NHK札幌放送局

もっと気軽におしゃれを

芳川 隆一

2021年4月7日(水)午後1時01分 更新

この春、札幌市内の洋服のデザイン会社が新たな挑戦に乗り出しています。車いすの人に気軽に着てもらえるよう様々な工夫を凝らしたパーティードレスの開発を進めているのです。事前の採寸を必要とせず、車いすの人が極力1人で脱ぎ着できるよう様々な工夫を凝らし、世界でも珍しい“量産型”の車いす用ドレスを世に送り出そうとしています。なぜ“量産型”なのか?考案者に話を聞きました。 

きっかけは利用者の輝くような表情

新たな車いす用ドレスを考案したのは、石切山祥子(いしきりやま・さちこ)さんです。札幌市を中心にスタイリストとして活躍しながら、洋服デザイン会社と共に開発に取り組んできました。石切山さんには今でも忘れられない出来事があります。今から10年以上前、ある福祉施設で行われた着物の着付け体験会にボランティアとして参加した時のこと。「私に着物なんか無理」と話す脊椎損傷のけがを負った利用者の女性に、用意してきた着物を見せると、その人が体を起こそうとしたといいます。「着物を着たいという強い気持ちを感じました」と話す石切山さん。この日の着付け体験会では、他にも、着物を身にまとったことで表情が明るくなる人たちにたくさん出会いました。「おしゃれがいかに人の気持ちと表情をキラキラと輝かせるか。この時、車いすの人のためのドレスを作れないかと考えるようになりました」と話します。

極力1人で着られるように

これまでも車いすの人のためのドレスはありましたが、事前に採寸を行い1着1着をオーダーメイドで作ることが一般的でした。加えて、着脱の際には複数の人たちの手助けを必要とするのが普通です。今回、石切山さんたちはこの概念を打破。車いすの人が極力、1人で着脱できるよう工夫を凝らしたドレスを作り、それを“既製品として量産”しようというのです。そうすることで、車いすの人にもっと気軽におしゃれを楽しんでもらうと共に、将来的には1着あたりの価格を下げられるのではないかという狙いもあります。

量産化のために、ドレスには細かな工夫を施しています。まずは上下をセパレートにしました。ドレスといえばワンピースになっているものが一般的ですが、そこをあえて上着とスカートに分けることで、着やすくしています。

次に、スカートを巻きスカートにしました。車いすの人は、椅子にスカートを置いてその上に座り、巻き付けるようにしてスカートをはくことができます。前に来る部分にはデザインも施されているので見た目にもきれいです。

上着にも工夫を凝らしました。裾の部分を従来のドレスと比べてゆるく設計しています。私たちは誰でも、座るとお腹と腰回りが上下に圧迫されて、少し大きく(=太く)なりますよね。車いすの人は座った状態でドレスを着るわけですから、裾をゆったりと作る事で着やすく、かつ見た目にもおしゃれなデザインにしているんです。

石切山さんたちが開発しているドレスのモデル役を担っている伊橋麻美さんも、「着やすいのはもちろん、見た目のラインもきれい!」とお気に入りです。

札幌から世界へ

会社では、今月(4月)下旬からインターネットの特設サイトで注文を受ける形で新たな車いす用ドレスの販売を始める予定です。これに合わせて今月下旬にはオンラインでのファッションショーも開催するなど、広く量産型の車いす用ドレスについて知ってほしいと考えています。さらに、今年の夏には海外の利用者に向けた販売も始めたいとしていて、まずは日本に近い台湾での販売を視野に入れています。

10年以上前のあの日、福祉施設で見た利用者の輝くような表情が石切山さんの原動力です。

石切山祥子さん
「私たちのドレスを着て、ぜひどんどん出かけて行って欲しいです。車いす利用者の皆さんがもっと気軽におしゃれを楽しめるように。それが私たちの願いです」

札幌発の新たな車いす用ドレスが、日本の、そして世界中の車いすを利用する人たちのおしゃれを変えていきそうです。

2021年4月7日

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