NHK札幌放送局

釧路にマンボウ!? 海洋熱波が変える漁業 web

ほっとニュース北海道

2020年11月27日(金)午後6時56分 更新

サケやサンマ、イカなどの北海道を代表する魚介類は記録的な不漁が続いている。 それだけでなく、なんとマンボウやブリなど暖かい海を好む魚が近年、多く網にかかる。 こうした海の異変の一因には「海洋熱波」という特異な現象があることが分かってきた。 急激に変化する海で、漁業関係者は生き残りを模索している。 (釧路放送局記者 田村佑輔)。

釧路沖にマンボウ!?

9月。私は北海道釧路沖で秋サケ定置網漁の船に乗っていた。
取材でお世話になっている昆布森漁協所属の第7共進丸では、マンボウがよく網にかかっているという話を聞いたからだ。
午前3時に港を出て、網をたぐり寄せる漁師たち。暗い海から姿を現したのは、体長2メートルはある巨大なマンボウだった。それも1匹でなく、何匹も網にかかっていた。釧路では需要がないため、慎重に網から外して海に逃がすしかない。

漁の邪魔でしかないマンボウに、船頭の川原田良己さんは「小さいものなら、小舟が沈むくらい入っていたこともある」と苦笑していた。

その一方で、主力のサケの水揚げはピーク時の1割ほどにまで減少していて、漁業者にとっては極めて苦しい状況が続いている。

海の異変 海洋熱波

北海道ではサケだけでなく、サンマやイカなども記録的な不漁が続く。不漁に共通する原因は何なのか、道内外の専門家に取材を続けていると「“海洋熱波”に注目が集まっている」という話が出てきた。
海洋熱波は、海水温が平年と比べて極端に高い状態が5日以上続くという現象だ。世界中の海で発生し、専門家の間でも近年注目度が高まっているという。

海水温の緩やかな上昇とは違い、極端な高水温が続くことで、生態系への影響が指摘されている。
調べてみると、マンボウが網にかかっていたころ、釧路沖でも20日連続で海洋熱波が発生していた。

漁業関係者に突き付けられた「チェンジ」

北海道の海で何が起きているのか。明快に答えてくれたのは北海道大学の桜井泰憲名誉教授だ。50年に渡って北海道の海を中心に、水産資源の動向や生態系などを研究してきた。

桜井名誉教授は海洋熱波が頻発することで、サケやサンマが寄りつきにくく、マンボウやブリが回遊しやすい海になっているという見方を示してくれた。

桜井名誉教授
「海で3度から4度も水温が上がるということは、大気にすれば15度から20度くらいの変化に相当します。ホットスポット的に急激に海水温が高いところができると、そこから魚がガラッと変わってしまう」

世界各地で起きている海洋熱波が北海道での著しい不漁の一因になっているという指摘。しかも、今後も発生頻度は高くなっていくという。
これまでの魚がとれなくなり、なじみのない魚がとれる異変にどう対応していくのか。

とれる魚を“売れる魚”へ

新しくとれるようになった魚を“売れる魚”へ変えようという動きも出てきている。
知床半島の羅臼町では、3年ほど前からブリの水揚げが急増していることから、羅臼のブランドとして売り出せないか、模索が始まっている。

サケの定置網漁を行う葛西良浩さんの船では、去年、ブリの水揚げ額が不漁のサケを超えるほどになったという。10月末、船に乗せてもらうと、この日水揚げされたサケは100匹足らず。その代わりに、まるまると太ったブリが1000匹以上入っていた。こうした日は珍しくないそうだ。

一般的に北海道でブリの単価はサケのおよそ半分と安価で取り引きされる。このため、葛西さんたちは、この日、船1隻で10トン以上にもなるブリを、1匹ずつ素早く血抜きをすることで鮮度を保っていた。
羅臼のブリはサイズも大きく、脂ものっているため、北陸の「寒ブリ」に匹敵するブランドとして売り出せれば、生き残りにつながると期待しているのだ。

サケ漁師 葛西良浩さん
「南の魚ばかりがとれるのも考えもの。ただ、少しでも付加価値をつけて、1円でも高く売ってみんなの生活を守ることも大事な仕事だ」

漁協も“ブランド化”に力を入れている。10月に札幌市内のスーパーで行われた羅臼産ブリの販売イベントでは、売れ行きも好調。

ただ、サケの不漁を補うほどには至っておらず、まだまだ漁業者にとって厳しい状況は続いている。

羅臼漁協販売担当 森毅さん
「まだまだ認知度が低いのでPRをして羅臼の美味しいぶりを知ってもらいたい」

「新しい魚」に対応しきれるのか

新しい魚への対応が難しい現場もある。
サンマの水揚げ日本一の根室市で、サンマの加工を手がける水産加工会社の「兼由」を訪ねた。
この会社ではサンマの長引く不漁を受けて、3年ほど前からサンマのレトルト製品に力を入れてきた。濱屋高男社長は、数億円をかけて新しい工場を建てるなど、思い切った設備投資も行ってきた。

しかし、ことしの水揚げは過去最低の水準で、仕入れるサンマの量も激減している。
濱屋社長は、新しくとれる魚を扱いたい考えはあるものの、新たな設備投資も負担が大きいため、売れるか分からない新しい魚への転換は簡単ではないという。

「水産加工業は、いままでの継続性というのが最優先される部分もあるので、なかなか変化に対応するのが難しい。魚種転換といっても、設備投資も必要な部分もあるのでなかなか厳しい」

濱屋社長は厳しい表情を崩さない。

漁業の生き残りは

北海道の漁業はこれまでも豊漁や不漁を繰り返しながら、私たちの食卓を支えてきた。しかし、海洋熱波が頻発することで、海がさらに様変わりし、今までの経験が通用しない状況になっていくという指摘もある。今とれているブリなどの魚が今後もとれ続ける保証はなく、漁業関係者たちは難しい課題を突きつけられている。
北海道大学の桜井名誉教授も「予測が難しい海洋熱波の状況に応じてシナリオを描き、適応していかないといけない」と語る。海洋熱波の影響は、決して北海道の漁業者だけの問題ではなく、各地で顕在化してくると取材を通して実感している。まずは、地域が一体になって漁業の生き残りを支えることが必要だ。

(釧路局 記者 田村佑輔)

2020年11月27日

チェンジ ~北海道に迫る変化~

関連情報

年末年始どう過ごした?

ほっとニュース北海道

2021年1月5日(火)午後4時40分 更新

邪神ちゃんと自治体 コラボの謎 予告

ほっとニュース北海道

2020年11月2日(月)午後3時35分 更新

eスポーツでレバンガと留辺蘂高校連携

ほっとニュース北海道

2021年1月29日(金)午前11時40分 更新

上に戻る