NHK札幌放送局

コロナでストレスも「災害級」

ほっとニュースweb

2021年9月3日(金)午後5時41分 更新

新型コロナウイルスの感染拡大によって、耳にする機会が増えた「災害級」という言葉。感染者の急増や医療提供体制のひっ迫状況を伝えるために使われることが多いようです。その一方で、コロナ禍で受けるストレスも、実は「災害級」と言えることが研究者の調査から見えてきました。
 (室蘭放送局 篁慶一) 

被災地のストレス調査続ける中で

2018年9月に起きた胆振東部地震では、厚真町で最大震度7の揺れを観測しました。大規模な土砂崩れも発生し、災害関連死を含めて44人が亡くなり、785人がけがをしました。住宅は5万戸近くが被害を受け、道内のほぼ全域が停電する「ブラックアウト」も発生しています。
この地震発生の2週間後から、災害心理学が専門の室蘭工業大学の前田潤教授の協力を受け、被災地の高校では生徒を対象にしたストレス調査が続けられてきました。

室蘭工業大学 前田潤教授

調査はアンケート形式で毎回6つの同じ質問が用意され、生徒に直近3日間の感情や体調について尋ねます。新型コロナの感染が拡大した去年以降も、2回の調査が実施されました。
この調査は、大きな地震が生徒の心身にどのような影響を与えるのかを追跡調査し、必要な対策や支援を考えることが本来の目的ですが、最近の結果からは新型コロナの影響が浮かび上がってきたと言います。

生徒のストレスは「災害級」

去年7月に実施された調査では、「イライラしたり、かっとしたりする」という質問に、「毎日ある」「少しある」と回答したのは計56.6%に上り、3年前の地震後に行われた調査の数値よりも20ポイント近く高くなりました。
また、「不安になったり、悲しくなったりする」という質問では計43.3%が、「食事がおいしくないし、食べたくない」では計25.2%が、「毎日ある」「少しある」と回答し、いずれも地震後を10ポイント以上上回りました。

さらに今年2月の調査では新たな傾向も見えてきました。
「イライラ」「不安・悲しさ」「食欲低下」の数値が下がる一方で、「不眠」を訴える割合が高まっていたのです。「なかなか眠ることができない」という質問に、「毎日ある」「少しある」と回答したのは計52.2%で、地震後の数値を約8ポイント上回りました。
また、「頭痛や腹痛など、体調が悪い」では、「毎日ある」「少しある」が計54.8%で、地震後と比べると約10ポイント高くなっていました。

こうした結果を踏まえ、前田教授は、コロナ禍で高校生たちが感じているストレスは「災害級」だと指摘しています。

室蘭工業大学 前田潤教授
「新型コロナの流行が続く中で、高校生たちの心身には、災害と同程度、あるいはそれ以上のストレスが表れていると思います。新型コロナの子どもたちへの影響の大きさを、私たちはもっと認識しなければなりません」  

求められるストレス緩和

では、コロナ禍で高校生たちはどんなことにストレスを感じているのか。
同じ高校で行われた別の調査では、「消毒」や「換気」などの7つの対策について、ストレスの程度を「なし」「少し」「まあまあ」「とても」の4段階に分け、それぞれどれに当てはまるか尋ねました。 

今年2月の調査結果では、「とても」ストレスを感じる対策として最も回答が多かったのは「マスクの着用」で、26.2%に上りました。次に多かったのが「外出自粛」で21.4%。3番目が「移動制限」で14.3%となっていました。前田教授はこうした状況について次のように話しています。

「さまざまな感染対策が求められ、高校生たちも協力してくれています。その一方で、自由に遊びに行けなかったり、部活動が制限されたりして、ストレスを発散できる場がなくなっています。精神的に非常にこたえていて、睡眠や体調にも影響を及ぼしているように見えます。子どもたちのストレスを緩和するという視点で、感染対策には配慮や工夫が必要だと思います。PCR検査を徹底する一方で、学校では行動の制限を緩めるなどの方法もあるのではないでしょうか」

ストレスの大きさ、自覚を

胆振東部地震のあと、高校生を対象にしたストレス調査を続ける中で、思いがけずコロナ禍での厳しいストレスの実態が数値として表れてきました。前田教授は「高校生以外の人たちも、同様の傾向が当てはまるのではないか」と考えています。
例えば、仕事をしている人の場合には、テレワークで会議が増えたり、職場でのコミュニケーションが難しくなったりする一方で、求められる仕事の量は変わらず、本人や周りが考える以上に大きなストレスを抱えているかもしれないということです。

置かれた環境や年齢の違い、ワクチン接種の有無などでストレスの受け方は当然異なってきます。ただ、まずはコロナ禍で誰もが非常に大きなストレスを抱える可能性があることを自覚しておくことが、今後の対策を考える上でも重要だと前田教授は訴えています。

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