NHK札幌放送局

消毒用アルコールで体調が… #ナットクとかち

十勝チャンネル

2020年9月18日(金)午後6時01分 更新

ナットク!とかちchは 私 困ってます 新型コロナウイルス をテーマに十勝の皆さんの疑問や困りごとにこたえるコンテンツを目指しています。
コロナ禍で、町のあちこちで使われるようになった消毒用アルコールで、困る人がいることがわかりました。

今回は番組に寄せられたこちらの投稿を受けて取材をはじめました。

40代 女性
「新型コロナウイルス対策でアルコール消毒をあちこちで実施していますが、非常に困っています。特に換気の悪いところやバス車内で揮発したアルコールを吸い込むと頭痛と吐き気がします。先日はバス乗車口でアルコールを使った人がいて具合が悪くなり、目的地まで我慢しましたが下車後しばらく動けなくなりました」

消毒用アルコールへの悩み

投稿をいただいた十勝地方に住む40代の女性を訪ねました。投稿のきっかけとなった消毒用アルコールへの悩みについて改めて事情を聞きました。

女性
「例えばバスの車内など閉め切った場所で、たくさんの人がアルコール消毒をすると、揮発したアルコールを吸い込むことで、頭痛がしたり吐き気がしたりという症状が出ます。私は車を運転できないので、バスを途中下車してタクシーに乗りかえないといけなくなるようなこともありました」

いまでは、街のいたるところで見かけるアルコール消毒液。ふだん何気なく使っていますが、女性はそのアルコール消毒に困っているとのこと。スーパーに買い物に行った際にはつらい経験をしたといいます。

女性
「店員さんが店頭付近でアルコールを持ってお客さまに順番にかけていっているという状況でした。私の順番になったときに『ちょっと待って』と言ったのですが『身を守るためです』と強く言われたことはショックでした」

この時、女性は、店側が用意した使い捨ての手袋を使うことでアルコール消毒を避けられました。それでも、入店の際に周囲の人が行ったアルコール消毒で、体調が悪くなったということです。

アルコールが化学物質過敏症の原因物質に

アルコールで体調を崩す女性の症状について、アレルギーに詳しい医師に取材しました。帯広厚生病院の髙村圭医師は、化学物質によって体調不良を引き起こす、化学物質過敏症の症状のひとつだといいます。

化学物質過敏症とは、体が身の回りのごくわずかな化学物質に反応してしまう病気で、柔軟剤や消臭スプレーなどの人工的な香りで体調不良を引き起こしてしまうこともあります。症状が重い場合には、外に出ることや働くこともできず、社会とのつながりが断たれてしまう人もいるといいます。

帯広厚生病院 髙村圭医師  
「根本的な治療薬があるわけではないです。アルコールなどの原因物質から避けるのがいちばんの方法なのですが、それを日常生活でするのは非常に難しいという問題があります」

髙村医師は、消毒用アルコールが化学物質過敏症を引き起こすことが、まだ一般には広く知られていないと指摘します。社会の中で症状への理解を進めることが必要だといいます。

帯広厚生病院 髙村圭医師
「広く知られていないこともひとつの大きな問題です。本当はアルコールという化学物質過敏症状にもかかわらず実質的に放置されてしまっている可能性があります」

“症状への理解を”

厚生労働省は新型コロナウイルスの感染予防対策としては「石けんをつけて手洗いを丁寧に行うことで十分にウイルスを除去することができる」としています。女性も感染を防ぐため外出先ではこまめに手洗いを続けています。

女性は、感染拡大を防ぐアルコール消毒の必要性を理解しつつも、こう訴えています。

「体質によってアルコールが使えない人、アルコールが人体に影響する人もいるんだよっていうことをちょっとだけ頭の中に入れておいてほしいなと思います」
取材した原祢秀平記者は
「アルコールによる化学物質過敏症」。恥ずかしながら投稿をいただくまでそのことを知りませんでした。「お酒に弱い人がいる」くらいの認識はあったものの、揮発したアルコールで体調不良になってしまう人がいるなんて…。私のように知らない人は多いのではないか、少しでも広く知ってもらうことで理解が深まって欲しいという思いで取材を始めました。取材を進めると少しずつ実態がわかってきました。広く知られていないことで症状が理解されづらいこと、症状が多岐にわたり特定されづらいこと…。さらに追い打ちをかけたのがコロナ禍でのアルコール消毒の増加です。このような状況で「アルコール消毒をやめてほしい」と強く訴えかけることも難しいはずです。だからこそ声を上げづらい中でいただいたこの投稿には真剣に向き合いたいと思いました。投稿をいただいた女性以外にも、別の化学物質過敏症の症状をお持ちの方にもお話を伺いました。ありがとうございました。今回の放送で、こうした症状があるということに少しでもみなさんが気付くきっかけになればうれしいですし、今後も理解が深まるように取材を進めていきたいと思います。

2020年9月15日放送



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