NHK札幌放送局

脱炭素で注目 「クリーンラーチ」知ってますか?

ほっとニュースweb

2022年6月17日(金)午後6時00分 更新

いま、温室効果ガスの排出量削減に向けて、北海道で生まれたある「木」が注目されているのをご存じですか?道の林業試験場(美唄市)が造林用に開発した「クリーンラーチ」という樹木です。このクリーンラーチ、実は、温室効果ガスの削減に高い効果を発揮する木として期待を集めているんです。 (眞野敏幸)

「クリーンラーチ」?

「クリーンラーチ」。聞き慣れない名前ですよね。「クリーン」はいいとして、「ラーチ」…?辞書で調べてみると、そう、「ラーチ」は、英語で「カラマツ」のことを指すそうなんです。カラマツなら、皆さん、聞いたこと、目にしたこと、ありますよね。マツ科の落葉針葉樹で、木材として幅広い用途に使われています。道内で植林されている木の半数以上を占める、道産木材の主力品種です。その「カラマツ」と、同じマツ科で野ネズミなどの食害に強い「グイマツ」という品種を掛け合わせて誕生したのが「クリーンラーチ」です。言うなれば、「環境に優しいカラマツ」といったところでしょうか。

クリーンラーチは、道内の林業に適した品種を研究する中で、およそ50年前から開発が進められてきました。大人の木、「成木」になるまでには30年から40年かかります。このため、まだ木材として市場に流通してはおらず、ようやく、「成木」となる木が出始めたところです。

注目はCO2吸収量

クリーンラーチに注目が集まる理由。それは、「二酸化炭素(=CO2)の吸収量」にあります。植物は、光合成で大気中の二酸化炭素を吸収し、「酸素」を発生させながら、「炭素」を蓄えます。

クリーンラーチが「成木」になるまでの間に吸収する二酸化炭素の量は、カラマツと比べて最大1.2倍。さらに、吸収した炭素を蓄える能力も高いことが、これまでの研究で分かりました。

「二酸化炭素の『固定能』(=炭素を蓄える能力)が高いというクリーンラーチの特徴は、最近、『ゼロカーボン』が言われる中で、非常に注目を集めています。北海道では、将来的に、カラマツの3割ぐらいをクリーンラーチに替えていこうと計画しています。カラマツに代わる新しい造林樹種として非常に期待されています」(道立総合研究機構(道総研)林業試験場・今博計研究主幹)

林業試験場では、民間の事業者と協力し、2009年から苗木の供給を開始。温暖化対策への関心が高まる中、林業関係者からの引き合いも多くなっています。当初、2万本ほどだった年間供給量は、2020年には20万本以上にまで増えました。林業試験場は、さらに増産するため、効率的に苗木を増やしていくための研究にも力を注いでいます。

木材としての可能性

このクリーンラーチ。二酸化炭素の高い吸収効果だけでなく、木材としての品質もよいことが、最近、分かってきたんです。道総研・林産試験場(旭川市)では、クリーンラーチの木材としての可能性を探る研究が進められています。

46年前、日高地方の新冠町で植えられた道内最古のクリーンラーチを、厚さ2.4センチ、長さ60センチの板に加工し、板が割れるまで機械で負荷をかけ続けます。カラマツとクリーンラーチの強度を比べます。

実験の結果、クリーンラーチはおよそ1.6トンの負荷に耐えました。一方、カラマツが耐えられたのはおよそ1トン。今回の実験ではクリーンラーチが、カラマツに比べて、1.5倍以上の強度を持っているという結果になりました。林産試験場では、こうした実験を何千回となく繰り返しています。そのデータから、クリーンラーチの用途は、住宅や高層建築物など、道産木材があまり活用されていない分野にまで広がることが分かってきました。

クリーンラーチの強みは、ほかにもあります。生育が早く、成木になるまでの手入れも少なくて済むという点です。林業は人手不足が特に深刻な分野ですから、持続可能な林業を形づくっていくうえでも関係者は期待を寄せています。

長い年月をかけて

道は、2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする「ゼロカーボン北海道」の実現を掲げています。森林による二酸化炭素の吸収で賄う排出削減量についても数値目標を定める方針で、クリーンラーチの普及を念頭に、いま、まさに具体的な数値の検討が進められているところです。普及を加速させるには市場で品質に対する高い評価を得ることが必須になります。成木のクリーンラーチが市場に出回るのは、まだ10年以上先のこと。長い年月をかけた取り組みが続きます。

眞野敏幸
札幌局記者 新聞記者を経て、2019年入局。札幌局で北海道庁を担当。

道産木材をめぐる動きについてはこちらの記事も
「ウッドショック」道内にも及ぶ波
急激に減少する「耕地防風林」についてはこちら
北海道農業の転換点?消える防風林

訂正
記事中で道内最古のクリーンラーチの植栽地を占冠村とご紹介していましたが、新冠町の間違いでした。訂正いたします。

関連情報

アフガニスタンのいま 長倉洋海が語る

ほっとニュースweb

2021年8月25日(水)午後3時18分 更新

2年前、中国で消えた父

ほっとニュースweb

2021年5月20日(木)午後4時51分 更新

アイスホッケー“クレインズ” 釧路を拠点に再び羽ばたけるか

ほっとニュースweb

2022年8月25日(木)午後5時25分 更新

上に戻る