NHK札幌放送局

外国人技能実習生の「受け入れ停止の処分」は無力化できる!?~外国人技能実習制度取材⑥【野村優夫】

野村 優夫

2020年9月14日(月)午後4時31分 更新

北海道栗山町のきのこ工場で働いていたベトナム人の技能実習生17人が、突如解雇され、知り合いの弁護士からの紹介で、私たちはこの技能実習生たちの取材をすることになりました(これまでの経緯についてはこちら)。

前回のブログでは、「技能実習生を育成するという名目」が、結果として、技能実習生に我慢を強いている実態についてお伝えしました。実習生は、何でも相談できるはずの監理団体に、相談しにくくなってしまうという状況が生まれていました。
こうして実習生が声を上げないため、実習生を受け入れている会社は、職場環境や待遇の改善をしなくても問題ないと思ってしまうのではないだろうか・・・。私たちはそう考え、次に、会社側の取材を進めることにしました。

私たちは、そもそもなぜベトナム人技能実習生を受け入れることになったのか、ということから調べるために、その経緯を詳しく知るというある人物を訪ねて、話を聞きました。それは技能実習生を受け入れていた会社ではなく、その会社にきのこ栽培を依頼し、この3月に倒産した「C社」で働いていた社員でした。

この元社員は、まず、こんな話を私たちにしました。

実習生を受け入れていたA社もB社も、実質的には、栽培を依頼していたC社が作った会社なんです。C社で技能実習生の受け入れができなくなったので、A社とB社を作って、そこで技能実習生を受け入れさせて、栽培を委託するという形をとったんです。

この元社員によると、C社は、慢性的な人手不足を補うために、2010年ごろから技能実習生を受け入れていました。ところが、実習生に労働基準法の上限を超える時間外労働をさせていたことなどが発覚し、2014年に入国管理局から技能実習生の受け入れの停止を命じられました。そこで、A社とB社を立ち上げ、技能実習生をそこで受け入れ、栽培を委託する形にして、事業を続けたというのです。
技能実習生の受け入れ可能な人数は、その会社の従業員の数によって決まってきます。ですから、それまでC社にいた百数十名の従業員をA社とB社に転籍させて、書類上の齟齬がないようにしていました。この元社員自身も、従業員の所属を一斉に変えたので、誰をどちらの会社の所属にしたかを覚えるのが大変だったといいます。

ただ、移籍した従業員も技能実習生も、A社B社の関係なく、C社の所有する工場やハウスで一緒に働き、C社の社員の指揮命令の下動いていました。つまり、入国管理局による受け入れ停止の処分の後も、それまでと変わらない状況で業務は続いていたというのです。

A社B社の技能実習生を監理していた監理団体の元職員に確認したところ、その経緯に間違いはないと証言しました。また、A社とB社の社長も「自分は名前を貸しているだけで、実質的にC社を取り仕切っている人物がA社B社を動かしている」と、札幌地域労組の聞き取りに答えています。
つまり、ベトナムから17人の技能実習生を受け入れたA社とB社は、実は低賃金の労働力が必要だったC社のもとで技能実習生を働き続けさせるために作られた“ダミー会社”だった可能性が高いのです。

実態を調べるために、私たちは、会社の登記簿謄本を確認してみました。

C社が技能実習生の受け入れ停止になったとされるのは、2014年。A社は、その翌年2月に他の会社を買収する形で、B社も7月に、相次いで設立されています。また、A社の本店の住所は、C社の工場のある場所に登記されています。B社の本店の場所にも行ってみましたが、そこには小さなプレハブが1軒建っていて、留守番をしているという男性が一人いるだけでした。この男性に話を聞くと「通常ここには自分以外に誰もいない。この小屋は、実質的にC社を取り仕切っている人物のものである」ということでした。

法律の上限を超える長時間労働をさせていたC社に対し、受け入れ停止の処分が下されたにもかかわらず、別の会社を隠れ蓑にすれば同じように実習生を働かせられるのなら、入国管理局の処分にはほとんど意味がありません。しかも、監理団体はこの経緯を知っていたというのですから、同じ場所に技能実習生を送り込むにあたっては、実習生の労働時間や環境に問題がないか、通常以上に細心の注意を払う必要があったはずです。ところが、私たちが実習生たちや監理団体の元職員の話を聞く限り、そのような動きは見られませんでした。

※この記事に関するご意見やご感想、関連する情報のご提供などがありましたら、NHK札幌のシラベルカまで、ご投稿ください。

(2020年9月14日)

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