NHK札幌放送局

全日本選手権 激闘の舞台裏

小山 凌

2022年12月28日(水)午後4時41分 更新

アイスホッケー日本一を決める全日本選手権。12月18日に決勝が行われひがし北海道クレインズが東北フリーブレイズとの決勝に挑みましたが、惜しくも延長戦(PSS)で敗れ、3連覇はなりませんでした。私はひがし北海道クレインズとレッドイーグルス北海道の準決勝の実況と、決勝のリポーターと優勝インタビューを担当しました。大会開幕前にご紹介した道内勢の活躍を振り返ります。
 近年稀にみる接戦が多かった全日本選手権の激闘の裏側にはどんなドラマがあったのか。 

1998年の長野オリンピックのアイスホッケーのメイン会場となったビックハットで行われた今年の全日本アイスホッケー選手権。アジアリーグアイスホッケーに所属するひがし北海道クレインズ、レッドイーグルス北海道、東北フリーブレイズ、H.C.栃木日光アイスバックス、横浜GRITS。社会人チームからはDYNAX、日本製鉄室蘭アイスホッケー部、タダノ、香川アイスフェローズ。大学からは東洋大学、明治大学、関西大学。12チームによるトーナメントが行われ、東北フリーブレイズが5年ぶり2回目の優勝を果たした大会になりました。道内勢も素晴らしい戦いを見せてくれました!


社会人チームが挑んだ全日本選手権

道内の社会人チームではDYNAX、日本製鉄室蘭アイスホッケー部、タダノが出場しました。3チームがどんなチームなのかはこちらのブログで紹介しています。

アイスホッケー全日本選手権 道内出場チーム紹介

DYNAXは、アジアリーグに所属する横浜グリッツに挑みました。第1Pは4失点と苦しい立ち上がりになりましたが、第2Pは矢島翔吾選手のゴールで今大会DYNAXの初得点を挙げ、第3Pは矢島翔吾選手のこの日2点目のゴールや、今野友尋選手、澤出仁選手の得点などで追い上げを見せるも11対4で敗れました。

日本製鉄室蘭アイスホッケー部は、関東大学リーグで優勝を果たした東洋大学との対戦でした。第1Pは野澤一矢選手のゴールで幸先よく先制し、1-0で第2Pへ。しかし、日本代表でも活躍している選手が所属する東洋大学が、徐々にパックを保持する時間が増え、FW、DF全員がスピードを生かして攻撃を展開し、日本製鉄室蘭アイスホッケー部は一挙5失点。第3Pも野澤一矢選手のゴールがうまれるも7-2と勝利にはあと一歩届きませんでした。

そのなかで、初戦に勝利したのが帯広を拠点に活動するタダノです。初戦は関西大学との試合でした。序盤から積極的に攻めてくる関西大学に対して、GKの田中旭選手が立ちはだかり、第1Pは15本、第2Pは12本のシュートを打たれるもゴールを許しませんでした。守りからリズムを作り、古川誠也選手や土屋輝幸選手のゴールで2点を先制。第3Pも小原日向選手と梶原聡人選手のゴールで2点を挙げ、関西大学の追い上げをしのぎ切り初戦突破を果たしました。準々決勝では優勝した東北フリーブレイズに16-2と敗れましたが、限られた練習時間の中でチーム力を高め、全日本選手権という大舞台で堂々としたプレーを見せていました。


伝統の北海道勢対決 ひがし北海道クレインズ対レッドイーグルス北海道

私が放送を担当した準決勝は、北海道勢同士の対戦、ひがし北海道クレインズとレッドイーグルス北海道の試合でした。これまで数多くの名勝負を繰り広げてきた両チームの1戦は壮絶な激闘になりました。ともにクラブチームになって全日本選手権で戦うのは初めて。大会3連覇を目指すクレインズと、前身の時代では最多37回の優勝経験があるレッドイーグルス。試合序盤は、負けたら終わりのトーナメント戦というなかで、一進一退の攻防が続きました。レッドイーグルスが持ち味のパワープレー(相手の反則で人数が多い状態)でチャンスを作るも、クレインズがGKの脇本侑也選手を中心に懸命な守りで得点を許さず、0-0のまま試合は第3Pに入ります。レッドイーグルスがアタッキングゾーンで攻撃をする時間が増え、クレインズの守る時間が続いた10分すぎ。レッドイーグルスの佐々木一正選手のパスをゴール裏で受けた中島彰吾選手からゴール前へパスが渡り、高橋聖二選手のシュートがゴールネットを揺らしゲームが動きます。

その55秒後。すぐさまクレインズも反撃に転じます。キャプテンの大津晃介選手が持ち味のスピードでゴール前に切り込み、そのまま同点となるゴールを決め試合は延長戦に入ります。

得点が入った瞬間に試合が決まる5分間の延長戦は、お互いが決定機を作るも得点は入らず、決着はペナルティショットシュートアウト戦に。サッカーでいうPK戦、5人ずつがシュートを行い勝敗を決めます。先攻はクレインズ、後攻がレッドイーグルス。

レッドイーグルスのGK成澤優太選手は、引き締まった表情でゴールへ向かいました。日本代表のでも活躍する成澤選手もこの大会には強い覚悟をもって挑んでいました。

「去年は、優勝を期待されながらも勝つことが出来なかった。自分自身も思うようなプレーが出来なくて本当に悔しい大会になった。日本代表のGKとして、国際大会でも多くの経験をさせてもらって手ごたえを感じている部分もあるので、今年は楽しんで全日本の舞台を戦いたい」

その成澤選手がクレインズの一人目松野佑太選手、二人目池田一騎選手のシュートを防ぎ、レッドイーグルスは髙木健太選手と高橋聖二選手がゴールを決め2-0のリードとします。

追い込まれたクレインズは3人目大津晃介選手。

外すと追い込まれる状況の中でキーパーの目の前でフェイントを加え、ゴール。同点ゴールに続きこの土壇場でも勝負強さをみせます。

2-1としてクレインズはGK脇本選手に期待がかかります。

脇本選手は、以前レッドイーグルスの前身の王子イーグルスに所属していました。これまでは先発出場する機会に恵まれなかった脇本選手ですが、この試合に向けては、「古巣相手というのはすごく意識していたしやってやろうと思っていた」と強い思いで試合に臨んでいました。

チームが追い込まれていた中で脇本選手が、イーグルスの3人目中屋敷侑史選手、4人目入倉大雅選手のシュートを止める好セーブをみせます。5人目は両チームともに決めることが出来ず、5人が終わって2-2。6人目以降の勝負に入ります。先攻後攻が入れ替わり、先攻はレッドイーグルス。髙木健太選手が重要な場面に登場します。3人目以降好セーブを続けるクレインズの脇本選手がここも立ちはだかり4人連続でシュートを防ぎます。決めれば決勝進出が決まる状況で、リンクに颯爽と飛び出し来たのは大津晃介キャプテン。GKの脇本選手のもとへ行き笑顔で言葉を交わしたあと、6人目のペナルティショットシュートアウトに向かいました。

「ベンチを見たときに河合龍一選手が自信をもって打ってこいという声をかけてくれて、ファンの皆さんが祈っているのが見えた。ここで決めればヒーローになれると思った。」

仲間とファンの思いを背負い、狙ったシュートはレッドイーグルスGKの成澤選手の右肩口からゴールに吸い込まれていきました。
両チームの伝統の一戦は、ひがし北海道クレインズが決勝進出を決めました。


3年連続同一カードの決勝 3連覇へ挑んだクレインズ

クレインズにとっては3連覇がかかった決勝。3年続けて東北フリーブレイズとの対戦になりました。試合開始からゲームは動きます。第1P、3分すぎにフリーブレイズは田中遼選手のゴールで先制すると、立て続けに杵渕周真選手と佐々木祐希選手がゴールを決め序盤から主導権を握ります。クレインズも齊藤大知選手の得点で点差を縮めたものの、15分すぎに寺尾裕道選手が反則により退場。今年は少ない人数で勝ち上がってきたクレインズは苦しい展開になります。
第1P後のインタビューで齊藤監督は。

 「立ち上がりは少しドタバタしてしまった。(寺尾選手が退場になってしまったが)これまでも少ない人数で戦ってきたので、そのあたりはしっかりと対応して、短い時間ですが修正して戦っていきたい」

齊藤監督の言葉通り、選手たちが底力を見せつけます。選手が少なくなったなかでも、持ち味の早いプレッシャーからゲームを展開していくと、第2P終盤に地元長野県出身のルーキー磯谷奏汰選手のゴールで点差を縮めます。

さらに第3Pの10分すぎ、池田一騎選手がゴール前にパスを送ると、磯谷選手がゴール前でパックを受け取りGKをかわし同点ゴール。準決勝に続き、決勝戦も延長戦で決着がつかず試合はペナルティショットシュートアウト戦に入ります。
フリーブレイズの一人目、ロウラー和輝選手が冷静にゴールを決めると、クレインズの三人目は大津晃介選手が昨日の試合に続いて登場し同点となる得点を決め、6人目、7人目でもゴールを挙げ昨日から5回連続でペナルティショットシュートアウトを成功させます。試合は8人目でフリーブレイズのキャプテン・山本和輝選手がゴールを決め、これが決勝点に。東北フリーブレイズは5年ぶりの優勝を果たし、ひがし北海道クレインズの3連覇はなりませんでした。


放送席から見た全日本選手権

NHKでは準決勝と決勝の3試合を放送しましたが、今年は全試合が延長戦までもつれ込む激闘になり、アイスホッケーの魅力が存分に詰まった試合をお伝えしました。今大会も解説を担当してくださったのは、この方。

U18(18歳以下)など若い世代の日本代表の強化統括を担当している日本アイスホッケー連盟の大北照彦さんです。アイスホッケーの反則を示すハンドサインで写真を撮りましょう!というアイスホッケー通にしかわからない要望に対しても、この素敵な笑顔でインターフェアランスのポーズをしてくださった大北さん。今回初めて放送でご一緒をさせていただいたのですが、出身大学が同じということで大会期間中はいろんなお話を聞かせていただきました。そして、今大会は中継のインターバル間に、大北さんのチョークを使ったプレー解説もありました。スピーディーな試合展開の中でも、選手の技術やアイスホッケーの面白さをわかりやすく解説をしてくださいました。さらに、放送直前にはカメラマンやアナウンサーに向けたアイスホッケーの特別講義をしてくださるなど、本当にお世話になりました。

大会後には、釧路局で一緒にアイスホッケーの取材やひがし北海道クレインズのコーナーを担当していた横山哲也アナウンサーと!

今回は、放送だけでなく、事前にブログなどでチーム情報や、見どころを紹介したところ、会場やSNSなどでたくさんの方に反応していただけてすごくうれしかったです。会場では、「今回初めてアイスホッケーを生で観戦して、こんなに面白いスポーツだと思いませんでした!」と話す観客の方と出会うことが出来ました。年明け以降も男子のトップリーグは、釧路、苫小牧、札幌、旭川、道外では青森、神奈川、栃木、東京などで試合が予定されていますので、実際にリンクでアイスホッケーの魅力を体感してみてください!!

オリンピックは4年に1度ではありますが、アイスホッケーをはじめウィンタースポーツの話題を定期的に発信していきたいと思いますので、今後もぜひご覧ください!!

よろしくお願いします!

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