NHK札幌放送局

おもてなしのプロが伝授!

芳川 隆一

2021年3月9日(火)午後4時18分 更新

皆さん「全国通訳案内士」という仕事をご存じですか?日本を訪れる外国人観光客に付き添って観光地を案内する仕事です。

外国語の能力はもちろん、日本の歴史や地理、文化の知識も問われる国家資格で、まさに“日本のおもてなしのプロ”です。新型コロナウイルスの感染拡大で外国人観光客の姿はほとんど見かけませんが、そんな今だからこそ、これまでのノウハウをいかした新たな取り組みを通訳案内士が始めています。

札幌市に住む、全国通訳案内士の飛ヶ谷園子(ひがや・そのこ)さんです。得意の英語とドイツ語をいかして、多い時には年間500人以上の外国人観光客を案内してきました。特に道東を中心としたバードウオッチングなどの自然ツアーの案内を手掛けることが多く、出発前には目的地で見られる鳥や植物の英語名を入念に調べるなどの準備を欠かさないといいます。日本の自然や地理を正しく伝えるのが通訳案内士の大切な仕事。しかし、決してそれだけではありません。

飛ヶ谷さんが以前、案内した時のメモです。「温泉の入り方 もっと詳しく」「イオウのにおい」「熱すぎる!」などとありますね。外国人観光客を温泉旅館に案内した時、イオウの匂いに驚かれたり、温泉が熱すぎると言われたり…そんな経験を書き留めました。私たち日本人にとって当たり前の事でも、外国人にとってはビックリの連続。そんな疑問や相談に丁寧に答えることで、外国人旅行客が日本に滞在中、少しでも快適に滞在できるようあらゆるサポートを行うことも大切な仕事なんです。

新型コロナの感染拡大で、去年4月以降、飛ヶ谷さんは通訳案内士としての仕事は全くできていません。しかし、だからこそ、コロナ後を見据えて、これまで培ってきた外国人観光客おもてなしのためのノウハウを広く地域の観光関係者と共有しようとしています。先月(2月)、飛ヶ谷さんは網走市にあるリゾートホテルを訪れました。

網走湖畔に建つこちらのホテルは、毎年1月から2月にかけては流氷を見ようと多くの外国人宿泊客が訪れ、宿泊者全体の約7割にもなるといいます。おもてなし力をさらに向上させるためには何が必要か個別にアドバイスしようと、従業員に案内されて館内を歩き始めた飛ヶ谷さんがまず足を止めたのが、温泉施設に入るための玄関です。

他人とスリッパを共有することに特に抵抗がある外国人にとって、識別のためのタグがあることを丁寧に説明することが大切だとアドバイスします。なるほど、多くのホテルでスリッパのこうしたタグがあるのは珍しいことではありませんが、その存在をしっかりと伝えることが大切なんですね。続いて向かったのは温泉の中。

ここで飛ヶ谷さんは、温泉のお湯について一言何か説明を加えるだけで、外国人宿泊客がより滞在を楽しめるようになるとアドバイスしました。例えば「お湯は透明ですが、ミネラルが豊富ですよ」とか、お湯が白や茶に濁っている温泉であれば「温泉の成分でこうした色をしています(決して汚いわけではありませんよ笑)」など、一言添えることで疑問なく温泉のお湯を堪能してもらえるようにするのが大切だということです。

今回の取り組みは、通訳案内士のノウハウを広く観光関係者と共有してもらおうと観光庁が今年始めたもので、飛ヶ谷さんはそこに講師として参加しました。これまで外国人旅行者から直接、日本の宿泊施設に対する意見や感想をもらうことが多かったという飛ヶ谷さん。実はそれらを宿泊施設側と直接、共有する機会はほとんど無かったそうですから、通訳案内士と宿泊施設の新たな連携が始まっていることはとても心強く感じました。
私も通訳案内士の端くれ(実務経験は0なので、本当に名ばかりではありますが…)として、飛ヶ谷さんが持つ、外国人観光客に日本を楽しんでもらうための様々な視点はとても勉強になりましたし、これからも外国人観光客にまつわる動きを追いかけたいと思っています。

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