NHK札幌放送局

オープンデータをどう使う?どう出していく?

札幌局広報・事業

2021年10月27日(水)午後6時30分 更新

10月16日(土)にNHK札幌拠点放送局で「北海道オープンイノベーション2021~NoMapsアフタートーク」トークイベントを開催しました。Code for Japanフェローの古川泰人氏、西日本新聞社やGoogleを経て今年NHKに入局した井上直樹、モデレーターに北海道新聞社報道センター記者の岩崎志帆氏。実はオープンデータは宝の山。出す側、使う側などあらゆる視点から、これからの地域課題解決のためのオープンデータの可能性を探った。

本⽇モデレーターを務めます、北海道新聞の記者の岩崎と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

まず今回の趣旨です。近年オープンデータを活⽤して社会課題の解決に挑むシビックテックという取り組みやデータを分析したり可視化したりして報道するデータジャーナリズムという調査報道などが注⽬を集めています。こうしたデータを軸とした活動でどのようなことができるのかというのを昨⽇(10月15日NoMaps2021)のカンファレンスでそれぞれの分野の第1⼈者であるおふた⽅に最新の事例をご紹介いただいておりました。本⽇はさらに、そのおさらいと裏話、そして今後の展望についてもお話を伺いたいと思います。


私からはまず、シビックテック、オープンデータ、あとこれらとジャーナリズムについてお話させていただきます。オープンデータって聞いたことある⼈はどれぐらいいますか?

(参加者の半分くらいが挙手)…おー結構いらっしゃいますね。


私はCode for JapanやCode for Sapporoといった団体でシビックテックという活動をしています。あと、総務省で地域情報化アドバイザーといって、いろんな自治体にお邪魔して、オープンデータの推進などについての⽀援活動を行っています。このほかにも酪農学園大学で特任講師をやったりとかもしています。また、去年、NoMaps2020の時には台湾のデジタル担当大臣であるオードリー・タンさんとお話させていただいたりもしました。このほかにも活動としては、北海道のコロナに関するデータを見やすいグラフなどに変換して北海道の皆さんにご覧いただくようなサイトをつくるグループに所属し、運営や開発に関わっておりました。
2019年にNHKの皆さんと一緒に、胆振東部地震の時のITやデータは何ができたのか?…といったシンポジウムに出させていただいて、その時のご縁で今回呼んでいただいています。よろしくおねがいいたします。


シビックテックとは?

さて、シビックテックって何だろうというお話ををます。何々テックって割と最近増えましたよね。例えば、ファイナンスのフィンテックなどですね。社会をアップデートしていくために、テクノロジーを使った新しい形の市⺠活動とも言われます。特徴的なのは、Code for Japanの東さんのnoteから引用したこの図にあるように、市⺠とテクノロジーの間で上⼿く「活⽤する」「活⽤される」という双方向の関係性を多様な立場の人とともに課題を解決していこうという点です。

国内では北海道から沖縄まで様々なサイズのコミュニティとも言われるグループがあり、その数は80以上ともいわれています。これは⽇本だけじゃなくて世界中にも同様のグループがあり、ネット上で情報交換が行われたり、データやプログラムの連帯が結ばれています。台湾のオードリー・タンさんも元々はシビックテックコミュニティの中心メンバーでして、様々な経緯を経てデジタル大臣に就任された経緯もあります。日本でもシビックテックのコミュニティから様々な方がデジタル庁のスタッフとして参加しており、当初からは飛躍的に社会との関わりが重要になってきたと感じています。

Code for Japanは、Slackという部屋が沢山あるチャットで交流が行われています。私が参加した当初、Slackのメンバーは100から200⼈ぐらいだったのですが、昨日確認したら5809⼈にもなっていました。先程の東さんのグラフで示されていますが、2020年の初頭から急激にメンバーが増加しています(井上さん「私もそのころ参加しました!」)。

コロナ禍での変化

この増加はなぜでしょう?そうですね、コロナ禍です。このころ、Code for Japanは誰でも自由に使えるオープンソースの形でコミュニティのメンバーや東京都と協力して新型コロナウイルス感染症対策サイトを開発・公開しました。このオープンソースの仕組みと各地のオープンデータにより、各地域のシビックテックコミュニティでもわずか数日でそのクローンを立ち上げることができ、日本各地の人々の不安を素早くサポートする役目を果たしました。この一連の流れは国内外のメディアやサイトでも報じられ、テクノロジーとデータで社会を良くするというシビックテックの活動に対して多くの方が共感し、Slackにもたくさんの参加するようになったとみられます。これは311(東日本大震災)のときのシビックテックの活動のときぐらい⼤きな出来事だったかなと思ってますし、将来誰かがシビックテックの教科書を書くならば必ず入れる項目じゃないかなーなんて考えています。

2013年頃からシビックテックコミュティではアプリケーションなどを作っていました。たとえば私も参加していた「さっぽろ保育園マップ」を紹介します。そのころ、札幌市のホームページには保育園の住所と名前が羅列された表だけが掲載されており、保育園を探すにも住所と位置がすぐわからない方や、転勤で札幌にいらっしゃる方にとっては不便な状況でした。このアプリでは地図上で保育園や小中学校、学区などの位置が表示され、親御さんの勤務先、きょうだいの学校、おじいちゃんおばあちゃん宅の場所も考えながら保育園探しに役立つ仕組みをめざしました。また、プログラムを前述の誰でも使えるオープンソースにしたことで、札幌以外の親御さんたちもサポートするプロジェクトに育てることができ、オープンデータ活用に関する賞などいただくことができました。
このほかにも、5374(ごみなし)という有名なアプリもあります。ゴミカレンダーは行政から配布されていますが、すぐ今⽇は何のゴミの日か見たい!というニーズをもとに金沢発で作られたアプリで、これもオープンソースで公開されたため日本各地に広がっていました。また、このアプリを導入するためには、ちゃんと整理整頓されたゴミ収集日のオープンデータが必要ですので、行政側がオープンデータを整備するきっかけにもなっています。この姉妹版としては、今日会場にいらしている川岡さんという方が作られた「札幌ごみなげカレンダー」というスマートスピーカー用のアプリもあります。このアプリでは、スマートスピーカーに向かって「今日はなんのゴミの日?」と尋ねると「今日は燃えるゴミの日だよ」と音声で答えてくれる仕組みです。


このように、当初からシビックテックコミュニティは地域の困りごとをきっかけに、オープンデータやオープンソースを使って、アプリケーション開発を行ってきており、この流れが新型コロナウイルス感染症対策サイトやその地域版へとつながっていった経緯があります。

現在も各コミュニティではアプリケーションを作ったり、さまざまな活動を行っているのですが、最近ではその流れや活動が行政側でも応用されている事例も増えています。ひとつは参加者で熟議を行う「Decidim(デシジム)」というオンラインの仕組みがあります。もともとDecidimはバルセロナ市やニューヨーク市で実績を上げていたオープンソースのプログラムを日本語版に更新して、兵庫県加古川市など日本各地に自治体で導入が進んでいます。例えばある条例案に対して、オンライン上で対等かつ建設的に広く意⾒を募る仕組みです。加古川市では地域の高校生もDecidimのワークショップに参加して、市民として意見を出すなどの活動が行われています。
また同様な動きとして、内閣官房やデジタル庁のアイデアボックスもあります。こちらはいわば現代の目安箱ですね。ここでの提案はすべての人に可視化され、良い内容には投票もできる仕組みになっています。これらテクノロジーやweb技術を活用した新しい社会参加の形は日本だけでなく世界でも増加傾向にあるとおもいます。これらの開発や運営を行っているのはシビックテックコミュニティのメンバーが多く、これまで培ってきた経験や交流がうまく循環しているからなのかもしれません。


従来から続く様々なプロジェクトで重要なことは、プログラマーやデータ「だけ」が偉いわけではないという視点を、仕掛ける人たちが十分理解していることです。ちゃんと市民も行政も含めた地域の多種多様な⼈たちとどう折り合いをつけて、ちょっとでも良くしていこうと、いつもコミュニティの方々は悩みつつ前に進めているとおもいます。


シビックテックとジャーナリズムの対比

今回NHKさんからお声がけをいただいた際の、私の動機や好奇心についてお話させてください。シビックテックを築く主な要素として、自由に使えるデータである「Open Data(オープンデータ)」、みんなで使えるプログラム「Open Source(オープンソース)」、利用者から設計する「Service Design(サービスデザイン)」、市民主体へ成長する「Civic Empowerment(シビックエンパワーメント)」、信頼性・透明性を指す「Transparency(トランスパレンシー)」、参加や協働・共創を指す「Participation(パーティシペーション)」…などが特徴としてあげられると考えています。けっこうこの考え方はITにおけるオープンソースコミュニティのやり方がベースになっているとされていて、それが現実の社会活動そのものにも適用されてきたのではないかな、と考えています。

もちろん様々なゴールはあるとおもいますが、日本や地方のジャーナリズムではこれらの要素はあるのかな…という関心がありました。海外のオープンデータやシビックテックのカンファレンスでは、ジャーナリストたちも参加して、ツールやデータを駆使して政府や社会実装に関わる発表や意見交換をして驚いたこともあります。先日もブラジルの新聞記者が様々なセンサーデータやオープンソースツールを駆使して、PM2.5とコロナ状況の関係について解析や可視化を行い、否認主義とも言われるボルソナロ大統領にエビデンスで対抗している発表を見て大変刺激的でした。


2020年オープンデータ大爆発

さてオープンデータのお話をします。オープンデータのざっくりとした定義ですが「機械可読な形式」「二次利用が自由」「無料で配布」などの条件下で公開されるデータを指します。どんなデータかというと、行政が出す避難所の位置や名称、種別のリストや、人口統計の推移などに関するデータなどを指しますし、著作権が切れた写真や絵画なども含まれます。また、世界的にはOECDやG20などが率先してオープンデータを推進しており、日本政府も各自治体に法律で義務化しています。また、北海道では道庁の喜多さんらの頑張りもあってけっこう広まってきましたが、もうひと踏ん張りなところもあります。また、ビジネスや社会的活動にも活用が拡大していて、ビジネスマーケティングの業界などでは、人口年齢分布や立地条件などといったオープンデータの活用が進んでいます。

このオープンデータ、やはり2020年のコロナ渦では、なくてはならないデータになったと思います。コロナの状況が良くないときには、世界や日本各地でどの程度感染者数が出たのか、病院はどうなっているのか、ワクチンはどうなっているかとみなさんほぼ毎日に気にされていたかと思います。これらの数値のほとんどはオープンデータによって支えられており、そのオープンデータがメディアからご近所の話題にまで広がったことはこれまでそうそうなかったのではないでしょうか。
たとえばアメリカのジョンズ・ホプキンス大学という名前は耳にされた事があると思いますが、この大学はコロナ感染者数に関するデータをGitHubというプログラマーのための超巨大SNS図書館のようなサイトに掲載しています。ここのサイトでは17000回コピー(フォーク)されており、様々なプログラムやサイトに活用されています。比較はしていないのですが、GitHubにおけるデータのカテゴリとしてかなりの回数ではないかと思います。また、北海道庁で公開されている感染者数のデータも先日まで86万回ものダウンロードがあり、⾊々なシステムやwebサイトに使われているデータになっています。


オープンデータの本来の狙いって

先程オープンデータは「機械可読な形式」「二次利用が自由」「無料で配布」などの条件下で公開されるデータとお話しましたが、行政機関はなぜこんなことをはじめたのでしょうか?

こちらは、2017年に内閣府が提唱したオープンデータの狙いです。「透明性・信頼性の確保」「協働による経済効率化」「行政の高度化・効率化」が謳われています。

全て政府のやること素晴らしい!と称賛しているわけではないのですが(笑)、この方針は世界的なベクトルにも沿っていますし、現在様々な分野ですすめられているDXにも通じると考えています。たとえば、80カ国ぐらいが加盟しているOpen Government Partnershipというグループでは「開かれた政府」のビジョンはを「透明性」「説明責任」「技術とイノベーション」「市民参加」と定めており、内閣府が指し示したオープンデータに関する方針や前述のシビックテックの骨格にも共通項がみられます。


国内でのオープンデータ

では国内でのオープンデータの状況はどうなっているかというと、デジタル庁が10月12⽇に発表した統計で66.7%の⾃治体が取り組み済み、つまり何らかの形でオープンデータを出しているという調査結果が出ています。さきほどの取り組み済み自治体でも最低5〜6項目は出ているはずなので、地方メディアであってもとりあえずエクセル使えればオープンデータで記事が書ける状況になっていると思います。ただし、ネ申エクセルやスキャンpdfやHTMLそのままなどが公開されているため加工に手間取ったりして、データの品質は必ずしも良くないことも多々あるため、そこは今後利用者としてのメディアさん側からも対話と提案を続けていかなくてはいけないかなと思っています。
ここまでシビックテックとオープンデータ、そしてジャーナリズムとの関係についてイントロ的にお話させていただきました、では井上さんからオープンデータを使った記事作成の事例などをご紹介いただくということで、私の漫談は終わりたいと思います。

古川さんありがとうございました。オープンデータのこれまでの潮流や意義についてお話を伺いました。そこで今度は、井上さんに、実際に報道で活⽤した事例についてお話を伺いたいと思います。それでは井上さんよろしくお願いいたします。

NHKの井上直樹と申します。今⽇はありがとうございます。⾃⼰紹介を兼ねて、オープンデータあるいは、オープンデータに近いようなデータを使った報道事例を紹介できればと思います。私はNHKには今年2⽉に⼊りました。それまでは地⽅新聞で記者をしたり、Googleで報道⽀援の仕事していました。

今⽇お話したいことは3つあります。
1つ目は、オープンデータを活⽤した報道を僕⾃⾝も含めて増やしていきたいと思っています。
2つ目は、報道機関の仕事は、これまで記事やテレビ放送だったと思いますが、私⾃⾝の理想としては、取材した成果をデータとして公表したいと思っています。
3つ目に、古川さんが活動されているシビックテックのコミュニティの方々とも連携して、新しい取り組みができないかなと思っています。

議事録の約20年分を分析

報道事例をいくつか、私⾃⾝の事例も含めてご紹介します。1つ⽬は、福岡市議会の議事録を使った報道です。議事録が、厳密には「オープンデータ」と呼べるのか議論がありますが、都道府県や主要都市には議事録が検索できるサイトがあります。私⾃⾝は西日本新聞の記者として福岡で働いていた際、議会ってあんまり馴染みがないので、なんとか市民の方に関⼼を持ってほしいなと思ってました。そして有志のエンジニアの⽅と⼀緒に、議事録の約20年分を分析して報道しました。
20年分の議事録をサイトから引っ張って、地名に着目をして、議員などが「どこについて」「何回しゃべっているか」を地図上で可視化しました。議会ではどの街について話題になってて、どこについては話題になっていないかという「偏り」が⾒えるかもしれないと思いました。約20年間、本会議でも委員会でも誰も⼀回も喋らなかった地名があることを記事にしました。データだけではなく、発⾔がされなかった現場に⾏って、住⺠の⽅が困っていないか、などの取材をして報道しています。

ミャンマーでの女性の死の真相

私の最近の仕事として、オープンデータではないのですが、インターネットで誰でも⾒ることができる情報という意味で、オープンな情報を使った報道事例をご紹介します。今年の新聞協会賞を頂きました。SNSに上がっている映像を分析して取材をする事例です。
今年2⽉にミャンマーでクーデターが発生し、現地で民主化を求めるデモが⾏われてました。それに対して軍の弾圧、制圧があり、デモをしていた⼥性が亡くなってしまいました。女性は軍に撃たれたとされていたのですが、軍は否定していました。現場で撮られていた、多くの市民がスマホで撮った映像があり、ツイッターやフェイスブックにアップされていました。私も⼊ったチームは、そうしたネット上にある映像などをヒントに、現場の状況を調べました。SNSにある映像をつなげ、例えば映像に写っている建物はどこにあるのか、いつ映像は撮影されたかをGoogle Earthなどのツールを使って探していきました。

【参考】WEB特集「エンジェルさん」の死が問いかけるミャンマー軍の非道


わたしの高校の校則は一般的?

NHK以外のデータを使った報道事例として、私が好きなものをご紹介します。中国新聞という広島県などで活動している新聞社の事例です。情報をオープンにしたデータベースなのですが、中国新聞は広島県の公⽴⾼校の校則を検索できるサイトを作りました。どんな校則があるかを⾒れるサイトです。例えば下着の⾊を指定したり、茶色い髪の色を登録しないといけないという今の時代どうだろうか、と思うルールなどがありました。報道の根拠となるだけでなく、現場の校則改正の議論のベースになったりする可能性があるデータベースだと思います。

私個人も、理想としては報道とデータ公開の両方に取り組みたいと思っています。例えばNHKはCode for Japanと⼀緒に教育に関するハッカソンを開催します。

ハッカソンというのはエンジニアやデザイナー、あるいは記者が参加して、何か新しいプロダクトを一緒に作ろうというイベントです。このイベント限定ですが、NHKの⼦ども番組の動画や、ニュースを活⽤できるAPIという仕組みを⽤意します。NHKが持っている素材を使って、シビックテックの皆さんと何か作れないかという実験をやってみようと思っています。
また、話題提供として、僕⾃⾝も考えたいと思っていることですが、我々がユーザーとして使っているサービスが集めたデータは、もっと社会に還元してもいいんじゃないかなと個⼈的に思ってます。


北海道胆振東部地震で各地域で必要だったなものは?

例えば北海道胆振東部地震など災害時に検索サイトで検索が多かったキーワードがあります。そうした検索状況は、被災地でどのような情報や物資が必要かというヒントになることがあります。我々がユーザーであり、そのデータはもしかすると社会的に⼤事になる可能性もある時、⺠間企業も含めて社会に還元してもいいのではないかなとも思ってます。


北海道のAED設置施設をマップ化してみると…

次に、オープンデータの使いやすさについて考えたいと思い、ご参考まで北海道のオープンデータのサイトを使ってみました。北海道のAED設置施設⼀覧というデータがあり、こちらをダウンロードすると位置情報や施設の一覧情報が取得できます。

このような情報があれば、例えばGoogleマイマップという地図を作れるツールでAED設置施設を確認できる地図がつくれます。すごく簡単にAEDの地図が作れます。これは良いことではあるんですけど、右の地図をご覧いただくと、地図は道南ばかりピンが落ちています。なぜかというと、公開されているデータは、Excelの「シート」が分かれてまして、シートを分けてしまうと機械が簡単には読み取ってくれないんです。1つのシートにデータがまとまっていると、もっと簡単に北海道全体のAED地図ができると思います。つまりデータのより良い公開⽅法についても、実際に利⽤しながら、⾏政と話し合っていくことも大切だと思います。

これは“あかん”データとしていい学びの例ですね。部署担当者とその上司の理解には慣例上よくても、データシステム的には辛いことこの上ないですし、一見効率的なようで結局全体的な活用にとてもコストがかかります。とはいえ、伝統的なネ申エクセルを現場レベルでとにかく維持したい行政部門もまだまだあるようです。

会場の皆さんからも結構ご質問をいただいています。


(質問1)シビックテックとジャーナリズムの協働みたいなものは可能性あるのでしょうか

協働は今後もっと進むといいなあと思います。シビックテックの人がジャーナリストの方となにかすると持続しないので、ジャーナリストの方の中に、シビックテック的なカルチャーを取り込む形がよいかもしれません。今⽇もジャーナリストの⽅もいらっしゃっていると思うのですが、まずエビデンスとして使えるオープンデータを記事でもっと使うっていうのはさらに必要になってきています。いまはダメって意味じゃないですけど、国内や地方メディアではこのような初歩のデータジャーナリズム活動すらあまり多くは進んでないので、伸びしろがあると思ってます。

シビックテックとジャーナリズムの連携はすごく必要だと思ってまして。今⽇ご紹介したあの福岡の市議会の取り組みもですね、⼼あるエンジニアの⽅が協力してくれました。各地にはシビックテックやデータ分析のグループやコミュニティがあり、勉強会でお会いした⽅と⼀緒に進めました。シビックテックとジャーナリズムの関係者がともに、社会的に意義のある取り組みをする事例が広がっていくといいなと思っています。


(質問2)オープンデータってどこからどこまで?

大雑把な答えになりますが、行政のデータに関しては基本的に税⾦をもとに作られているデータなので、プライバシーに関わるものなど以外の差し障りのないデータは、納税者の皆様に還元しましょう!がベースの考えです。なので行政のホームページで公開している情報はそもそも差し障りがないという判断がでて掲載されているため、北海道庁などのようにホームページまるごと全部オープンデータですと宣⾔を出すパターンも増えてきました。

昨⽇あったご質問の中で、「情報をオープンにすることで、公開側が⾃分たちのネガティブな部分が知られてしまう、というネガティブな反応があるんじゃないでしょうか?」というのがあったんですが、公開することをそもそもどうお考えでしょうか?

そうですね、よく聞かれます。逆を考えるといんですが、災害リスク情報やコロナの情報とか、行政がネガティブ情報を知っていたのに出していないほうが代償が大きい場合があります。透明性といっしょに信頼度をあげるということのベースの考えであれば、出せるものは出したほうがよいのでは、と思います。行政の方も人の子ですし、もし間違いがあれば、あらごめんなさい直します、というのが、オープンデータでもよくある話です。
皆さんスマートフォンとがゲームアプリなどでもでも同様ですが、バグがあれば見つけた方が窓口にやさしく報告してアップデートしていける社会ってすごくこれから⼤事じゃないかなと考えています。もちろんそこは誤謬性や機密性とのバランスになるので難しい面もあると思いますが、アップデートすら認めないで何でも誰かのせいにして潰してストレス解消しているのは、令和のやり⽅じゃないと思っています。

確かに批判ばかりしているよりも、どんどん直すべきものを直して⾏った⽅が良いのかもしれないですね。井上さん、オープンデータにこれまでなっていなかったものを⾏政などにデータ化してもらえたというようなことはこれまでございましたか。例えば要望してこのデータを出してもらったとかですね。

そうですね、⺠間企業が協力してくれた事例ありまして。トラックの走行データを報道に使ったことがあります。トラックがどこを走って、速度はどれぐらいだったかというデータを共有していただき、急ブレーキの多発地点を調べました。商⽤のトラックデータを持っている企業に協力してもらい、急ブレーキが多い地点について記事と地図を発表したということがありました。

⺠間企業が協⼒してくれる事例というのはなかなか凄いですね。

それってプローブデータですよね?(井上:そうです)
運送会社さんはトラックにGPSや加速度センサーをつけてて運行記録として毎⽇かなりのデータを取ってるので、お願いして利用させていただく事例などはよくある話ですよね(そうですね)

ありがとうございます。会場の皆様からのご質問をどんどんお聞きしたいなと思っております。


(質問3)素⼈質問で恐縮ですが、誰もが共有できる豊富な情報は市⺠に認識の違いや勘違いを⽣むことはないのでしょうか、特にコロナ関連でこの動きが進んだということで情報拡散による新たな分断を⽣むことはないのでしょうか。またそうしないための取り組みなどありましたら教えてください。

情報の認識の違いというのはおっしゃる通りで、同じ数字を⾒ても、多いと感じるか少ないと感じるかは、⼈それぞれだと思います。さっきの議事録の事例で⾔うとですね、例えば、ある街についてたくさんしゃべってる議員がいて、その議員は地域のことを考えてる「良い」議員なのか、⾃分の選挙区のことしか考えてない議員なのか、はどちらとも⾔えるので、データは公開しつつも、詳しく報道する時は、その背景も取材して出すというのが丁寧だと思っています。数字の評価は気をつけないといけないなと思ってます。

確かにそうですね。ただ数字を⾒るだけじゃなくて本当の事情というのを⼈の⼿で取材したりお話聞くっていうのは⼤事な作業ですね。そして古川さんもこれに関しては新型コロナまとめサイトなどで、感染者数を表⽰されたりしている中で思うこととかございましたか?

コロナ前ぐらいは、データエビデンスがあるのでそこで議論できますよねーっていう楽観的スタンスはけっこうあったのですが、コロナ渦のさなかではTwitterでバズりたいからある地域を極端に真っ⾚にするといった表現⽅法や、感染されたかたの移動軌跡を出したり、独特すぎる解釈アプローチなどのアンチパターンがそれなりに出てきて、ある意味センシティブな事象に対して勉強すべき事象が溜まったのではと思ってます。またこの現象は日本だけでなく、海外でも論考が行われているので、良い学びにしなくてはいけないと考えています。

解釈の前にデータも⽰されているので、両⽅を⽬にしていただくことが可能ということですね。続いてのご質問です。


(質問4)北海道のシビックテックの活⽤は⽇本で相対的に⾒て進んでいる⽅なのでしょうか?特に進んでいる地域の事例などを教えて頂きたいです。

北海道はさほど進んでいないかもしれません、プレイヤー数の割には課題が多すぎ、物理的な距離がある、あと良いデータがあまり提供されてない…など、ないない尽くしでで申し訳ないです。ただできることから考えると、次のステージに来てるかなと思ってます。今オンラインコミュニケーションも皆さん慣れてきたし、⾏政やほかの業界の⽅とかと一緒に混ざりあいながら、前述のシビックテックやオープンソース的な文化をそこかしこに差し込んでいくことはできると考えていて、このような流れは国内の都市部以外でも増えてきているとおもいます。

古川さん、東⽇本⼤震災の時にも北海道から関東の⼿助けをされていらっしゃったんですよね。その意味では、地域や場所に捉われない活動というのは、できる分野なのかもしれないなとも思います。

そうですね、遠くからオンラインでの支援はそこそこ効果的です。でも、最後にラスト5mでおばあちゃんに話しかけれるのは地域の⼈です。NHK北海道の「ローカルフレンズ」に関わっているみなさんにも似たところもあると思うのですが、やっぱり物理的にそこに住んでることは最強だなと思います。ツールやデータは便利な道具であって、地域に住んで取り組んできた方もしっかりリスペクトしなきゃいけないと思っています。

たしかに肌感⼤事ですね。ちょっと駆け⾜ですが、次のご質問です。


(質問5)先ほど⾒せていただいたスラックコミュニティ多分5900⼈とか⼊っている⽅のバックグラウンド等分かる範囲でご教⽰いただきたいです。

東さんの記事で引用されている2017年の調査資料があります。もともとエンジニアは結構割合が多いですが、最近は地域版コロナまとめサイト開発のムーブメントがきっかけで大学生とか高専生とかの学⽣さんとかもすごい増えてます。また、システムの設計から使い方まで見渡せるデザイナーさんの役目がとても重要になってきています。そしてかねてから注⽬しているのは公務員さんです。いち市民でありながら公務員としても働いているポジションでシビックテックコミュニティに参加してくださる方が増えており、様々な立場からよい多様性が生まれているとおもいます。

ありがとうございます。次の質問移りたいと思います。


(質問6)新聞社やNHKの⽅々は取り扱うデータが合ってるか合ってないかすごく気にされる報道機関だと思うんですがデータの誤謬性にどう対処してますか?

データはおっしゃる通り間違えてない⽅が良いんですが、いろいろ考え方はありまして、1つは、まず良くも悪くも⼀旦データを信じるっていうことがあります。あるいは、データを分析する際に、ひとつの組織だけでなく、それこそシビックテックの⽅とか、⼤学の専門家と一緒に分析するなど、アウトプットする際には専⾨家、詳しい業界の⽅にも⾒てもらってダブルチェックをする過程も大切かなと思います。

ありがとうございますそしてですね。はい、次のご質問です。

(質問7)報道機関さんが作ったデータを社会に還元するの良いですね、でも旧来の組織の⽅からストップがかかったりしないのでしょうか。

ストップかかるでしょうね。まあ正確に⾔うと「ストップをかけたがる⼈がいる」ということだと思うんです。その視点もまた正しくて。例えば地図上で可視化できるデータでは、ロンドンだと犯罪発生地点といったデータも公開されていて、どこの角でひったくりがあった、ということも⾒れるんですが、きっと私たちが考慮するポイントとして、そこに住んでいる⼈がいる、とか、不動産価値が下がるんじゃないかと公開を心配する方もいるでしょうし、一方で「発生したことは事実だ」という意見もあると思います。そういった懸念をする方も、もちろんいらっしゃいますし、「ストップ」したいという考えも理解できると思います。

犯罪発生地点は日本でも調整がついて、最近ようやくオープンデータになってきていますね。同様にヒグマ出没情報の公開とかもいろいろと地域との関係性などがあってすんなり行かないことが多いです。各方面と議論しながらシステム側でもある程度工夫が必要になります。

公開する⽴場では、どういった使われ⽅をするかまで考えて出さないといけないという問題がありますね。
ぜひ今ここで聞いておきたいという⽅がいらっしゃれば、ご質問していただくお時間も設けたいなと思っております。この場でお話聞いてみたいなという⽅はいらっしゃいますか?

(質問者)
ありがとうございます。ぜひお聞きしたかったんですけれど、例えば検索データを使って何が(災害時の物資が)⾜りないだとか、最近だとツイッターのつぶやきの解析もあると思うんですけど、そういったものを利⽤してない⼈の属性っていうのはどう取り組むのかというのが1番気になりました。

これは深いとても良い質問で僕も拾いたくてしょうがなかったです。井上さん、どう思います?

ご質問の趣旨としては、おそらく、例えば比較的ネット検索をしないとされる高齢者のニーズをどう取り込むか、といったイメージですかね。おっしゃる通りで、ケースバイケースだと思うんですけど行政も報道も、ネットにあるデータ、ツイッターの投稿は参考にするんだけど、それだけで終わらせないっていうことが基本だと思います。

これは統計の話になるんですが、データのサンプリングを行う際、母集団の偏りを気にするかどうかは科学的にものを考える際の体幹的な基礎知識だとおもっています。たとえば、ネットの意見が世間の⺠意なの?なども古くて新しい問題です。なので、報じる側としてもどんな⺟集団なのかっていうのは明⽰することはもちろんのこと、わたしもよくやらかすのですが、読み取る側もその偏りがわかる教養が必要だと思います。なので使い古された言葉ですが数字に対するリテラシーをもっと社会全体で上げなきゃいけないと思ってます。

(質問者)
読む側の知識も重要だということですね。⾮常にわかりやすかったです。ありがとうございます。

ありがとうございます。あと最後にもう1つ質問いきますね。


(質問8)国は⾃治体のオープンデータ活⽤率を100%にするとだいぶ前に⾔っていたかなと思うんですがまだ7割弱なんですね。諸外国はもっともっと先に進んでいる印象です。ここまで進んでいない⽇本には何が⾜りないんでしょうか。

国の方針で2020年度までに地方公共団体はオープンデータ取組率100%を目指していましたが、未達成であるため現在様々な推進体制がとられています。では日本だけが遅れているかというとそうではなくて、諸外国も完璧ではないようです。各国のオープンデータ調査をみていると分野によってまだまだな国もそこそこあります。台湾やアメリカでもまだまだ品質の低いデータや紙手続きは普通にあるとききます。しかし、何が⾜りないかというと⼿段が⽬的化してるところは大きいと思います。Society5.0とかDXとか華やかそうではありますが、これらが達成できそうなシステム導入は銀の弾丸ではないと言われています。結局かなり泥臭い⼈とのコミュニケーション、つまりどういう地域社会にしたいかというコンセンサスと現状を上⼿く折り合いつける話にもなってきている気がしています。
なので、急には世界は変わらないとおもっていますが、今日いらっしゃった方が、データ主軸としたニュース企画を来週考えるとか、スキャンPDFやFAXを若手記者の鍛錬と称して⼿打させるのやめましょうよ提案するとか、会社を超えた仲間をふやすやり方をかんがえるとか、小さなアップデートが実践できればここに来てくださったお土産になるのではないかと思っています。

\ ありがとうございました! /


■時間切れで、slidoの質問に答えきれなかったので、イベント終了後にご回答いただきました!!

Q.流石に今の時代、API化されていないCSVダウンロードをオープンデータと呼ぶのはあり得ないと思いますが大丈夫でしょうか?
A.うーん、そんなことないと思いますよー。PDFでもCSVでもオープンに共有されているだけでも大きな一歩ですし、星5つが最高のオープンデータ評価だと星1つは獲得できています。もちろんそこからさらにAPI化(自動連携化)なども見据えて改善や流通を回していくことも重要ですね。
Q.シビックテックと報道機関がタッグを組んで協同したら面白いですね!?
A.イベントでも述べましたが、協働だけでなく、報道機関の中の方にもシビックテック的な観点やスキルが浸透すると良いなあ、と思っています。NHKハッカソンでもそんな芽がでるといいなあ…
Q.データのオープン化について、行政や自治体さんに求めることありますか?
A.たとえば情報担当まかせにオープン化を丸投げするのではなく、まずはできる部署から業務フォローを見直すのも手だと考えます。業務効率化の副産物でオープンデータが出てくると良い流れになるかも知れません。
Q.情報をオープンにすることで、公開側が自分たちの弱い部分を知られてしまう、というネガティブな反応もありそう
A.弱みと知ってて隠してるほうが問題になりやすいと思います。透明性・信頼性の担保や、説明責任の観点からも差し障りのない情報公開することが重要だと思います。
Q.オープンデータそのものを加工やコメントをつけずに公開するのは良いとは思いますが、そのデータを他のデータや恣意的な解釈を付けて公開すると見る方を誘導する事が出来るように思うのですがどのように考えますか?
A.恣意的な解釈もできますが、オープンになっている材料データとも比較することが可能になりますので、恣意的か客観的かの確認は取りやすいと思います。
Q.オープンデータの活用に関して、オープンの価値観と従来のクローズドな価値観のすり合わせが一番難しいところだと思うのですが、具体的によくある話や、特に難しい部分はどんなところですか?
A.行政の現場で交渉をされている担当の方はたくさんご苦労されているエピソードをお持ちだとおもいますが、それぞれの価値観をもつスタッフが誰のためにどんな未来像を描けているかの方向性が一致できてないってことじゃないかなと思っています。
Q.アマの市民の視点、プロのジャーナリストの視点、、、それぞれよい点ありますよね。連携するといいことありそうですね。
A.ツールやデータ、知識や教養が十分にあるとプロもアマも垣根が少なくなっているのでは…と思います。なので、プロならではの品質の良い成果って何?という観点になってきて本当に過渡期だと思っています。
Q.データを解釈して価値を与えることがメディアの仕事でその手腕を競う世の中になればいいですよね。
A.そうですね!紙の表の入力やネ申エクセルデータの解毒を延々と行うことは本来のメディアの仕事ではないと思っていますので、オープンデータを使った奥深い記事が今後も増えるのでは、と期待しています。
Q.記事の可視化で使ってるプラットフォームはなんですか?
A.すぐ可視化するにはGoogleMapsやTableau、Flourishなどはよく使われています。また、より高度な前処理や解析を行うツールとしてはRやQGIS、OpenRefineなども使われており、プログラミング言語のPythonなどを駆使してデータを取得することもあります。
Q.二次利用可能かつ無料で使えるにもかかわらずデータに正しさを求められるとなると、データを公開する人のモチベーションはなんなのだろうと思いました
A.なかなか難しいところですね、これも担当者さんに聞いてみたい。公共財の維持整備や、社会還元といった道徳的インセンティブ観点になるのかもしれません。なので、もしオープンデータでいい成果がでたら公開元にフォームやメールでぜひお知らせしてあげてください。上司に自慢できる事例にもなりますし、こつこつやってきたことの大きな自信と勇気になり、より良いデータが提供される推進力になると思います。
Q.報道各社のアンケートを集約して一目で見られるサイトが欲しい。
A.ですよね。でもあなたが試しに作ってみると、もっと楽しくなるかもしれませんね。
Q.シビックテックの運営についてお伺いしたいです。
A.コミュニティ運営についてはLinux財団から町内自治会まで様々な形があり、どれが正解ともわからないです。オードリータンさんもおっしゃっていましたが、シビックテックコミュニティではまずは楽しく、小さく作って、回して、みんなで喜ぶ、の繰り返しを行うことが重要かなとおもいます。

「北海道オープンイノベーション2021~NoMapsアフタートーク」
○「ローカルフレンズではじめる地域での1歩」
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