10月27日のほっとニュースぐるっと道東と、10月29日のおはよう北海道土曜プラスでは、十勝の鹿追町で陶芸に打ち込む方をご紹介しました。
…その前に、この取材をするきっかけになった私の趣味について少しだけ書きます。

この滑らか~な土と無心で対話する時間、好きなんですよね~(o^―^o)
私は1年ほど前に趣味で陶芸を始めました。今年度の自己紹介ブログでも一部ご紹介しましたが、その後もお皿やマグカップは増え続け、、、


一人暮らしの部屋では、置くスペースが徐々になくなりつつあるので、ここ最近は、家族へのプレゼントになっています(^-^;
私は趣味ですが…ひょんなことから仕事で陶芸の世界に飛び込み、30年近く陶芸に打ち込んでいる方を取材しました。

透き通るような美しい色と繊細な模様。

土の味わいを生かした素朴な器。

黙々とろくろに向かうこの方の作品です。陶芸家かと思いきや…

実は、道内では珍しい、陶芸を専門にしている役場職員なんです。
鹿追町の商工観光課 陶芸係、三上一正(みかみ・かずまさ)さん。およそ30年、役場職員として陶芸に携わっています。

仕事の一つが陶芸講座。中には、町外から10年以上通う人も。
通っている方は、「一から十まで詳しく教えていただくので、すごくためになります。」
「先生の作品を見てすごくすてきだなって思って。教えてもらえるなんて、すごく幸せです。」と笑顔で話してくれました。

ですが、そもそも、なぜ町役場に陶芸係があるのでしょうか?

事の始まりは50年前。道路工事で、陶芸に向いた良質な粘土が見つかったのです。3年後、町は新たな特産として鹿追焼を始めることに。専門の職員を置いて、日用品作りなどを行ってきました。

もともと、三上さんは陶芸とは無縁のサラリーマン。陶芸の土に触れたこともありませんでした。

しかし、結婚を機に平成6年に鹿追町役場に転職。受け取ったのは、思いもよらぬ、陶芸係の辞令でした。その時のことを伺うと、「そう言う係(陶芸係)がある事は知りませんでした。本来なら焼き物とか陶芸に興味があって好きで始めるのが一番良いのでしょうけど、私が始めた動機は仕事としてですから、他の方とは陶芸への向き合い方が少し違っていたのではないでしょうか。」と話していました。

陶芸係に入った当初は、先輩職員の背中を見て学び、

夕食後、再び出勤して作業場に戻り、練習を繰り返したといいます。当時について、「やっぱり苦労しました。全く何もわからない状態だったから。」と語っていました。
そんな中、陶芸に対する思いに変化をもたらす出来事が。

土日の休みを返上して、ある陶芸家のもとに通いました。そこで学んだのは、素材だけでなく、釉薬にもこだわった、芸術としての陶芸。三上さんは、「(先生は)厳格な制作魂みたいなものを持ってらっしゃったので、自分でももっとレベルの向上を図らなければならないという思いが強く出てきて。」と焼き物作りに対する気持ちに火が付いた出来事を振り返っていました。

鹿追の土と相性の良い釉薬を開発するため、たどりついたのは町内で多くとれるかぼちゃです。


かぼちゃの灰など、材料の配合をさまざまに変えて、10年かけて色のごくわずかな変化を調べ続けました。「どこまで調整し続けていけばいいんだろうみたいな。そういう、長いトンネル。」と語るほど長い試行錯誤を経てついに出来上がったのは、なんともいえない美しいこの色。

「地元にある粘土を利用して、そこから価値のあるものを作り出す。そういう意味ではおもしろさというか、楽しみはありますね。」陶芸係にはいって20年以上、ようやく手応えを感じた瞬間でした。

そんな三上さんが今取り組んでいるのは、自分が知った陶芸の楽しさを若い世代に伝えていくことです。

この日は、地元の中学生に粘土掘りから体験してもらいます。

足元に眠っている土が、手を加えることで価値あるものに変えていける、それを知ってほしいと思っています。
思いがけない陶芸係の辞令を受けておよそ30年。改めて今、思うことは…
「楽しいことよりも苦しいとかつらいとかそっちの方が多かったと思うんですけれども、今まで全力で制作をやってきてよかったなと。今になっては、焼き物を作ることについて、この環境で働くことについては自分にとって天職だったのかなって、そういうふうに今は感じています。」

三上さんは、鹿追焼を全国の人に知ってもらおうと、日用品としてだけでなく、美術品としても認められるよう、さらなる高みを目指して作品作りを続けるということです。
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