NHK札幌放送局

近日放送!“先輩”へのインタビュー

芳川 隆一

2022年7月21日(木)午後5時07分 更新

先日、インタビュー収録のために、NPO法人「日本サハリン協会」の会長、斎藤弘美(さいとう・ひろみ)さんをNHK札幌にお招きしました。みなさん、「サハリン残留日本人」という言葉を聞いたことはありますか?

北海道の北に広がるロシア極東の大地、サハリン。ここは戦時中、樺太と呼ばれる日本の領土でした。当時の樺太は漁業や林業で栄え、碁盤の目のように整備された大きな町もあって、40万人ぐらいの日本人が暮らしていました。いわゆる「一旗揚げてやる!」という気概で移り住んだ人も多くいたそうです。ところが、太平洋戦争末期の昭和20年8月、ここに、旧ソ連軍が、日本と結んでいた中立条約を一方的に破棄して攻め込みました。女性や子供を含む多くの人たちが追われるようにして港を目指し、引き揚げ船で北海道に渡りました。避難の途中で犠牲になった人も数多く、生き残った人たちの多くも財産を失いました。

戦前の樺太・真岡の様子
(写真提供:旧一般社団法人 全国樺太連盟北海道事務所)

こうした中、混乱の中、避難できずに樺太に残り、戦後もそこで暮らしてきた人たちも数多くいました。引き揚げていった親やきょうだいと離れ離れになったことで、多くの離散家族も生まれました。こうして戦後もサハリンに残ったのが「サハリン残留日本人」。正確な数は把握されていませんが、今も70人ほどいらっしゃるのではないかと見られています。

斎藤さんが会長を務める「日本サハリン協会」では、こうした残留日本人の帰国を支援してきました。帰国には「一時帰国」と「永住帰国」の2種類があって、それぞれ、必要な書類の手続きや日本滞在中の生活のサポートなどを行っているのです。

この夏、私が斎藤さんにどうしてもお話を伺いたかった理由があります。今年3月、ロシアによる軍事侵攻を受けたウクライナから、1人の男性が北海道に避難してきたというニュースに触れたことでした。男性の名は、降籏英捷(ふりはた・ひでかつ)さん、78歳。

降籏英捷さん
(写真提供:斎藤弘美さん)

降籏さんは樺太で生まれ育ち、終戦後に日本に帰国できないまま残留を余儀なくされ、その後、結婚した妻の故郷であるウクライナに移り住みました。日本に暮らすきょうだいとも連絡を取り合っていましたが、ロシアによる軍事侵攻が始まるとしばらく音信不通に。ウクライナの町が砲撃される様子をテレビで見て、いてもたってもいられなくなった日本在住の妹が日本サハリン協会に連絡したことから、何とか帰国させられないかと模索が始まり、ことし3月、降籏さんは孫など3人とともに隣国ポーランド経由で日本への帰国を果たしました。この間、現地との連絡や日本入国のための手続き、それに飛行機のアレンジなど、あらゆるサポートを担っていたのが斎藤さんでした。「どんな思いで降籏さんの帰国を実現したのか?」ぜひ聞いてみたいと思ったのです。

成田空港で取材に応じる降籏さん
(写真提供:斎藤弘美さん)

インタビューで斎藤さんは「降籏さんも帰国を希望されていたし、ぜひとも実現したかった」と、帰国実現に向けた熱い思いを語ると共に、戦争や紛争で人が自由に行き来しずらい今の世の中と、終戦直後のサハリンで起きた出来事がどこか重なるとも仰っていました。

ところで、斎藤弘美さんは元フリーアナウンサー。在京のラジオ局を中心に数々のニュース番組などで活躍されました。アナウンサーの先輩へのインタビューは緊張しましたが、同時に私は、斎藤さんの理路整然としたお話の内容と素敵な声に聞き入ってしまいました!

民放ラジオ番組でアシスタントを務める斎藤弘美さん。
左はジャーナリストの筑紫哲也さん
(写真提供:斎藤弘美さん)

アナウンサーだった斎藤さんがどうしてサハリンと関わるようになったのか?それも含めた斎藤弘美さんへのインタビューは、現在、放送に向けた編集の真っ最中です!

放送予定は…
・ラジオ第1 8月8日(月)午前4時台「ラジオ深夜便」内「戦争・平和インタビュー」
・ラジオ第2 8月3日(水)・10日(水)午前10時30分「アナウンサー百年百話」

いずれも全国放送です。

放送後にはブログでもインタビュー内容をご紹介したいと思っています。

(ただいま、編集作業中!)

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