6月9日、新冠町立新冠中学校で防災教室を開きました。全校生徒およそ130人が参加。津波による浸水を疑似体験できるアプリを使って、タブレットの画面で、体育館が浸水した様子を確認しました。避難場所となっている標高およそ40メートルの高台まで、およそ1.3キロを走って実際に避難する訓練などを実施。生徒達は自分ごととして取り組んでいました。
体育館が浸水?AR体験
体育館へ集まった生徒に、浸水を疑似体験できるアプリを使用してもらいました。

このアプリでは、浸水した時の水の高さや、水の濁り、水の流れの速さ、流木などの漂流物の有無まで、詳細に状況を設定できます。その地域で起こりうる実際の災害を、体感するようにイメージすることができます。
浸水の高さを1メートルに設定すると、体育座りの生徒の身体、ほぼ全体が浸かってしまいました。

膝ぐらいまでの水位でも、歩くことが困難になるなど、アプリを通して、津波などの水害への知識を深めてもらいました(津波のメカニズム-ナビ動画-明日をまもるナビ-NHK)。生徒たちはこのアプリに興味津々で、「うわぁ…」など声をあげながら、災害へのイメージを膨らませていました。
防災教室では、この体験を通して、実際に水が押し寄せてきてから避難するのでは手遅れで、津波が来る前に逃げる必要があるということを学んでもらいました。
リミットは20分!全力で避難
新冠町は海に面した町で、道が去年発表した巨大地震による津波の想定では、最大で10.3メートルの津波が押し寄せるとされています。新冠町に津波が到達するのは地震発生から「20分後」の想定です。

そこで…
この20分間で避難することができるのか、実際に走って逃げる訓練を実施しました。

避難場所は中学校からおよそ1.3キロメートル離れた高台です。
最後に待ち構えているのは何十段もの階段。

息切れ必至、険しいコースでしたが、なんと、ほとんどの生徒が20分以内に高台に辿り着きました。余裕そうな表情の生徒や疲れ切った生徒など個人差はありますが、多くの生徒が20分以内で避難を終え、ホッとした表情を浮かべていました。
命を守るための「呼びかけ」
最後に、アナウンサーによる講習です。
災害の危険性が高まっているときに、アナウンサーはニュースでどんな伝え方をしているのか。皆さんが避難しなければいけないと行動を起こすトリガーになれるよう、災害のフェーズに合わせたトーンで「呼びかけ」をしていることを実演しました。

実際に大河内アナウンサーが大津波警報時の避難を呼びかける場面では、ピリッとした緊張感が生まれ、生徒たちが前のめりになって聞いている様子がうかがえました。
詳しい内容はコチラ
アナウンサーと学ぶ、防災教室 | NHK北海道
防災を自分ごととして考える機会に
防災教室を終えた後、新冠中学校の生徒会長は「これまであまり災害についてイメージできなかったが、今回の教室でイメージが湧いた。」と話してくれました。また、学校関係者も「命を守りたいという本気の想いが伝わった。この気持ちは子供たちにも伝わったと思う。これをきっかけに地域の防災意識が高まれば」と話していました。ご家族も含め、全員で防災について考える良い機会になればと思います。
札幌放送局アナウンス 福田 裕大