の会員のひとりです。村のシンボルであり、自慢でもあるイトウを未来に残すための保護の視点から「環境省が絶滅危惧種に指定しているので、ことしも無事に見られてよかった」と安堵の声が聞かれたのが印象的でした。

イトウと共に生きる村

佐川さんによると猿払村を流れる4つの河川にイトウは生息しているといいます。海外では苦労して生息地にたどり着く一方、猿払村は「暮らしのすぐそば」に生息しています。さらに、イトウだけではなくオジロワシやオオワシのほか、道の駅の目の前の岩場でアザラシが見られることも教えてくれました。こうした豊かな生態系を感じることができる村だと認識させてくれたのは、全国各地から訪れる人だったと言います。

ホテルで働いていると各地からお客さんが来るんですよね。すると『釣りをしていたら朝陽が海から昇る様子に感動した』『サンセットが美しい』『こんなに人の暮らしのそばに豊かな生態系が守られているなんて普通はない』など、私たちの当たり前に驚かれるんです。それから積極的に外の人とお話しするようになりました。その中で、豊かな生態系に触れられる村だということを伝えたらもっと多くの人がいらしてくださるんじゃないかなと考えるようになったんです。そして、多くの人に『これを守る人たちがいるからこそなんですよ』とお伝えしていきたいですね。

私は、ローカルフレンズの取材で道内各地を訪れていますが、去年訪れた清里町のサクラマスの滝登りが注目を集めるように、猿払村のイトウにも可能性を強く感じました。しかし、そのような未来をつくるためには、ルールづくりが大切だと佐川さんは言います。

「保護と活用を定めた村の条例ができるといいなと思っています。その上で、ルールのもと釣りをするゾーン、生態系を感じる学びのゾーン、手付かずの見守りゾーンなどゾーニングができれば釣り客だけではなく多くの人が村に訪れるのではないかと考えているんです」と話しています。その上で「宗谷各地に魅力的なものがあるので、稚内、利尻、豊富、猿払とか自治体単位で短期間でなく、宗谷全体を周遊するような旅の魅力が伝わると面白いと思っているんです。そのためにも、まずここに住んでいる人たちがもっともっとつながっていきたいと、稚内の尾崎さんとは話しているんです」と教えてくれました。宗谷地方、熱いです!!

このブログが公開される20日(火)は、佐川さんの職場、ホテルのレストランにもお邪魔しようと思っています。情報交換の拠点になっているとのことで、いまから楽しみです!

≪関連記事≫
◆宗谷プチ滞在DAY1(瀬田宙大
◆宗谷のアドベンチャー(越村D)

2021年4月20日

関連情報

パラリンピックの現場にいます!

瀬田 宙大

2021年8月30日(月)午後2時09分 更新

ほっと通信(101)【瀬田宙大】

瀬田 宙大

2020年3月23日(月)午後2時01分 更新

#ローカルフレンズ(38)【瀬田宙大】

瀬田 宙大

2020年10月15日(木)午後0時58分 更新

上に戻る