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キーワードは「GLOBALG.A.P.」北海道農業・悲願の付加価値アップを

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2022年1月20日(木)午後6時51分 更新

スーパーで野菜を買うときに、重視するのはいったい何だろうか?
鮮度か。それとも値段か。最近はこれに加えて、ラベルをよく見るという人も増えているかもしれない。
そのうちの1つが「GLOBALG.A.P.」という認証だ。
栽培から出荷まで細かいルールで管理できている生産者が取得できる。
農業の国際認証制度として、世界で最も信頼性が高いとされている。
北海道の農産物を売り込むにあたって、この認証が武器になると目をつけた経営者がいる。(NHK札幌放送局記者 岡﨑琢真)

「GLOBALG.A.P.」で再建を

中島英利(54)。恵庭市にある地域商社「HAL GREEN」の社長を務めている。農産物を仕入れて、小売店や食品メーカーなどに販売している。

就任したのはおととし4月。

会社を立ち上げたときに、農業ビジネスを強化している北海道銀行から送り込まれた。

HAL GREEN 中島英利社長

HAL GREEN 中島英利社長
「非常に大きなプロジェクトで、農業分野だけに時間もかかるだろうなという思いはありました。一方で中小企業の位置づけなので結果も早く求められます。その辺のプレッシャーというか、葛藤は、今も持ち続けています」

会社は、もともと財団の事業だったが、赤字が続いていた。いわば、中島は再建を託された格好だった。事業を精査すると、課題ははっきりしていた。

販売先の確保だ。

仕入れる農産物の品質は高いものばかり。財団が10年あまりにわたって取引先の農家を指導した成果だった。聞くとその多くの農家が「GLOBALG.A.P.」(以下、グローバルGAP)を取得しているという。

「これは売りになるのではないか」。そう感じて、実際、取引先に話してみると、高いニーズがあることが分かってきた。

中島英利社長
「グローバルGAPに長年取り組んできたことは間違いありませんが、一方でそれを生かして販路を拡大していこうという動きはありませんでした。グローバルGAPというキーワードで新しい取引先にアプローチしました。その結果、逆に販売先から求められていたということがはっきり分かりました。アプローチが不足していたのかなと思います」

厳格基準で環境と安全性に配慮

グローバルGAPを取得するために生産者は何をしているのか。会社の取引先になっている由仁町のタマネギ農家、蓑島修一に教えてもらった。

蓑島は、6年前に第三者の会社の審査を受け、グローバルGAP認証を取得した。
例えば、農薬の管理は最も気を遣う項目だ。環境への影響を極力避けなければならないからだ。

保管場所は鍵付きのロッカー。仮に漏れた場合でも外に広がらないように農薬の下にはトレーを敷く必要がある。また、農薬を購入・使用した際は、名前、日付、それに量を逐一記録することも要求される。

もちろん、安全対策が重要なのは言うまでもない。出荷施設の近くに汚染源となる物を置かないこと、飲食・喫煙を禁じる張り紙の掲示なども必要だ。

こうした項目は200以上。年に1回、審査を受ける。

蓑島修一
「グローバルGAPに取り組むまではやっていなかったことがほとんど。私も不精な方なので認証を維持するために苦労している部分もありますが、認証のおかげで自分のタマネギの安全性に自信をもつことができています」

銀行出身社長の新戦略

高いニーズがあるグローバルGAP認証の農産物。それを知った中島は前面にアピールする戦略に打って出た。

具体的に取り組んだのが、営業の際に使うパンフレットの刷新だ。

当初、農産物のパンフレットに、グローバルGAPはほとんど触れられていなかった。新たなパンフレットには、認証を取った生産者の数をタマネギ、ジャガイモなど品目別に記載。多くの商品が対象になっていることをわかりやすく示した。

さらに営業では、銀行員としての経験を生かし、当時の取引先などからグローバルGAPに関心がありそうな企業の紹介を受けることができた。

その1つ、大手ディスカウントストアとの商談。輸出で協力しようというねらいだ。「グローバルGAPへのニーズは高まってきていますか?」。中島の問いかけに対し、担当者はうなずいた。

大手ディスカウントストア担当者
「海外の方も健康だとか環境だとかっていう意識が非常に高く、今後、私たちもグローバルGAPというものをどうお客様に伝えていくか、広げていくかというのを、ことし力をいれていきたいと考えています。ぜひ生産者の方々にも積極的に、継続的に、今後認証を取得してもらえるように提案してほしい」

こうした戦略で社長に就任してわずか1年半ほどの間で、販売先を10件増やすことができたという。グローバルGAPの価値を改めて感じている。

中島英利社長
「新規の販売先に自分たちがこれだけグローバルGAPに取り組んでいるという話をすると一様に驚かれます。販売先の中には『もっとグローバルGAPを強化して欲しい』という要望があるので、まだまだニーズは出てくると思います」

北海道農業悲願の付加価値アップを

中島自身、銀行員時代から農業には特別な思い入れがある。

銀行員時代の中島社長

原点は、17年前、出向先の東京の証券会社で株式公開の業務に携わっていた時にある。自社の強みを生かして上場する各地の野心的な企業の姿を目の当たりにし、「北海道の強みとはいったい何か」と考えたという。

その答えが農業だった。

銀行に戻った中島は上司に対して、「北海道の経済発展のためには地域の銀行も農家を支援する必要がある」と強く訴えたという。訴えは聞き入れられ、当時の銀行としては珍しい農業専門の部署の立ち上げにつながった。

以来10年以上、行内で農業分野の業務に関わり、農家向けの融資商品の開発や経営スキルを学んでもらうためのセミナーの開催などに取り組んできた。

そんな中島がおととし、打診されたのが、新たに立ち上げる農産物専門の商社のトップ。銀行の側ではなく、みずからが農業に関わる仕事をするということになった。

中島英利社長
「長年取り組んできた農業分野の経験を最大限生かせるという点は非常に魅力でした。株式公開の業務でベンチャー企業の支援に関わっていた時、いずれ自分がベンチャー企業の設立に関われるのであれば農業分野のプロジェクトを進めたいと思っていたので、まさにその思いがかたちになりました」

農業に並々ならぬ思い入れがある中島が目指すのは、長年課題であり続けている北海道産農作物の付加価値向上。安定供給に主眼が置かれ、「安く大量に」売られることが多かった北海道の農作物の役割に一石を投じたいという。

そのために武器となるのがグローバルGAPだ。

中島英利社長
「特に海外はグローバルGAPのニーズが強いので、取扱量が多いのは輸出にあたって大きな強みとなります。輸出額は3年後までに今の30倍となる3億円規模を目指す。北海道産の農産物に少しでも価値をつけることで販売量を増やし、農業の発展につなげたい」

(敬称略)
2022年1月20日

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