音更町出身の伊林です。「北のことばお兄さん」、今回は「世間ずれ」です。
「彼『世間ずれ』しているから、社会人になって大丈夫かな?」 卒業・就職シーズンにありそうな会話ですね。「『世間』から『ずれ』ているから“常識がない”という意味でしょ」と思っているあなた、本来の意味は違うんですよ。
(*この記事は2分半~3分程度で読めます。)
まず、国語辞典で「世間ずれ」を見てみましょう。
新明解国語辞典
せけんずれ【世間擦れ】実社会で苦労したため、純真さが薄れ、ずる賢いところが目につくこと。
岩波国語辞典
せけんずれ【世間擦れ】実社会で苦労を重ねたため、世間の裏を知っていて悪がしこいこと。
三省堂国語辞典
せけんずれ 一【世間擦れ】実社会で苦労をして、悪がしこくなること。二【世間ずれ】〔俗〕世間の動きとずれていること。
どの辞典も、多少表現は異なるものの、おおむね「実社会で苦労してずる賢くなる」という趣旨を掲載しています。
三省堂国語辞典は“俗語”と注意をつけた上で、二番目に“世間の動きとずれていること”という意味も掲載していますが、「世間ずれ」は本来“世間を渡ってもまれてきた結果、ずる賢くなっている”という意味なんです。
しかし、平成16年度に文化庁が行った「国語に関する世論調査」では、若い世代ほど、本来の意味ではない“世の中の考えから外れている”と答えた人が多くなりました。
例えば「あいつ、金髪にTシャツで卒業式に来るなんて“世間ずれ”しているなぁ。社会に出て大丈夫かな?」などという使い方がそうですね。
その文化庁の調査で本来の意味を答えた人は32.4%にとどまりました。年代別では、20代が27.0%、30代では34.6%という結果で、若い世代の“正答率”は40%に届きませんでした。
もうお気づきの方もいると思いますが、「世間ずれ」の「ずれ」は、「考え方にずれがある」などという「ずれ」ではなく、“多くの人に接し、もまれて人柄が悪くなる”意味の「すれる」からきています。
文化庁は、“「ずれ」を、純真さやまじめさが失われる意味ではなく、物事が食い違う、外れる意味に受け取ってしまうからだ”とみています。
使い方に気をつけたいですね。
“ちょっと人に話したくなることばの知識”をお届けするミニ番組「北のことばお兄さん」。
放送は、(月)~(木)の午前5時59分から1分です。
これを見れば、「『○○○』って、本当はこういう意味なんだよ!」と思わず人に話したくなること間違いなし!
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