NHK札幌放送局

北のことばお兄さん 「号泣」編

伊林 毅暁

2023年2月21日(火)午後4時07分 更新

音更町出身の伊林です。「北のことばお兄さん」、今回は「号泣」です。
「いやー、映画で感動して号泣しちゃったよ」、こんな会話を聞いたことはないでしょうか。映画館の中で上映中に「号泣」したら、大変ですよ…。なぜでしょうか?
 (*この記事は3分半~4分程度で読めます。) 

最近、インターネット上やSNSなどで「声を押し殺して号泣」「周囲に気づかれないように号泣した」などという表現が見られるようです。

皆さんは、そのような表現をどう感じますか?国語辞典で「号泣」を見てみましょう。

(岩波国語辞典 第八版)
【号泣】 大声をあげて泣くこと
(三省堂国語辞典 第八版)
【号泣】 ①大声で泣くこと。また、その声。「―がひびく」
②〔俗〕大いに涙を流すこと。「静かに―する」
(大辞林 第四版)
【号泣】 大声をあげて泣くこと。「人目をはばからず―する」

三省堂国語辞典は、“俗語”で公の場にはそぐわないとした上で「大いに涙を流すこと」という意味も掲載していますが、「号泣」の本来の意味は「大声をあげて泣く」ことなんです。

“声を上げずに涙を流す様子”に使われることには違和感を覚える人も多く、インターネット上にも、「号泣」の誤った使い方を指摘するサイトやブログなどが多くあります。注意が必要です。

文化庁は、平成22年度の「国語に関する世論調査」で「悲しみの余り、号泣した」という例文をあげて「号泣する」の意味を尋ねました。
その結果、本来の使い方とは違う『激しく泣く』を選択した人が48%を超え,本来の使い方である『大声を上げて泣く』を選択した人(約34%)を上回りました。
「号泣」が本来の意味から拡大して使われることについて、文化庁は「週刊誌やテレビ番組などが、誰かの激しく泣く様子を、声の有無にかかわらず『号泣』と表現し始め、次第に一般にも広がっていったのではないかと思われる」としています。

どんなに感動的な映画でも、まだ上映中なのに映画館の中で「号泣」、つまり本当に大声をあげて泣いたら、周囲の人に迷惑ですよね。


★撮影こぼれ話★

「号泣」編は、旭山動物園「ほっきょくぐま館」で撮影させていただきました。
当初は、巨大プールでガラス越しにホッキョクグマとともに撮影しようと試みましたが、ホッキョクグマの「ピリカ」と「ゆめ」が撮影できる所に中々来てくれません…。

ピリカは巨大プールに入らず、ずっとプールの上の崖にたたずんでいました…。一方、子グマのゆめは活発に動き続けていました。プールでダイナミックに泳ぎ回っているかと思ったら、すぐに出てしまうことも…。

「ピリカ」と「ゆめ」への出演交渉が不調に終わったため、外へ移動。巨大プールの外で遊んでいた「ルル」と「サツキ」に出演交渉した結果、快諾(?)してくれました。

しかし…、ルルとサツキは、中々撮影場所に近いところまで来てくれません。中年の男性アナウンサーだと分かって興味を失ったようです。姿が遠くてすみません…。2頭はこんな顔をしています。

サツキのほうが、ルルより3歳上でお姉さんのようです。「きょうは撮影に協力してくれて、ありがとう!」と声をかけましたが、ルルとサツキはこちらを気にすることなく元気に遊んでいました…。

“ちょっと人に話したくなることばの知識”をお届けするミニ番組「北のことばお兄さん」
放送は、(月)~(木)の午前5時59分から1分です。

2月放送の6本が、NHKプラスで配信されています!(期間は2月18日(土)から2週間です) 見逃した方は、是非NHKプラスでご覧ください!
これを見れば、「『○○○』って、本当はこういう意味なんだよ!」と思わず人に話したくなること間違いなし!

北のことばお兄さんWEBはこちら



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